時間線上の脇役達

『ツイッター上のカワカミン』番外編 もちこーぅ!と呟く謎の物体を巡ってのバトルロイヤル…もどき 完結
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だいけ ”夢送人”という字名を名乗るも、 @daike000

【1】『お悩み人生相談。24時間受付中。番号は→』そんな内容のチラシを、Efは駅前で受け取った。内容を眺めること数秒。携帯を取り出して番号を打ち込み始めた。…悩むこと数秒。通話ボタンを押す手は震えていた。

2010-09-04 11:34:11
だいけ ”夢送人”という字名を名乗るも、 @daike000

【2】押した。間髪入れず、電話が叫んだ。『銀色、聞こえるー?』聞き覚えの無い声だったが、しかし妙に明るく、呼びかけてくるような声。「はいはい、Efです!」知らず、名乗っていた。電話の向こう、一瞬の沈黙。そして、『誰だ…』

2010-09-04 11:36:41
だいけ ”夢送人”という字名を名乗るも、 @daike000

【3】疑念と疑惑の色しか伺えないその声音に、Efは妙な雰囲気を感じ取った。いつの間にか握り締めてグシャグシャになっていたチラシに目を落とす。「あれ、そちら人生お悩み相談じゃ、」ピーカー越しに複数の声。『応えろ、どうした?』『早くあの物体を』一体、どこに繋がってしまったのだろうか?

2010-09-04 11:41:35
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【4】『どうやら掛け間違えたみたい。ごめん』電話の向こうの誰かが、そんなことを言って謝ってきたので、Efは少しだけ慌てた。「いやそんな、掛けたのはこっちです。番号間違えたみたいで。アナタは悪くないです、こちらこそごめんなさい」すると電話の向こうの誰かが、息を漏らした。

2010-09-04 11:45:58
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【5】Efはこの誰かともう少しだけ話がしたい、と思ってしまった。笑顔で話が出来る相手。気楽に気軽に、顔も知らずに、それでも楽しみを共有出来る相手。そんな人なんじゃないだろうか、と。そんな期待を胸に、告げた。「あの、お友達になって頂けませんか…?」

2010-09-04 11:48:52
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【6】Johnは困惑していた。仲間に電話したつもりだったのだが、どうやら絶妙なタイミングで誰かから着信が入ったようだった。その間違い電話の主が、あろうことか、お友達になって欲しい、などと言い出したのだ。――バカバカしい、意味がない、無駄。そんな言葉が頭を過ぎる。

2010-09-04 11:51:41
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【7】何しろ自分には任務がある。設置した監視カメラは変わらず街の状況を本国に送信し続けているし、何度電源を落としても数秒で自動復旧する、上司の怒鳴り声を撒き散らすだけの傍迷惑な無線機はとうに放り出していた。耳元、電話の向こうの相手が息を呑んでいるのが、痛い程に分かっていた。

2010-09-04 11:55:36
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【8】――想像する。任務も身分も捨てて、自由に飛び立つ自分を。――思い出す。今の仕事に就く前の、息苦しくない、自由だった頃のことを。――自問する。自分は、一体いつ道を間違えたのか。軍に入ると決めた時か、それともあの学校を逃げ出した時か、それとも、幼馴染の告白から逃げた時か、――。

2010-09-04 12:01:11
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【9】「いや違う違う違う!何考えてんだ!」頭を振って、妙な想像を追い払った。すると電話越し、『え、何ですか?あの、ご迷惑でしたか?』そんな、申し訳なさそうな声が聞こえてきた。「いや違うそうじゃなくって!」思わず声を荒げてしまって、「いや、ごめん」『…大丈夫です』

2010-09-04 12:04:18
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【10】きっとこの電話の相手は、良い子なのだろう。確か――人生お悩み相談――とか言っていたような気がする。だから、この相手のことが気になった。そんなところに電話しようなんて考えた相手のことを、もっと知りたい、と思ってしまった。…もうずっと、一般人と触れ合うこともなかったしなぁ。

2010-09-04 12:08:07
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【11】思い返せば、軍に入ってこの偵察関連の道に行け、と命ぜられて以降、どこか捻くれた上司や同僚、後輩としか接してこなかったような気がする。…銀色仲間で戦友だが、少しだけ変わった性格をしてもいる。…物凄く優秀なのは事実だが。だから、この電話の相手との繋がりを切りたくないと思った。

2010-09-04 12:11:40
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【12】だから、せっかく繋がったこの細い糸を手繰り寄せるように、叫んだ。「俺はジョニ、…じゃなくって、…田中!田中って言うんだ…もう一度、アンタの名前を聞かせてくれるか!?」

2010-09-04 12:16:22
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【13】Efは、実は少しだけ戸惑っていた。相手が言い淀んで、偽名らしきものを名乗ったのが引っ掛かった。――ジョニ。その続きは、何だろう?――ジョニたぬきしゅくやーるるごーるど、とか。そんな楽しそうな名前が浮かんでだから、「Efです。よろしくお願いします」まだ見ぬ相手に頭を下げた

