アリスと魔理沙の二人は成人式

姫上沙月＠ @satsuki_h

タグは何にしようかな。#gentyo_ss が良いかな。

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「ふぅ、やっぱり時間かかったなぁ」身体を締め付ける晴着に四苦八苦しながらなんとか博麗荘に辿りつく。いつも閑古鳥がヒッチコックしてる『ラ・イカルガ』もこの日ばかりは予約でいっぱいだった。朝早く出てきたのに、もうあまり時間が無かった。「マリサー！！」#gentyo_ss

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「おっ、アリスか。お前の方が早かったなぁ。やっぱ髪長いと不利だなぁ」「晴着って浴衣と違って胸の辺りがとてもきついわ。ねぇ魔理沙。これを着て跳んだり跳ねたりはしないほうがいいわよ！」うぐぐ「忠告ありがとな。だけどなアリス、そんなことするのはおまえくらいなもんだ」#gentyo_ss

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はしゃぐアリス。それもそのはずだった。今日は所謂、成人式というやつだった。留学生のアリスにまで招待状が届くとは、この街の市長も中々粋なことをするもんだ、と、ほんのちょっぴり私の中で市長の評価が上がる。そういや選挙権ももれなくついてくるんだよな。#gentyo_ss

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「んで、なんでお前、スーツなんだ？霊夢。成人式は二十歳だけの特権だぜ？」「んぁ？」霊夢は私達よりも一つ年上だった。だから成人式は去年やったはず。「アンタは。ああそうか、知らないのよね。お母さんが去年成人式で何やらかしたか」「いきなり不穏なこと言うなよ……」#gentyo_ss

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「アイツ、去年ね。私の成長日記を公開してあまつさえ大号泣してね……」『余談ですが、今年、私の愛娘の霊夢も成人を迎えます。うぅ……霊夢が。霊夢がこんなに大きくなって。ぐすっ。うわぁぁぁぁぁん！！』感極まって泣く市長！会場に湧き起こる博麗霊夢コール！　阿鼻叫喚！#gentyo_ss

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「うげ。そいつは大変というかご愁傷様というか……」私の中の市長の評価が一気に底辺まで下がってしまった。「んで、変なことしないように私も行くわけ。めんどくさいけどまぁ、アンタ達も居るし。成人式なんて一生のうちに二回あるかないかだしね」「二回もないと思うけどな…」#gentyo_ss

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「式が終わったら戻ってきなさいよ、宴会するんだって永江さんたちに頼んであるから」「そいつは楽しみだ」「それと」はたてや永江さんにきゃっきゃと晴着姿を見せるアリスを横目に、霊夢は私にそっと耳打ちする。「気をつけて見てて。アレを止められるのは多分アンタだけだから」#gentyo_ss

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「ん？　なんのことだ」「保護者しててねってことよ」「そいつはまぁ、いつものことだから」「はしゃぎすぎないようにね」何かを知っているような霊夢の言葉に、少しだけ不安を覚えた。きっと母親から成人式で何をやるのか聞いているのだろう。#gentyo_ss

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「私だってもう3歳若ければ成人式に紛れ込めるのに」なんて言っている永江さん。きっと無理だ。言葉に出さない私の優しさ。「アリス、それと魔理沙。いってらっしゃい」「行ってくるわね、ハタテ！」こうして博麗荘を後にする私たちだった。#gentyo_ss

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「ねぇ魔理沙。成人式ってその、何をするの？」「ん。知らないんだっけ？」「そういう風習が無かったものだからイマイチ何をするのか分からないのよ、パーティー？」「ちょっと違うな。成人式はようするに一人前の大人になったっていうことを世間様に知らしめる式のことなんだぜ」#gentyo_ss

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「Wow！　ゲンプク！？」「……まぁ、そういうもんだ」アリスの言葉に少しだけ悪戯心が湧き上がってくる。少しだけからかってやることにした。「成人式を迎えるとみんな一本の短刀を渡されるんだ」「短刀……ニンジャブレードね！」#gentyo_ss

