【竹の子書房】玉手箱 →黒蜥蜴← 怪集【タイトル&目次連携企画】
@takenoko_BL 秋月に触れられるとき、亮輔は自らの体の内にひそむ異形の影を感じずにはいられなかった。砂の褥に息づく、冷たい肌の生き物。身を捩ってもがいている。その話をしたら秋月は珍しく笑みを浮かべた。「知ってるよ。ここにだろ?」そう言って秋月は亮輔の胸にくちづけをした。
2010-09-04 18:05:45@takenoko_BL 「得体のしれない行きずりの男に夢中になるなんて、考えたこともなかったんだろう? 男同士でヤるのは割り切りやすい遊びだくらいに思ってたか? おまえはこのまま俺に束縛されることを怖れているし、捨てられるのも厭なんだよ。そうだろ、亮輔? 苦しいのはそのせいさ」
2010-09-04 18:06:33@takenoko_BL 「……なんだよ、それ」何もかもお見通しだというように断言されたのが面白くなかった。秋月の表情は苦々しく歪んでいたが、怒りのせいではなく、いつもより興奮しているからだ。そう気づいて亮輔は少し怖じ気づいていた。力任せに抑えこまれれば勝ち目などあるわけがない。
2010-09-04 18:11:44@kuromuku 私のブログに再録版があります。これだと一気に読んでいただけまする。>>>http://ameblo.jp/anju-suto/entry-10639239650.html
2010-09-06 21:55:39@takenoko_BL 「俺も亮輔と同じだ。そんな気分だった。あの国で、砂の丘に挟まれて風の音を聞いていたときに」掴みかかってくるかと思ったのに、秋月はそっと亮輔の首筋を撫でただけだった。そしてまた、遠い国の話を繰り返す。一瞬、亮輔はその双つの丘の光景を垣間見たような気がした。
2010-09-07 00:47:40@takenoko_BL なだらかな砂の双丘。空と,砂と、風が描く文様だけの世界。遠い異国の見知らぬ風景に心惹かれているなんて決して言いたくない。それなのに瞼に浮かぶ映像が鮮やかに胸を打った。朝日に輝く稜線、灼熱の真昼に揺らぐ陽炎、夕日に染まる砂の煌きを、秋月は誰と見たのだろう。
2010-09-07 00:48:39@takenoko_BL 冷たい肌の生き物が体の奥を蠢く居心地の悪さ。それが愚にもつかぬ嫉妬であることは指摘されるまでもなく分かっている。騙されて寝てやってもいい――もうそんな気持ちにはもどれなかった。欲しいのは異国の太陽に染まった肌の感触じゃない。その下にある秋月の真実なのだ。
2010-09-07 00:49:33@takenoko_BL 泥沼の内戦が今も続く地球の裏側。旅行者が訪ねるには危険過ぎる場所だ。そんな国に秋月がなぜ赴いたのか、その答えを亮輔は知らない。三年も留まった理由も、何をしていたのかも……まるで知らない。そしてなぜ秋月は、ふたつの丘の光景を棄てて日本にもどったのだろう。
2010-09-07 00:50:00@takenoko_BL 「秋月さんは、苦しくない? こんな関係を続けていても……」こんな言葉を口にするのは初めてだった。言ってしまってから、もっと別のことを言いたかったのだという気がした。だがそれが何か、自分でも分からない。これまで亮輔は行きずりの男にしか甘えたことはなかった。
2010-09-07 00:50:51@takenoko_BL 「おまえの体で憂さを晴らすことに躊躇いを感じたり、苛立ったりはするさ。でもそれはおまえに不満があるからじゃない。独占できないからでも……ない。多分な」会話はそこで途切れた。秋月はまだ亮輔の体を撫でていたけれど、それ以上のことをしようとはしないままだった。
2010-09-07 00:51:38@takenoko_BL 秋月と関係を持った夜以来、亮輔は半年近く、他の男とは寝ていなかった。操を立てるなんて殊勝な気持ちではなく、ただ気が向かなかったからだ。それなのに涙が出てきた。秋月に甘えながら、裏では男漁りを続けていると当たり前のように思われていたことが、堪らなく切ない。
2010-09-07 00:52:54ブログ更新しました>>>「竹の子・正統BL『黒蜥蜴(18禁)』(連載)1.砂の褥(再録)」 http://ameblo.jp/anju-suto/entry-10641499203.html
2010-09-07 01:41:19@ts_p 「俺、金のピアスをつけたいんだ。で、秋月さんに、孔、開けて欲しい」夏の終わりの午後、亮輔は秋月を喫茶店に呼び出して、そう話を切り出した。「ピアス?」秋月は眉を寄せた。意外だったのだろう。同僚には全身ピアスだらけのバーテンもいるが、亮輔は耳にさえピアスなどしていない。
2010-09-09 17:27:09