写真の登場による、西洋芸術の変革と日本画の関連について。そして、同じ事が今現在でも起こっているという話
- JORA_JORAEMON
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ゴッホが日本の浮世絵を見て、「日本人のデッサンは稲妻のようだ!」と驚嘆したのは有名な話。その頃から…いや、ずっとそれ以前から、日本の「線画」の伝統はとてもレベルの高いものだったんですよ…と主張してみたり。技術面だけ見ても、ね
2013-02-05 13:26:40ちなみに、ヨーロッパの芸術の歴史を紐解くと、ルネサンス以降、特にカラヴァッジョの頃から、リアル志向が大変に強くなります。一説によると、カラヴァッジョはカメラ・オブスキュラ技法を用いて絵を描いていたという説があります(簡単に言えば、写真の摸写みたいなものと思って下さい)。
2013-02-05 13:38:48そして、19世紀にちゃんとした写真が発明されるに及び、西洋芸術界はある意味、大変な挑戦を受けたことになります。例えば、ユトリロとかが、ほとんど写真の摸写をしていたのは有名な話。実は、ユトリロのあの個性的な構図は全部元ネタの写真があるのです。今で言うなら、トレースです、ぶっちゃけw
2013-02-05 13:40:14写真の登場まで、ヨーロッパの芸術界では、ダヴィッドやアングルに代表されるような新古典派が幅を利かせていた訳ですが(超写実手技的な絵柄で、神話や戴冠式などの壮大なテーマを描くのが特徴)、写真の登場により、その役割は写真に取って替わられそうになります。
2013-02-05 13:43:12いわば、西洋芸術界のメインストリームがすごくゆらいだ訳です。この時、芸術界には様々な模索の動きがあり、それがいわゆる印象派ですね(先行としてイギリスのターナーなどがいますが、中心はフランス)。つまり写真の登場により存在意義とアイデンティティを疑われることになった新古典派に替わる、
2013-02-05 13:45:16新しい芸術運動が起きた訳です。その印象派にメチャメチャ影響をあたえたのが、日本の浮世絵等の芸術でした。西洋の芸術家にとって、何がそんなに衝撃的だったかというと、技法的に言えば、「面」で描く西洋絵画と違い、「線」で空間を表現することが、ものすごく画期的だったのです。
2013-02-05 13:47:08さっきのゴッホのセリフ、「日本人のデッサンは稲妻のようだ」とはそういう意味です。一筆書きでさらさらと描いてしまう圧倒的なデッサン力、表現力に印象派のみならず、西洋芸術界は大変な衝撃を受けました。 従来の「面」で描く描き方は、写真によって脅かされていたところに、
2013-02-05 13:48:33まるで救世主のように日本絵画が現れた訳です。これは写真では絶対に映すことのできない、「表現」そのものの純粋な形だったからです。写実を旨とし、リアル路線でやってきた西洋絵画にとって、見事なカウンターカルチャーであり、写真によって行き詰まっていた西洋絵画に、次世代の芸術へのヒントを、
2013-02-05 13:50:51与えることになりました。こうして西洋絵画は「写実的」というくびきから解き放たれ、印象派やキュビズム、シュールリアリズム……さまざまな表現形式を花開かせていくのです。近代西洋絵画に日本絵画が与えた影響はかくのごとく大きい訳です。 それで、日本絵画の方も、西洋絵画から様々な技法を
2013-02-05 13:52:58取り入れました。この辺は有名な話ですから割愛。先のRTにあった、手塚がディズニーうんたらというのも、その一環。お互いに影響をあたえまくっている訳です。ぶっちゃけ言えば、どっちもパクリですw でも、とにかく、19世紀以降の西洋絵画の流れは、「写真では表現できないもの」これを中心に
