♭6 行進曲 ♪ Prize Sniper

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2014-01-11 17:49:35
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ミストルティン編 第十八話 壊縁 ♪ ~ホワイトのショータイム~インディヴィジュアリスツ・エイム~ ♭6 行進曲 ♪ Prize snyper 専用タグ #evlst

2014-01-11 17:50:05
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前回までのあらすじ: 2007年。来栖見小学校に蔓延っていた闇…それは最早イジメなどという生易しい言葉では表現しきれぬ犯罪組織であった。 七橋裕岐は時間を掛けて、それを丁寧に崩していく算段だったが、浅空勇矢は警視庁や国会まで巻き込む荒療治を実行した。

2014-01-11 17:53:11
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結果として犯罪組織は根こそぎ壊滅した。だが組織内外に多くの自殺者を出し、無関係な者にまで多くの被害が及んだ。 裕岐は自問する。こんなやり方は間違っていると。だが自分のやり方ならば良かったのか?組織による被害者が増えただけでは? 考えてもそれは分からなかった。

2014-01-11 18:01:57
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いずれにせよ、勇矢も裕岐も互いに単独で行動した結果である。互いに相手の無茶に憤りつつも、相手の主張を全否定出来ずにいた。 そしてそれをきっかけに疎遠となり…年が明けた。

2014-01-11 18:02:46

※編注:
前回:2008年
今回:2009年

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~2008~ 「…え?金が欲しい?…十万円くらいなら貸せるけど…くれってんなら三万までだぞ」 「くれといったら三万ポンと出すのかお前は…凄いな七橋」 8歳児の会話である。この20分ほど前。近所をうろついていた勇矢に裕岐は声を掛けた。 彼の顔に生気が無さ過ぎたからである。 1

2014-01-11 18:10:21
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今にも死にそうな表情。絶交中だが捨て置けなかった。 去年、勇矢は来栖見の犯罪組織を、次々死に追い込んだ。 裕岐は勇矢の余りに早急なかつ苛烈で、更生の可能性を考えないやり方に反発した。 勇矢は裕岐の手ぬるさと無謀さ、性善説の盲信に反発した。 そして互いに距離を取った。 2

2014-01-11 18:15:22
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実際の所、 裕岐は勇矢のやり方が被害者の望むところであり、最速であると分かっていたし、 勇矢は裕岐のやり方が『巻き添え』を出さない安全な方法と分かっていた。 裕岐は勇矢が自分の身を危険に晒したことに怒り、 勇矢は裕岐が自分の身を危険に晒したことに怒っていた。 3

2014-01-11 18:20:21
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そして互いにそれを分かっている。分かっていながら、主義の反発と言う高尚な理由と、保護者気取りされたくないという幼稚な理由から反発を続けていた。彼等の行動こそ大人顔負けだったが、この冷戦に関しては年相応の、単なる幼稚な意地のせいである。 4

2014-01-11 18:25:21
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「こんな言い方も何だけど…勇の親は刑事と弁護士でしょ?」 しかも肩書きの前に「エリート」「敏腕」が付く。合計年収1000万円以上。多い年は更に倍以上。(母の弁護の内容と受ける量による)。中~上流向けのこの住宅地で子供2人を私立医大に送るのも余裕の筈だ。 5

2014-01-11 18:30:22
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裕岐はこんな具体的な数字までは知らないが、おおよそは浅空家の職業と普段の生活レベル、隣家である自宅との比較で類推出来る。浅空家には、立派な家や庭と二台の高級車こそあるが、それに比して普段の暮らしぶりは中流家庭と大差ない。裕岐も良く知る、勇矢の両親が外で浪費するとも思えない。 6

2014-01-11 18:35:21
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「何で金が要るんだ?」 勇矢が小遣いに困るはずが無い。彼が見ていた掲示板には、子供向けのお駄賃付手伝いだいもあったが、そんなものを見る必要も無い筈だ。 「何だっていいだろ別に…もう帰るぞ?」 勇矢は立ち上がる。実際、菓子とジュースに釣られて付いて来ただけである。 7

