#6　行進曲 ♪　プライズ・スナイパー

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前回のあらすじ：http://t.co/nRd1LcAGDJ 魔術師の少年・浅空勇矢は幼馴染の七橋裕岐を襲撃した。 彼を戦いに巻き込まない為、病院送りにするつもりだったのだが、失敗した。 その翌日、その彼に濡れ衣から救われることとなる。

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己の無様に歯噛みしつつも、勇矢は次の手を考える。魔術組織ＵＡＲとの決着を来週末に控えながらも、彼の全快にはまだかかる。その上、強敵フレアナイトとの決着やある少女の治療など懸案事項は多いが、今はまず部活に出ねばならない。

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先日の大会の決勝戦を止むなく投げ出して以来、気まずいが、何本も釘を差された以上もう先送りには出来ない。今の勇矢には敵以上に恐ろしく思われた。一方、超人類にして人類の敵『誓約者』が彼等の学校、星咲学園のある新渡町へと迫っていた。勇矢達はまだそれを知らない。

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―金曜午後、新渡町中央部。 『誓約者』越前奏一は雑踏を歩き、考える。 敵は何者か？欧州でクイーンを殺しコアを奪った魔術師集団。奴等は何者か？ そして…仇は奴等だけか？ 彼は昨日タクシーを降りた後、電車を乗り継ぎ夕方に町に入った。気配を殺しつつ魔力の痕跡を探った。 1

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駅ビル、高層ビル、埠頭、大学跡…ごく僅かながらも交戦の痕跡が見られた。術の系統からして、異なる二集団以上によるモノ。一つは「奴等」の筈だ。状況判断するに、恐らくは奴等がこの土地の魔術師に戦いを仕掛けている。奏一達を襲ったのも、この町に誘導し防衛側にぶつける為であろう。 2

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昨夜の時点でこの仮説に辿り着き、今日更に探り確信を深めた。そこまでは良い。 これからどうする？ 誓約者にとって魔術師は敵。勝手に潰し合うのなら好都合。だが少なくとも侵略側の組織は自分達で始末したい。それは当然だ。問題は防衛側、この町の魔術師の処遇である。 3

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大局的には敵だが、今どうする？奏一達にとって、彼等は本来どうでもいい。しかしクイーンのコアは強奪者に何らかの形で利用され、その後消滅したた痕跡がある。これは彼等がトドメを刺したことを意味するのではないか？ならば彼等も仇と見なし報復すべきか？ 4

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両者の規模も正体も不明だが、まとめて倒す覚悟はある。だが防衛側を倒すのは奴等…そもそもの元凶が正に意図したことの筈。仇の良い様に使われて良いのか？場合によっては防衛側に協力してでも、奴等をまず倒す選択肢もある。しかし仇を倒すのに別の仇の力を借りるのか？ 5

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主達に判断を仰ごうにも、奏一の現地入り直後、彼等は飛行機に搭乗している。奏一は遠話術は得意では無く、有効範囲はせいぜい数百キロがだ。まだ２・３時間は連絡できない。 考えても結論は出ない。結論を出すべきは自分では無い。 奏一は悩むのを止め、両魔術集団を釣り出すことに決めた。 6

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ミストルティン編・第十八話　壊縁 ♪ ～ホワイトのショータイム～インディヴィジュアリスツ・エイム～ #6　行進曲 ♪ プライズ・スナイパー　 専用タグ：　#evlst

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―放課後。アクトボット部部室。 ４月に１３名でスタートしたこの部も、夏までに２名を加え、合計１５名となっていた。ロボット製作や操縦、サポートに優れた大人の本職顔負けのエキスパート達。部内対抗戦や他校との交流試合を経て、７月の地区予選、先日の地方予選を勝ち進んできた。 7

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アクトボットは今最も熱い、世界でも有数のロボット競技大会である。ポイント争奪とバトルを組み合わせた団体戦を特徴とする。多くの企業や団体が技術力のプレゼンを兼ねた場として心血を注ぐ。そこに中学生のチームで出場して優勝することで、業界へアピールするのが部長である智明の狙いだ。 8

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彼の計画ではあくまで今年は様子見、来年度に優勝を狙う算段である。しかし全国出場が見えてきた予選決勝の段階で、彼等の気持ちは既に「今年度優勝もあるのでは？」という風に傾き、実際出場が決定した今は更にその思いが高まっていた。 9

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…だがその予選決勝で水が入った。 10

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「浅空…何かいう事があるんじゃねぇのか？」 土日の大会後、月・水と部活を休み、ようやく今日出てきた浅空勇矢を、亀岡興基が責める。表立って責めるのは彼くらいだが、他数人も内心は似たようなものだろう。勇矢は大会決勝で突如消えたのだから。 11

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幸い、彼等は少数派ではある。村雨早紀や、海上勇矢と仲の良い起矢は同情的で、マイペースな島田延生や氷堂蘭花は我関せずというように見える。部長の智明や、隆光、湊らは事情を知っている。よりによって決勝で！という怒りはあるが、それは勇矢に向けたものでは無い。 12

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あの日、決勝の数分前。勇矢の元にアラートが届いた。怪生物群『フォームド』の出現を知らせるモノだ。人間を食らい、大型種は艦船をも撃ち抜く人類の脅威である。勇矢＝ホワイトナイトは彼等が出現するとそれを迎え撃つべく出撃するのだ。ただし通常兵器が通用しない、という訳でも無い。 13

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中型種以下は戦車砲や爆撃などで充分に駆逐できる。大型種は、魔術的バリアでミサイルの1・2発を防ぎ、魔力光線で空母をも切り裂くので脅威だが、現在では「戦闘機で光線を回避し、その技後に火力の集中でバリアを相殺しつつ本体も粉砕する」という戦術が確立され、対処可能だ。 14

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それでも、あらゆる探査を掻い潜り突如出現する彼等に対しては、軍が間に合わない場合や国境問題で派遣出来ないケースもある。そもそも大型種が複数いるか、中型型以下でも大量にいると、表の軍では対応し切れない場合もある。そういう時の為のホワイトであり、あの日は正にそういう時であった。15

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「観崎に、家やら学費やら援助してもらってる俺達と違っておまえは電車代くらいだろうけどさ…」 勇矢は電車で２時間の距離を自転車で来ているので、電車代は渡していない。智明はそう言いたかった。 「それでもお前もこの部に入った以上、優勝を狙う気はあるんだろ？」 「そりゃあ、まあ」 16

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勇矢は土下座したまま答えた。常識的に考えて謝るべき場合だという理解はあった。本来なら月曜にそうすべきだったが、あの日はやむを得ず休んだ。だが水曜に関しては完全に自分の意志で逃げた。謝る覚悟を決めていた月曜に謝り損ねたせいだろうか？勇矢自身にも良く分からなかった。 17

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「正直、俺は誤って欲しい訳じゃねぇんだ。少なくとも俺はな」 「え？」 「『何で』いきなりいなくなったのかって聞いてるんだよ」 「あー…」 「それに全国大会に出られないってどういうことだよ」 「それは結構前に言っただろ？」 「理由は聞いてねぇぞ！？」 18