第十八話　壊縁 ♪ ホワイトのショータイム～インディヴィジュアリスツ・エイム～ ♭1　序曲 ♪ Lost Element

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～2004年～ ―車が進み、ゲートを通る。 ここは茨城県笠間市来栖見。 ―丘の上にある、環状の高級住宅街。 実際の所、諸費用は周辺と三割も違わない。 ただし身元や収入の審査が厳しい。 自然と裕福な人間が集まりやすく、高級住宅街と認識される。 1

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住宅区画は百弱と大型。小高い丘の上に景観を乱さない位置のフェンスで囲われている。 数か所の出入り口はカメラで監視され、内部に警備会社の詰め所もあり防犯性は高い。 コンビニと中型スーパー一つずつに数件の専門店、保育施設まである。 両側一車線半の環状道路で内部を移動出来る。 2

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出来て二年と経たず、まだ半分以上ある空き区画。 その一つに今日、新たな一家が転居してきた。 浅空家である。 警察官の父親と弁護士の母親で収入も…身元や素行も 問題は…無いということになっている。 子供は今年４歳になる息子と３歳になる娘の兄妹だ。 3

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車が環状道路から一方通行に入る。一区画進み、車が止まる。 家の右側にガレージ左側に広い庭。 地下室付きの二階建て。 ―半年前から造らせていた家である。 ―車庫の手前に止めると、母親と兄妹が降りた。 兄のほうが三人分の荷物を無理矢理持ち、家に入ろうとする。 4

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―少年は母親にがっしりと頭を掴まれた。 彼女曰く、まず挨拶が先だ、と。 車に荷物を置いて向かう。 隣家には家族が四人。 浅空家は三人。 父親は普段もいない。 その情愛を悟らせない為。 危険に巻込んでしまわない為に。 ―そして母も弁護士ゆえ家を良く開ける。 5

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「はじめまして」「宜しくお願します」 そんな挨拶を交わす。 荷分けを手伝おう、と申し出てくれたが既に数度に分け、殆ど運び終えている。 手荷物以外にあまりないからと、丁重に断る。 引き止めては悪いからとその日はそのまま別れ、荷分けに移った。 6

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翌日、浅空家の父も含め八人で食事をした。 流石にいつまでも来ないのも逆に不自然であるからだ。 隣家の人間の危険性を見分けたいとも言うのもあった。 隣人…七橋家は人柄も良く信頼出来ると父は判断した。 仕事柄不在が多いので、と子供達のことを託した。 7

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隣家には子供が二人。 小学生の姉が一人。 もう一人は今年四歳の少年。 …… 七橋裕岐…彼も浅空勇矢と同い年だった。 裕岐は一緒に遊びたがったが勇矢は最初拒んでいた。 しかし彼のしつこさに折れ、共に過ごす時間が増えて行った。 8

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保育所では勇矢は昼食後まで、裕岐はその直前まで過ごした。 家に母親がいるかどうかの違いだ。 子供は十人もいなかったが、勇矢はロクに周りに溶け込まなかった。 一方の裕岐はほぼ全員と友達になり、自然と彼等と遊ぶことが多かった。 その分、帰ると浅空家に行くようにしていた。 9

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平日13時が近づくと裕岐は隣家に急いだ。 ―裕岐は年の割に賢かった。そして勇矢も。 ＩＱが近かったこともあり、他の友人より話が合った。 だが遊びは、ウェーイとカードで戦う剣のヒーローや、銃でバンバン戦う警察ヒーローのものが多かった。 年相応に。 10

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その他、勇矢の父が蓄積した大量の特撮やアニメの映像アーカイブの存在もあり、頻繁に観賞会もした。 日曜に４クール物を一気見した翌日は流石に休んだ。 ズル…というだけではない。純粋に体力の限界を超えた為で、裕岐は心配された一方、勇矢は父親に半殺しにされたという事実。 11

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裕岐が浅空家に行くほうが多かったが、逆もあった。 勇矢は最初、家族がいるから、と遠慮していた。 だが結希に遠慮のし過ぎこそ気を使わせて迷惑、と諭されて以来、週に二度は行くようになった。 しかし裕岐の姉は堂々と弟にイチャ付く。 「へへ～ユウキちゃんだいすき～」 12

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「やめろよ姉ちゃん！助けて勇！」 この光景には、三次元女は妹と従姉妹だけ、の勇矢も殺意を覚えた。 「くっ許せないぜ」 覚えたばかりの言葉で怒りを表す。 当時の彼に姉コンプレックスが付いた原因の半分は彼女で残りが従姉妹だった。 後にその比率は相対的にかなり減少するが。 13

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すると勇矢にも抱き着いてきた。 「ウェッ！？」 未熟ながらも充分に柔らかい感触に硬直する中、少女が悪戯気に喋る。 「だいじょうぶ。ユウヤくんもわたしの…弟、みたいなものよ？」 「…お、お姉ちゃ…ヴェアッ！」 勇矢の台詞は結希の攻撃で中断された。 14

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エバー・ラスティング・アロー ミストルティン編 第十八話　壊縁♪～ホワイトのショータイム～インディヴィジュアリスツ・エイム～ ♭1　序曲 ♪ Lost Element 終わり ♭2　前奏曲 ♪ Lives go on　に続く