【竹の子書房】玉手箱 →黒蜥蜴← 怪集【タイトル&目次連携企画】

「タイトルと目次が同じなのに、内容はまったく違う本があったらおもしろいよね」 という思いつき。 【黒蜥蜴(くろとかげ)】というタイトル、目次は全て同じ、このお題で、方やBL、方やガチ怪談という2冊セット本を企画。 続きを読む
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須藤安寿/水冷式妄想機械 @anjusuto

@ts_p 玉手箱(恐怖箱との連携企画)「黒蜥蜴 18 青い羊歯」(5)です #tknk

2010-11-23 15:41:55
須藤安寿/水冷式妄想機械 @anjusuto

@ts_p 秋月は多少ショックを受けたらしい。それがおかしかった。少し前まで亮輔も義也の言葉を疑ってはいなかったのだが、さすがに口にできない。「しょうがねえ、食いつめたらそっちに行くか」まるで亮輔を試すように、秋月はため息まじりにそう言葉をもらした。「だ……だめだよ、そんなの!」

2010-11-23 15:42:12
須藤安寿/水冷式妄想機械 @anjusuto

@ts_p 玉手箱(恐怖箱との連携企画)「黒蜥蜴 18 青い羊歯」(6)です #tknk

2010-11-23 15:42:35
須藤安寿/水冷式妄想機械 @anjusuto

@ts_p 「馬鹿、冗談だ」慌てる亮輔に、秋月は笑みを見せた。車に向かいながら、亮輔の髪をそっと撫でる。「おまえを危険に巻き込むようなことはしないから……安心しろ」秋月は車を発進させ、ラジオをつけた。会話の糸口が見つからない。このドライブをどう締めくくればいいのか分からなかった。

2010-11-23 15:42:53
須藤安寿/水冷式妄想機械 @anjusuto

@ts_p 玉手箱(恐怖箱との連携企画)「黒蜥蜴 18 青い羊歯」(7)です #tknk

2010-11-23 15:43:14
須藤安寿/水冷式妄想機械 @anjusuto

@ts_p 「もう少し、付き合え」車を返したあと、秋月は低く言った。亮輔を振り返りもせずに先に立って歩き始める。最初は店に行くのだと思った。脇田に土産を渡すのだろう、と。だが秋月は植物園へ続く交差点で足を止めた。亮輔も三歩か四歩遅れて立ち止まる。その距離を、詰めることができない。

2010-11-23 15:43:29
須藤安寿/水冷式妄想機械 @anjusuto

@ts_p 玉手箱(恐怖箱との連携企画)「黒蜥蜴 18 青い羊歯」(8)です #tknk

2010-11-23 15:43:47
須藤安寿/水冷式妄想機械 @anjusuto

@ts_p 「この時間ならまだ温室も開いてる」秋月は、立ち尽くす亮輔のところまで戻ると、そっと亮輔の肩を抱いた。「別に便所でヤらせろって言ってるわけじゃないぞ。ただおまえに温室を見せたいんだ」「なんで……?」声がかすれた。泣きそうだった。「あそこは、そういう場所じゃないから……」

2010-11-23 15:44:03
須藤安寿/水冷式妄想機械 @anjusuto

@ts_p 玉手箱(恐怖箱との連携企画)「黒蜥蜴 18 青い羊歯」(9)です #tknk

2010-11-23 15:44:20
須藤安寿/水冷式妄想機械 @anjusuto

@ts_p 秋月は饒舌な男ではないし、話し上手でもなかった。ぼそぼそともらす言葉の真意を読み取りきれないことも少なくない。促されるままに植物園の熱帯温室に入ったときも、亮輔はまだ居心地の悪さを捨てきれずにいた。ここには厭な記憶がありすぎる。秋月の手を振り払って、逃げ出したかった。

2010-11-23 15:44:41
須藤安寿/水冷式妄想機械 @anjusuto

@ts_p 玉手箱(恐怖箱との連携企画)「黒蜥蜴 18 青い羊歯」(10)です #tknk

2010-11-23 15:45:02
須藤安寿/水冷式妄想機械 @anjusuto

@ts_p 足を踏み入れると、柔らかく湿った熱い空気が肌を押し包んだ。同時にその光景の眩しさに飲み込まれそうになる。降り注ぐ光の煌き。生命力あふれるいくつもの緑。苔と羊歯に覆われた岩肌を這う小さな流れ。その葉陰に黒い蜥蜴の姿を見たようにさえ思う。これが……秋月の見せたかったもの。

