曲亭馬琴の小説技術論「稗史七則」について

曲亭馬琴の小説技術論「稗史七則」についてです。
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森瀬 繚@翻訳クラファン開催中(固定ポスト参照) @Molice

「具体的には、曲亭馬琴による本邦初の小説技術論「稗史七則」の発見が大きかった。近代文学は馬琴を否定することで始まったなんて、技術史的には、真っ赤な嘘ですよ。」--いかん、これ読んでみよう。 http://t.co/o57nODI9

2013-02-02 03:29:08
森瀬 繚@翻訳クラファン開催中(固定ポスト参照) @Molice

「稗史七則」とは『南総里見八犬傳』九輯中帙付言にて曲亭馬琴が提言した小説執筆作法で、「主客・伏線・襯線・照応・反対・省筆・隠微」から成ります。小説に限らず、僕があれこれの文章を書くにあたっての金科玉条でもありまして。

2013-02-02 03:31:44
森瀬 繚@翻訳クラファン開催中(固定ポスト参照) @Molice

だいたい、『小説神髄』で馬琴作品を勧懲小説とぶったたいた坪内逍遥にしてからが、いかに馬琴的な物語を書き散らしていたかという論考がいくらでもあるわけです。そこで声をあげた幸田露伴に痺れて憧れちゃうわけです。素敵! http://t.co/UTctLT0R

2013-02-02 03:36:56
森瀬 繚@翻訳クラファン開催中(固定ポスト参照) @Molice

で、この「稗史七則」に含まれない曲亭馬琴の物語作法というのがありまして。『南総里見八犬傳』第14回の末尾で触れられている「文外の画、画中の文」。ここで例示されたのは、金碗大輔渡河図で示される「本文でははっきり書かれていないが、出像(挿絵) を見れば情景がわかる」というお話。

2013-02-02 03:43:22
森瀬 繚@翻訳クラファン開催中(固定ポスト参照) @Molice

曲亭馬琴には、出像(挿絵)も物語と密接に関わる要素であるべきという強い確信がありました。その意味でも彼は単なる文字書きではなく、「(パッケージとしての)本を作りたい」人だったのでしょう。彼は画工への指定を実に細かく著し、多くの場合自ら下絵を作り、描きこまれるべき要素を示しました。

2013-02-02 03:45:53
森瀬 繚@翻訳クラファン開催中(固定ポスト参照) @Molice

このあたりは、高田衛先生の『完本 八犬伝の世界』(ちくま文庫)に詳しいので、興味ある方はこちらをどうぞ。こいつの中公新書版を高校時代に読んで以来、曲亭馬琴は僕の偉大なるお手本でありました。 http://t.co/J0kd9vwk

2013-02-02 03:48:12
リンク t.co Amazon.co.jp: 完本 八犬伝の世界 (ちくま学芸文庫): 高田 衛: 本 Amazon.co.jp: 完本 八犬伝の世界 (ちくま学芸文庫): 高田 衛: 本
森瀬 繚@翻訳クラファン開催中(固定ポスト参照) @Molice

このあたりのひそみ、趣向といったものが初期遊演体ネットゲームに横溢していて、今それを受け継いでいるのがLiar-soft。表示テキストに、表示されていない音声を被せるとかいった多層性は、馬琴がテキスト(彼のルビは一種の芸術です)と出像で作り出した表現空間の延長上にある。気がする。

2013-02-02 03:51:21
森瀬 繚@翻訳クラファン開催中(固定ポスト参照) @Molice

うぬぬ。馬琴のルビ使いが一番凄いあたりになると、それこそ文の両側にルビが付せられているのを見たことがあるのだけど、あれはどの辺であったろうか。

2013-02-02 04:14:11

稗史七則 詳細

ゆかにゃん@いろいろないしょのおしごとちゅう @minakawayuka

せっかくなので滝沢馬琴先生の「稗史七則」をつぶやくよー

2013-06-12 01:20:37
ゆかにゃん@いろいろないしょのおしごとちゅう @minakawayuka

1.主客 能楽のシテ・ワキ⇒主役・脇役 エピソードごとに主役・脇役の分担があり、主役が脇役に、脇役が主役になるといった形で役割を変えることもある。

2013-06-12 01:20:50
ゆかにゃん@いろいろないしょのおしごとちゅう @minakawayuka

2.伏線 「伏線は、後に必ず出すべき趣向あるを、数回以前に些墨打(ちょっとすみうち)して置く事なり」 墨打ち:前もって手を打っておくこと

2013-06-12 01:21:07
ゆかにゃん@いろいろないしょのおしごとちゅう @minakawayuka

3.襯染(しんぜん) 「襯染は下染(したぞめ)にて、此間にいふしこみの事なり」 重要な事柄の趣向を出すために、数回前から事物の原因や経緯を入れておく。 趣向:作品の背景として選ばれた類型的な「世界」に対し、作者が当時の事件から取り入れたり、創作したりして盛り込む劇的工夫。

2013-06-12 01:24:16
ゆかにゃん@いろいろないしょのおしごとちゅう @minakawayuka

4.照応 「照対」ともいう。 「譬えば律詩に対句ある如く、彼と此と相照らして、趣向に対を取るをいふ」 ⇒「照対」は「重複」とは異なる。「重複」は作者の誤りで前の趣向に似たことを後でまた繰り返してしまうことを指す。

2013-06-12 01:24:44
ゆかにゃん@いろいろないしょのおしごとちゅう @minakawayuka

例: ・牛の角の「照応」 船虫と媼内(おばない)が牛の角で殺される場面(第90回) 闘牛の場面(第74回)

2013-06-12 01:24:49
ゆかにゃん@いろいろないしょのおしごとちゅう @minakawayuka

例: ・組み討ちの「反対」 現八が芳流閣で信乃を捕らえようとする(第31回) 信乃と道節が千住河の繋ぎ船で現八を捕らえようとする(第84回)

2013-06-12 01:25:23
ゆかにゃん@いろいろないしょのおしごとちゅう @minakawayuka

5.反対 同じ展開であっても、シチュエーションを反対のものとする。 「照対は、牛をもて牛に対(つい)するが如し。その物は同じけれども、その事は同じからず。又反対は、その人は同じけれども、その事は同じからず」 「事は此彼相反(あいそむ)きて、おのづらに対を做すのみ」

2013-06-12 01:25:18
ゆかにゃん@いろいろないしょのおしごとちゅう @minakawayuka

6.省筆(しょうひつ) 事情の説明などをくどくどと繰り返すことを避けるため、その場の会話に参加していない人間に立ち聞きさせる。 地の文ではなく、登場人物のセリフとして説明させる。 「作者の筆を省くが為に、看官(みるひと)も亦倦(またたいくつせ)ざるなり」

2013-06-12 01:25:38
ゆかにゃん@いろいろないしょのおしごとちゅう @minakawayuka

7.隠微 「隠微は、作者の文外に深意あり。百年(ももとせ)の後知音を俟(まち)て、是を悟らしめんとす」

2013-06-12 01:25:51
ゆかにゃん@いろいろないしょのおしごとちゅう @minakawayuka

『南総里見八犬伝』第九輯中帙附言、となります(*^_^*) @315yen

2013-06-12 01:36:23
ゆかにゃん@いろいろないしょのおしごとちゅう @minakawayuka

稗史七則は八犬伝の途中で語られているエッセイみたいなものです。RT @315yen: 皆河先生のツイート拝見して気になってググったけどなかなか見つからなくて図書館で調べようかなと思ってたのでふぁぼりまくりんぐ!いやでも詳細調べたいのでやっぱ図書館はいきます。

2013-06-12 01:34:42

参考