アイカツおじさんの顔が緩み、しっかりと頷いた。 「あんた、よく喋るようになったな」 「はい。先輩と会えたから」 幼女先輩の顔が真っ赤に爆発した。 「バカ、バカか!」 突き飛ばされたアイカツおじさんは尻餅をつく。脚に力が入らないのだ。構わず彼は続ける。《25/36》
2013-03-20 01:58:23「今日は、先輩にお別れを言いにきました」 凍り付く幼女先輩。突然の告白に言葉を失った。目に涙がたまっていく。 「ですが、これは永遠の別れではありません。僕は必ず帰ってきます」 「なんで、なんでそんなこと言うんだよぉ」《26/36》
2013-03-20 01:58:33音が消えた。全てが透き通った真っ白な空間にアイカツおじさんと幼女先輩は立っていた。 たったふたりの世界。 この出会いに意味はあったのか。 アイカツおじさんと少女先輩の出会いは必要か。不要か。 彼はその答えを知っていた。《27/36》
2013-03-20 01:58:49「僕は、世界へ行きます。アイカツで世界一になります!」 だから帰ってくる。世界一になって帰ってくる。 それは約束。 小指と小指が絡む、稚拙な契約。高度な戯れ言。 ゆびきりげんまん。《28/36》
2013-03-20 01:58:59「今日はプレイしないんですか?」 アイカツおじさんの問いに幼女先輩は目を逸らす。 「あたしにも事情があるのさ。詮索は無用だよ。これはあたしの罪と罰」 ならば仕方ないとアイカツおじさんは苦笑いをする。 さあお別れの時間だ。《30/36》
2013-03-20 01:59:33アイカツおじさんは「ありがとう」と言った。 幼女先輩も「ありがとう」と言った。 ここでこの物語は終わるのだろうか。 アイカツおじさんは「さようなら」と言った。 幼女先輩も「さようなら」と言った。《31/36》
2013-03-20 01:59:47ここで終わらせるのだろうか。もう少しだけ先を知りたくないか。 祈れ。祈ったか。 アイカツおじさんは終わらない。きっと。《32/36》
2013-03-20 02:00:12「あんた、こんなところでなにしてるの!」 ガラスをひっかくように叫ぶのは幼女先輩ママだった。 「今日はおねしょしたから、ゲームはダメって言ったでしょ!」 幼女先輩の手を引っ張る。 「ち、違っ」 幼女先輩ママとアイカツおじさんの顔を交互に目配せして否定する。《33/36》
2013-03-20 02:00:28「今日はご飯の後にジュース飲んじゃダメですからね!」 引っ張られながら、幼女先輩は空いている手を振って違う違うとアイカツおじさんへアピールした。 「ママー、ふえぇぇぇぇぇ」 声は遠退いて、アイカツおじさんはひとりに。 「まずはアメリカか」 前へ前へ。世界へ。《34/36》
2013-03-20 02:00:44「サイトシーイング。ビーフ。センキュー」 英語の確認をする。何とかなるだろう。アイカツがあれば言葉などいらないではないか。 世界にはどんなプレイヤーがいるのだろうか。どんな強敵が待ち受けているのだろうか。 アイカツおじさんは空を飛ぶ。《35/36》
2013-03-20 02:00:57ここはロサンゼルス空港。 待合いベンチで顔を手で覆いうなだれる日本人男性が低い声で呟く。 「アイカツは日本にしかないだろうが」 空を飛んだアイカツおじさん。空港を出ることなく帰国! ア イ カ ツ 万 歳 ! アイカツおじさんと幼女先輩3《36/36終》
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