♭6 行進曲 ♪ Prize Sniper

エバー・ラスティング・アロー・ミストルティン編まとめ http://togetter.com/li/439782 ⇔人物目録⇔ http://togetter.com/li/446022 第十八話 壊縁♪~ホワイトのショータイム~インディヴィジュアリスツ・エイム~ 続きを読む
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Astal_jukebox @astral_jukebox

「でも今は時給500円くらいでも貯金しとけよ…勇なら勉強楽勝だろうし、高校までに百万くらいは貯まるんじゃないか?」 「かも知れないけど、まずそれまで待てない」 「何で」 「アイツ避妊してくれないから、ひょっとしたらそのうち孕みかねない」 裕岐は絶句した。 18

2014-01-11 19:13:21
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「そ…そこまでヤってたのか…いやさせろよ…その…」 「出来りゃあやってる…まあそこは聞かないでくれ」 「わ…分かった?…え?いいのかコレ?…」 衝撃的ではあるが、あまり他人が突っ込んでいい話題では無いのは確かだ。 「おじさんたちに相談は?」 「それよ」 19

2014-01-11 19:16:21
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「さっきの時給の話だけどさ…そもそも最低時給以上なら、もう稼いでる」 「え?」 そこから勇矢が語った内容はカルチャーショックだった。一昨年…つまり小学校入学と同時に勇矢は既に働いているというのだ。 本当に意味が分からなかった。 20

2014-01-11 19:20:22
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学校関連と衣食住費、光熱水費類+αは普通に両親が出している。扶養義務は果たしていると言えるか。それ以上の趣味代やおやつ代などを自分で稼いでいる。勿論、小学生がゼロから稼げる訳も無い。初期費用・元手として500万円を渡され、各種手続きは母が代行する形だ。 21

2014-01-11 19:21:44
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「まあ株とか色々通販とか…学校もあるからそこそこだけどね」 初期投資の未回収分こそまだ少しあるが、月数万は稼いでいるらしい。 「何でそんなことを!?」「え?」 勇矢には何を聞かれたのかが分からなかった。子供が半ば自活する異常さに自覚はあったが、その理由は自明だと思っていた。 22

2014-01-11 19:23:21
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「今から勉強しとけば将来便利だろ?」 「そうかもしれないどけどさぁ…」 裕岐は浅空家の教育方針に頭を抱えた。確かに多くの学校では経営や税周りの知識は教えてくれない。そして実戦に勝る教育は無い。 (だからってそれはどうなんですか!おじさんおばさん!) 23

2014-01-11 19:26:21
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「まあそんな訳でそれなりにやってたけど…ただそこであーやが来たからね…」 彼女を同居させる条件として家賃こそ請求しないが、彼女分の衣食光熱水費は勇矢が出すことになった。 その結果、僅かな稼ぎは吹き飛んだ。だからこそ絢女も気にして服作りを始めた様だ。 24

2014-01-11 19:29:21
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「でも…結局染川さんの稼ぎもあるし…問題ないんじゃないの?」 浅空家の方針には敢えて触れずに、裕岐は聞いた。 「いや、こういうのは男が頑張らないと…」 「逆に男尊女卑的じゃないのソレ?」 「そうか?」 きょとん、とする勇矢。本格的に常識がおかしい。 25

2014-01-11 19:33:21
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「…まあ、あれか要は、予想外に早く家庭を持っちゃったけど、まだ仕事に本腰を入れられる年じゃない。今は安定してるけど、将来を見据えて金を持っておきたいと」 「最初からそう言ってるじゃん!」 「いや言えてなかったから…」 裕岐は呆れた。 26

2014-01-11 19:36:21
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将来の備え、という理由は予想の範囲だったが、その背景事情は想像を絶していた。交流が減った2年の間に親友が遠くへ行ってしまった気分だった。家は歩いて5秒の隣だというのに。 厄介なことに彼は、常識を知り、自分の世間ずれを自覚した上でそのまま我が道を行く気でいる。 27

2014-01-11 19:39:21
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「それで七橋…もうアテは話してくれるんだろうな?」 「…あ、ああ。ただ賭けみたいなところもあるからな…」 「ギャンブルは嫌いなんだよな…」 勇矢が嫌悪感でグチャグチャに顔を歪める。 「ギャンブルじゃねぇよ…ただ投資もかかる…金と時間がな」 28

2014-01-11 19:42:21
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「なるほど場合によっちゃあ、ソレに投資する分、仕事に力を入れたほうがマシ、と」 「ああ。上位に行かなきゃ、ロクに賞金も出ない」 「(上位?賞金?)…大会?」 「ああ。アクトボットって知ってるか?」 「どこかで聞いたことがあるような…うっダメだ忘れた」 29