2014-01-11 18:40:22
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「上手くいけば一千万以上稼げるアイディアがあるんだけどな~」 「頼もしいですお願いします」 勇矢は光速で掌を返し土下座した。 「その前に何でお金がいるのかを教えてくれよ…あといくらいるのか」 言いながらも裕岐には既に心当たりがあった。浅空家に家族が増えたのだ。 8

2014-01-11 18:45:21
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去年の暮れ、勇矢は冬山から転落した。救助隊が出発する前に、猛吹雪の中を自力生還した彼は…一人の少女、染川絢女を連れ帰ってきた。彼女は浅空家に居候することとなった。突拍子もないが、裕岐にはそうとしか言いようがない。 彼女は何者か?何故同居することになったのか?何も知らない。 9

2014-01-11 18:50:21
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「いくらって言ってもな…あればあるほど良い。まあ長者番付とか乗るレベルだと多過ぎるが…」 「そうか…まあ手に入るのは『うまくいけば』一億近くかな…それで?」 勇矢は顔をしかめた。金が要る理由を言えと言うことだ。話したくはないが、この機を逃す手は無いし、自力で調べるのも難しい。10

2014-01-11 18:53:21
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観念して重い口を開く。 「あーやとの将来の生活の為だよ。貯蓄目的」 「染川さんのことか?…将来って……俺達8歳だぞ…」 将来のことを考えるのに早過ぎるということは無い…がその為の貯蓄を始めるのは流石に早い筈だ。まして裕福な家の子が。 11

2014-01-11 18:56:21
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「まさか生活苦しいとか?そのぅ…」 「別に親の仕事がヤバいとか、誰か病気や怪我とか、あーやに浪費癖があるとかじゃないから。むしろ…」 「?」 「あーやは最近、着物とか作って売って結構儲けてる」 「そ、そうなんだ…」 「そのうち、あーやが来る前より黒字は増えると思う」 12

2014-01-11 18:59:21
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「…じゃあ何を気にしてるのさ?」 余っている筈の状況で金の心配をする。意味が分からない。 「いや、だって…女に稼がせてばっかりじゃさ…ヒモみたいじゃないか」 「結構、年上でしょ、染川さん…」 小学生の分際で、何の心配をしているのだ。裕岐は呆れた。 13

2014-01-11 19:03:21
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「いや!だって家事もやってんだぞ!?」 「いや!俺よく知らないし…」 裕岐の知る限り、絢女は殆ど外に出てこない。近所でも目撃以前に存在すら知らない者も多い。第一、まともに紹介されてもいない。彼女が来た当時は今以上の絶交状態だった。落下事故直後に適当な紹介をされただけだ。 14

2014-01-11 19:05:21
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たまに浅空家から奇声や嬌声が聞こえてくる辺り、彼女のほうこそヒモ的なモノだと考えていた程だ。(隣家で耳の良い裕岐だから聞こえる声量ではある) 「その上、好きなだけおっぱいさせてくれるし…」 「何だその斬新な日本語」 裕岐は呆れを装って殺意を抱いた。当然である。 15

2014-01-11 19:07:13
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「まあ多少D…まあいいや。アレなところもあるけどさ」 DV、と言いかけて勇矢は止めた。そもそも体を四散させられたり、活き作りにされるのを世間ではDVとは言わない。 「でもこのまま僕が成長して…あーやも、まとも…その落ち着いていったらさ…」 「うん」 16

2014-01-11 19:07:19
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「僕は完全にヒモのダメ人間になる。ていうかされる」 「だからって…高校入ってからバイトでもすればいいだろ?それか掲示板に何か無かったの?」 「…最低時給下回るもんしかなかった」 「そりゃそうだろ…」 児童に本格的な労働をさせる訳にはいかない。その分、対価も安い。 17

2014-01-11 19:10:21