2013-02-05 13:54:41考えれば、大体よろしいと思います。 …で、私が何が言いたいかというと、実は19世紀にあった写真の絵画への巨大な影響、これと同じくらいの大きなショックが、実は今、リアルタイムで進行しています。それはCG(特に3D)の登場です。 これは個人的な考えですが、
2013-02-05 13:56:24ハリウッド映画に代表されるような、もはや実写と区別のつかない3Dの登場は、いわば新古典派的な絵画に完全にとどめを刺したといっていいでしょう。フランスの現代芸術では、スーパーリアリズムとかが持てはやされた時もありましたが、ぶっちゃけ、今の3D技術を駆使すれば、もっとすごい画像を、
2013-02-05 13:58:17動かしたりすることも簡単に出来る訳です。だから、正直、リアリズム系の絵画にはもう脈はないと個人的には思います。実際、現代芸術界が訳の分からない表現に走っているのは、写真→動画→CGという技術革新に、芸術界側が勝てなかった証左といっていいでしょう(勝ち負けの問題じゃないですが)。
2013-02-05 14:00:20長すぎますね、ゴメンナサイ。で、実はこの話は我々、一介の絵描きにも関係ある話でして、つまり今でこそちょっと流行ってますけど、厚塗り系の絵には、実はあまり将来性はないんじゃないかと、自分は思っています。これは賛否両論ありそうなので、自分としては反論されたら、それに応える気力は、
2013-02-05 14:03:27ないんですが、歴史の流れから必然的にそういう方向性が導き出されるような気がします。つまりこれは、「面」の表現と「線」の表現と戦いみたいなもので、「面」の表現が進歩した技術にとって変わられてしまうのなら、厚塗り技法は他の技術によってリプレースされてしまう可能性が高い、という予想。
2013-02-05 14:05:21あれを見て、衝撃を受けたからなんですねw 絵画の歴史における「面」的な表現を…いや「漫画」的な表現まで、あそこまでCGで再現されたら、もう絵を描く必要なんかないじゃんみたいなw 先日楼さんに作ってもらったMMDついなちゃんも、ぶっちゃけ自分が描くより可愛いし!w でも、だからこそ
2013-02-05 14:08:53今後の芸術(漫画イラストであれそうでない芸術一般であれ)、CG技術の発展によってリプレースされない「何か」を作品に込めないといけないし、実は芸術の本質というものは、そこにあるのだろうと思う訳です。そして、絵画という芸術の場合、残念ながら、「面」の表現はあっさりと、実にあっさりと、
2013-02-05 14:10:41CGにとって替わられつつあると言っていいと思います。19世紀の印象派が抱いた危惧以上のものを持つべきでしょうね(一部の現代芸術家はこの問題意識を強く持っていると思います。…が、どうも現代芸術は妙な方向に傾きやすいのでね…) 漫画イラスト表現であれば、「線」の表現がおそらく、
2013-02-05 14:12:10一番、最後まで技術発展にとって替わられず、命脈を保つのではないでしょうか? 思えば、アルタミラ芸術に原始人が絵を描いた頃から、線の表現は芸術の本質でありました。最古の表現であり、最後まで生き延びる表現だと思います。自分が「塗り」より「線画」にこだわりがあるのは、そのためです。
2013-02-05 14:14:07(こんな理屈っぽく考えた訳ではなくて、本能でやってるうちに、そうなったんですがw) まあ、以上が私なりの、西洋芸術、日本芸術、そして写真→CGへの技術革新、この三者の関係に関する思索です。ご静聴ありがとうございました。(あまりにTL汚しだったので、しばらくしたら消しますw)
2013-02-05 14:16:00ちなみに、技術革新が人間の仕事を奪うというのは、芸術に限らず、普通の仕事の現場でも、どこでも起こってることですよねw 実はそれとまったく同じ構図です。 …あ、ちなみにCGが悪いとか言ってる訳じゃないですよ! むしろCG作っているのも人間ですし、超すごいと思うのです。
2013-02-05 14:18:17