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アリスの中ではサムライブレード＝刀、ニンジャブレード＝短刀という認識らしかった。「そしてここからが重要なんだが、その短刀は常に携帯していないといけない」「この国ってそんなに治安が悪かったかしら？　私の知らない文化ね」#gentyo_ss

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「護身用じゃないんだぜ」ここで声のトーンを落としてゆっくりと唾を飲み込む。演技力がなによりモノを言う。真剣さがアリスにも伝わったのか、アリスも表情を曇らせた。「ま、まさかとは思うけど魔理沙、その短刀の使い道って」#gentyo_ss

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「ああ。そのまさかだぜ。辞世の句を用意しておくんだな、アリス。成人はいつでもその覚悟ができてるってことだ」「Oh……God」アリスは今にも泣きそうな表情で空中に十字を切り、なにやら祈っている。#gentyo_ss

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「まさかそんな文化がまだこの国に根付いているとは思わなかったわ。ママ、もしものときは私、ハラキリでワビなければならないみたい」目頭に涙が滲み、めそめそと泣き出した。流石にやばいと感じた私はアリスに嘘だと教えてやる。#gentyo_ss

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「魔理沙のバカ！」泣きながら怒るなんて器用なヤツ。 　会場に着くと入口で招待状のチェックを受けて建物の中に入る。市民ホールは数百人を収容できる、この街には不釣り合いなほど大きい施設だった。「まるでサークル参加してるみたいね！　ワクワクするわ」#gentyo_ss

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「新成人のみなさん。おめでとうございます。本日は人生という長い旅路の、言わば節目に当たる日です。みなさんが思い描いている未来がきっと実現できますように――」八雲市長の挨拶が始まった。「な、なんだかゲンシュクね」アリスにしては珍しく空気を読んで小声で話してくる。#gentyo_ss

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「寝るなよ？」「ええ、モッタイナイものね」しかし、霊夢が言う程市長はダメ人間じゃない、と思う。挨拶を聞いて居る限りは。無難すぎて私の方が眠くなる。「ところで、話は変わりますがうちの霊夢が――」うとうとしかけていたところに突然良く知った名前が出てきた。#gentyo_ss

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「でね……が……かわいくてね……たまらないのよ……くう……さらに……もう……すごすぎ……で……そう思う？そうでしょ……どうして……すき……はー！……だきしめて……寝る時も……でしょ……すばらし……！あら、もうこんな時間ね。では最後に皆さんにこの言葉を送ります」#gentyo_ss

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な、なんだか変な展開になっていたが、これで挨拶は終わりらしい。親馬鹿っていうのも考えモノだよな……。「紫鏡！」「ぶっ」会場内がどよめく。#gentyo_ss

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「二十歳までにこの言葉を覚えてたら死ぬというわ！　む、ら、さ、き、か、が、み！　よく心に刻みなさい！　若いからってなんでも許されると思ったら大間違いよ！　私だってあと十年、いえ、十五年若ければ！！」「ちょ、ちょっと市長！」秘書が駆け寄って羽交い絞めにする。#gentyo_ss

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「ええい、止めないで藍！　私は、私はぁぁぁあ！！」「市長！！」がっちりとホールドされたまま退場する八雲市長。この人、人間としてダメすぎる。なんで市長になったんだ。「魔理沙、どうしましょう。むらさきかがみが頭から離れないわ」アリスが青ざめた顔でこっちを見ていた。#gentyo_ss

姫上沙月＠ @satsuki_h

「そんなの迷信だって、紫鏡が原因で死んだやつなんているわけないじゃないか」「そうね……そうよね、ウェンディゴの悪魔とか、チュパカブラとか、そういう類の物よね……うん」突然、壇上の奥からパコンという大きな音と市長のうめき声が聞こえた。#gentyo_ss

姫上沙月＠ @satsuki_h

しばらくするとスーツ姿の少女が……というか霊夢が姿を現した。「ごめんなさい。市長は急用ができたので既に会場を去りました。代わってあなたたちの先輩である私が一言だけ祝辞を述べさせていただきます」#gentyo_ss