雷電から始まる層流翼と沈頭鋲にまつわるアメリカと日本のエピソードについて

いろいろクドい話(http://stanza-citta.com/bun/)の Bunzoさんがされていたお話が興味深かったのでまとめさせて頂きました。
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Bunzo @Kominebunzo

本庄技師が一式陸攻22型で増大させた翼厚は耐油膜で包まれた防弾ゴムをインテグラルタンクに内装する計画を支える意味もあった。戦後の本庄技師が被弾に弱いインテグラルタンク採用に悪びれた様子が無いのはその気性もさることながら「自分の仕事はちゃんとしていた」と自負しているため。

2013-01-14 16:58:15
Bunzo @Kominebunzo

@uchujin17 @67MajorMinor 当時のように模型でやると実機の主翼の捩れが再現されないので零戦でもフラッターが500ktまで発生せず事故を予見できなかったと堀越さんが座談会で述べていますが、読み換えれば強度不足だった、やり過ぎた、という話になるような気がします。

2013-01-14 17:04:56
Bunzo @Kominebunzo

沈頭鋲というと画期的な技術のような印象があるけれども飛行機の外皮を金属板で張るようになってから機体全体をイボイボが覆う姿を見て「これは飛行性能に有害だ」と思わなかった技術者はいない。頭の平らな鋲は他の工業分野にはとっくに存在していたのだから。これは「発明品」じゃないんですね。

2013-01-16 07:13:44
Bunzo @Kominebunzo

二人掛りで鋲を押さえて叩く工程は熟練と手間を要し機体製造コストの半分程度がここに費やされてしまう。開戦前のアメリカですら不良リベットの打ち直しは平均12%に及び、金属で飛行機を作る作業の難しさを機体製造各社は思い知らさせている。日本は、推して知るべし。

2013-01-16 07:19:46
Bunzo @Kominebunzo

沈頭鋲の悩みは鋲の軸を入れる穴の周囲に鋲の頭が入る凹みを薄板に作らねばならないこと。これを普通にやるとジュラルミン板はディンプルの端から亀裂が入り、割れやすい。零戦の分解事故で真っ先に平山鋲が疑われたのは多分、これ。昭和15年の海軍は沈頭鋲の抱える問題を知っていた様子。

2013-01-16 16:59:37
Bunzo @Kominebunzo

沈頭鋲の亀裂問題を平頭部分の角度を78度から100度に広げてディンプルを浅くして解決したのがダグラスシステム。鋲の頭は専用工具を用いてディンプルを作る押し型としても機能したので生産性も向上。ダグラスシステムは次世代高性能旅客機製造のためのプロジェクトの一つだった。

2013-01-16 17:03:15
Bunzo @Kominebunzo

工夫満載のダグラスシステムを前提とした高性能旅客機とは、あの、DC-4E。中島飛行機はこれを買ってダグラスシステムの現物を手に入れている。米国もよく売ったと思うけれど、純粋に民間の技術ゆえなのか。それが「深山」大攻の面白い点のひとつ。

2013-01-16 17:06:51
猫ノ宮美也 @nekonomiya2

@Kominebunzo 現物があっても特許でマネできないとか、そんなことはなかったんですかにゃ。

2013-01-16 19:46:59
Bunzo @Kominebunzo

@nekonomiya2 大型機は外板を張り替えるのは常識でしたから、リベットについてはインストがあったと思います。でないとバランスが崩れますものね。ちなみに九六陸攻クラスは飛行時間1000時間も経ったら皮は全部張り替えになっています。

2013-01-16 19:51:15
Bunzo @Kominebunzo

アメリカの沈頭鋲はダグラス、マーチン、カーチス、ベルでそれぞれ勝手な形状、鋲打ち手法が採用され規格統一とは程遠い状態で戦争を迎える。こんな事になったのは、1934年、米陸軍が沈頭鋲による接合部は強度が不足すると評価したため。沈頭鋲とは軍用機の注文主が否定する技術だった。

2013-01-19 16:00:58
Bunzo @Kominebunzo

戦時大量生産時代を迎えて沈頭鋲が形状、工作法、接合強度、そして沈頭鋲の目的である外板の平滑度まで各社バラバラという混乱の収拾に乗り出したのは国立標準局(National Bureau of Standards)。こうして戦争中期に「NACA鋲」が生まれる。

2013-01-19 16:10:51
Bunzo @Kominebunzo

NACA鋲はそれまでの沈頭鋲とは逆に外板の裏側から鋲の軸を通して飛び出した軸を外板に前もって凹ませていたディンプルに叩き込んで平頭部を成型する方式。そして「少し盛り上がった平頭部を専用のハンドミリング工具で平滑になるまで切削加工する」という、怖ろしく面倒なやり方だった。

2013-01-19 16:16:30
Bunzo @Kominebunzo

戦時量産規格なのに工程が複雑で工数が増えたのはNACAが推奨する層流翼が翼表面の平滑さを必要としたから。それでも必要な平滑度は得られなかった。ここまで来ると層流翼は流行というよりもむしろ悪魔の理論でしかない。米機の表面の美しさは技術力の発露と同時に「病気の症状」でもある。

2013-01-19 16:34:12
Bunzo @Kominebunzo

英国はスピットファイアに代わる機体としてマーリン装備のP-51を国内生産する計画を立て実際に発注までしている。この計画が流れた理由は「製造困難」「冶工具不足」、すなわち英国には真似ができないNACA鋲が原因だった。層流翼騒動はスピットファイアの延命にまで絡んでしまう。

2013-01-19 16:40:45