2014-01-11 19:45:22
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アクトボット。21世紀頭から始まったロボット競技大会。 特徴として、 ・得点制競技とバトルの組み合わせ ・破格の賞金額 ・厳格かつ明確なルール というものがある。 いずれも他の大会…特に国内のロボット競技大会ではあまり見られない傾向だ。 30

2014-01-11 19:48:21
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一般人にこそ甲子園に少し劣る知名度でしかないが、ロボット業界では最も注目されており、技術者の登竜門でもある。それこそ球児にとっての甲子園のような位置付けと言えよう。 「それって…僕は出られるの?」 疑わしげな目線を向けてくる勇矢。 「まあ一人じゃ無理だ」 31

2014-01-11 19:53:36
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「じゃあダメじゃないか!くっ騙された!」 「落ち着けよ…一人じゃって言っただろ?」 「だからダメじゃねぇか!」 「何で他人を頼る選択肢が無いんだよ…?」 「…誰を頼れって?こちとらお前と違って友達ゼロだぞ!?」 32

2014-01-11 19:53:43
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「……………………………………………………………え?」 33

2014-01-11 19:59:21
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「おい?七橋?」 3分待っても裕岐が呆けているので勇矢は肩を掴み揺さぶった。 「何だよ急に…」 「ああ、いや、その、うん…ちょっとな…」 5年近い付き合いの『親友』からのまさかの言葉。裕岐は卒倒寸前だったが何とか立ち直った。 「何の話たっけ?」 34

2014-01-11 20:10:22
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「ダメだこいつ…僕に!アクトボットの参加資格はあるのかって!話!だよ!人数制限とか年齢とか…」 「あ、ああそんな話だっけか…実はその辺、下限は無いんだ。18歳以上の代表者は要るけど…」 「それを先に言えよ!」 「言う前に邪魔しなかった?でも上限20人だぞ?」 35

2014-01-11 20:15:22
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更には機体には制限がある。一辺1mの立方体の中に入るサイズでなければならない。チーム全体では2×2×1mの中に『その試合に出場する』全機が入れればよい。重量制限は1体50kg以下、試合出場機体合計で200kg以下だ。制限スレスレの1機だけを作っても、敵は倍以上で来れる。 36

2014-01-11 20:20:22
Astal_jukebox @astral_jukebox

「まあ勇のロボットなら十分通用するとは思うけどさ…」 「七橋に見せた分が通用するなら…行けそうだな!まあ試合の映像とか見て判断するか。『先生』に代表者だけ頼んで…」 勇矢はすっくと立ち上がった。その表情は希望に満ち、目はキラキラと輝き、いっそ気色が悪い程だった。 37

2014-01-11 20:25:22
Astal_jukebox @astral_jukebox

「え、いやおい!本当に一人でやるつもりか!?ちょっと!?」 呆けたテンションの裕岐もこれには驚き、彼も立ち上がる。勇矢は既に部屋を出るところだった。 「よっしゃ!七橋…情報提供料として、賞金が出たら5%…あ、いや3%でいいか?出すから!」 「いやいいから!それより!」 38

2014-01-11 20:30:22
Astal_jukebox @astral_jukebox

「え。有り難い申し出だけど流石に1銭も出さないのは悪いだろ?…ま!その辺は後で決めるとして、とっとと帰ってネットで調べるわ!じゃ…」 「あ、おい!俺も…」 (お前と違って友達ゼロだぞ!?) 「?」 「あ、いやDVDあるから持ってけよ…」 「でかした!」 39

2014-01-11 20:34:22
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2014-01-11 20:35:22
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「じゃあまた!」 「……またな…」 試合のDVDを借り、勇矢は自宅へと戻った。 「…また…か」 この数か月の断絶よりはマシにはなった筈だ。だというのにこのモヤモヤした感情はなんだというのだ。 …そしてこの2009年2月の邂逅から、9か月後。 40

2014-01-11 20:38:22
Astal_jukebox @astral_jukebox

勇矢は実質1名のみで企業や大学各十数名のチームを次々なぎ倒し、アクトボット上位入賞を果たす。優勝こそ敵わなかったが千万単位の賞金を得た。異常事態に業界がざわめくのもどこ吹く風、勇矢は50万円を持って裕岐の元を訪れた。 「…帰れっ!」 裕岐は、拳と共に金を突き返した。 41

2014-01-11 20:41:22