2010-09-04 12:24:21
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【14】「それで、あの、よろしければ今からお会い出来ませんか?」それはEfにとってはかなり思い切った決意で決心の言葉だった。もしや警戒されないだろうか、だとか、変なヤツだと思われやしないだろうか、だとか、色々と否定的なことが頭を巡る。だが、どうしても会っておきたい、と思ったのだ。

2010-09-04 12:26:28
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【15】せっかく繋がった糸。ここで電話を切ってしまえば、それが切れてしまう気がしたから。だから田中が『いや、俺、ちょっと仕事がさ。変なパタパタした羽の生えてるヤツを捕まえなくっちゃいけなくて。…あ、ヤバ、今の内緒な』と呟くのを聞いて、反射的に『お手伝いします!パタパタですね!?』

2010-09-04 12:28:23
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【16】Johnは思わず頭を抱えた。まだ身も知らぬ、電話で数語を交わしただけの相手に『任務』について漏らすなんて、なんたる失態だ、と。そこに追い討ちを掛けるように、『手伝う』との言葉だ。苦笑と苦渋とで顔と胸が一杯になりそうだった。――会えますか、か。…会える訳なんか、なかった。

2010-09-04 12:33:23
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【17】さっきのは感傷とかそんな類のモノであって、だから冷静に考えれば、会うなんてのは以ての外の筈なのだ。最悪の場合、――。軍の学校で身体に脳に叩き込まれたマニュアルから連想される事象の全てを、怒りと衝動とに変えて、拳を振るった。腰の乗った裏拳は空を切る筈で、だが、――

2010-09-04 12:40:21
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【18】「も、もちころーぅ!?」フルスイングを叩き込んだ何かが、拳にベッタリと張り付いて、妙な音を発していた。「な、なんだこりゃぁ!?」『ど、どうしたんですか!?』電話の向こうの声に応えることも忘れて、拳をマジマジと見つめた。真っ白な、餅状の物体が張り付いていた。

2010-09-04 12:43:37
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【19】レイシンは、お気に入りの自転車で街の中を走っていた。何事もなかったかのように、本気で誰とも会うことのない街中。響くのは、自転車のチェーンが立てる小気味良い音と、そして、「も、もちころーぅ…」前の籠で寝言を呟く、真っ白な餅だ

2010-09-04 17:38:43
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【20】「やっぱり小さくなったよなぁ…。熱で膨らんで、それで冷えて固まったから、縮まっただけの筈なんだけど」そう納得しようとするが、不安は拭いきれない。何をするにしてもすぐに疲れるようで、餅はすぐに寝てしまい、今では「この俺の籠が定位置、か」「…もちころーぅ」餅が、寝言で応えた。

2010-09-04 17:45:29
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【21】何となく不安な気持ちのまま自転車を走らせていると、不意に目の前に誰かが飛び出してきた。「っ!?」急ブレーキ、急ハンドル。ギリギリで回避し、「ばっかやろ!あぶねぇだろうが!」「もちこー!?」こちらの抗議の声に、「もちこーぅ!?」似たような声が、返ってきた。

2010-09-04 17:56:22
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【22】――え、餅が2人…?いや、2匹、か?そんなことをレイシンが思うのも無理はなかった。飛び出してきた、というか、こちらに気付きもしなかったのだろう。心此処に在らず、という感じの、どこかぼんやりした表情の小柄な少年。その肩に、拳大の白い塊が載っていた。

2010-09-04 18:01:35
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【23】2ndDealという名の少年は、周りの人々と少しだけ住む世界がズレていることに気付いていた。彼自身の口で言わせれば、「みんながズレてるんだよ。僕は最先端を行ってるの」ということになるらしいのだが。しかし周りの誰もが、彼の言葉に耳を傾けることはしなかった。

2010-09-04 18:05:26
だいけ ”夢送人”という字名を名乗るも、 @daike000

【24】だから、彼はその白くて喋る変な物体を見つけた時、「やっと僕にも運が回ってきた。何だか分かんないけれど、コイツが居れば僕も異世界に行ける!!!」そうして彼は、その白い物体を掴むと、肩に乗せてみた。「もちこーぅ!?」掴んだ瞬間、抗議の声が上がったような気がしたが、彼は無視した

2010-09-04 18:09:02
だいけ ”夢送人”という字名を名乗るも、 @daike000

【25】そしてそれから数刻が過ぎて、彼は今、無音の街を歩いていた。彷徨っていた、という表現が近いかもしれない。どこかで見たことあるような気のする、だが、知らない街。「一体ここ、どこなんだよ…?」疑問に答えてくれる誰かを求めて歩いていた。そして、音が聞こえた。誰かが、目の前に、――

2010-09-04 18:13:11
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