2010-11-23 15:45:18
須藤安寿/水冷式妄想機械 @anjusuto

@ts_p 以上です。あと2章、がんばるぞー!!! というわけで、トゥギャってきます。

2010-11-23 15:46:12
サデスパー堀野(サデさん) @aniz0213

@ts_p そんなわけで、ご本人の許可も出たので、ニョッキリマン第3弾「聖アンジュ妃」リリース!「黒蜥蜴」用ですかね→ http://p.twipple.jp/xPJEd http://p.twipple.jp/ZBb34

2010-11-24 21:55:12
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須藤安寿/水冷式妄想機械 @anjusuto

@ts_p うーん、寒い。と、ひざ掛けにくるまりながら、玉手箱(恐怖箱との連携企画)「黒蜥蜴 19 僕の小さな霊魂が」10本投下します。 #tknk

2010-11-25 16:36:56
須藤安寿/水冷式妄想機械 @anjusuto

@ts_p 玉手箱(恐怖箱との連携企画)「黒蜥蜴 19 僕の小さな霊魂が(1)」です #tknk

2010-11-25 16:37:18
須藤安寿/水冷式妄想機械 @anjusuto

@ts_p 頭上を覆う芭蕉の大きな葉をずっと見上げていたかった。傍らに立つ秋月も、ずっと無言のままだ。陽光の射す温室内にいるのは子供連れの若い母親と、旅行中らしい中高年のグループだけだ。深夜にここを訪れるような連中の姿はない。穏やかな緑の光景。だが秋月は亮輔のそばを離れなかった。

2010-11-25 16:37:46
須藤安寿/水冷式妄想機械 @anjusuto

@ts_p 玉手箱(恐怖箱との連携企画)「黒蜥蜴 19 僕の小さな霊魂が(2)」です #tknk

2010-11-25 16:38:07
須藤安寿/水冷式妄想機械 @anjusuto

@ts_p 「秋月さん、ここ……よく来るの?」「二度目だ。もう、四年前か。あの国に行く前に一度来た」「誰かと一緒に?」脇田と一緒だったのではないか、ふとそんな考えが浮かんだ。秋月と脇田が恋人同士だった――とは亮輔には思えない。ふたりのあいだにあるのはもっと別のつながりなのだろう。

2010-11-25 16:38:26
須藤安寿/水冷式妄想機械 @anjusuto

@ts_p 玉手箱(恐怖箱との連携企画)「黒蜥蜴 19 僕の小さな霊魂が(3)」です #tknk

2010-11-25 16:38:45
須藤安寿/水冷式妄想機械 @anjusuto

@ts_p 「ひとりだったよ」秋月は亮輔の髪をくしゃくしゃと撫でた。余計な詮索をして傷つくな。そう言われたような心地。「付き合ってた男が死んだばかりだった。俺は一緒に死んでやることもできなかったし、葬式にも出なかったから、代わりにここへ来たんだ。たぶん、あいつは知らなかったから」

2010-11-25 16:39:51
須藤安寿/水冷式妄想機械 @anjusuto

@ts_p 玉手箱(恐怖箱との連携企画)「黒蜥蜴 19 僕の小さな霊魂が(4)」です #tknk

2010-11-25 16:40:09
須藤安寿/水冷式妄想機械 @anjusuto

@ts_p 「あいつはこんなにきれいな光景があることを知らないまま逝ったから」その秋月の告白に、どきりとした。『どうしてこんな馬鹿なことをした。店の客と遊ぶのとはわけが違う。殺されてたかもしれないんだぞ』秋月の怒号が耳の奥で蘇った。それは昨夜聞いた波の音に似ていたような気もする。

2010-11-25 16:40:28
須藤安寿/水冷式妄想機械 @anjusuto

@ts_p 玉手箱(恐怖箱との連携企画)「黒蜥蜴 19 僕の小さな霊魂が(5)」です #tknk

2010-11-25 16:40:56
須藤安寿/水冷式妄想機械 @anjusuto

@ts_p 『男同士でヤるのは割り切りやすい遊びだ。心のどこかでいつもそう思ってる。何度過ちを繰り返してもそれが捨てられない』秋月の言葉の向こう側にあるものを、初めて垣間見た気がする。見知らぬ青年が深夜の植物園にたたずむ姿が浮かぶ。その青年が秋月と脇田をつないでいるのだろうか?

2010-11-25 16:41:21
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