【KURAMA天狗】『動乱―前日檀―』
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【KURAMA天狗】緊急速報。明日、19:30よりノベル版公開予定の『動乱』。KURAMA天狗こと眼法一鬼と、とある少年の出会いを描く物語の前日談を、本日19:30より、公開します。見逃せないプロローグです。どうぞお楽しみに下さい。 #KURAMA天狗
2013-04-23 16:56:22【KURAMA天狗・動乱-前日檀-】時は幕末からさかのぼること、戦国時代。時の将軍のもとにしのびよる怪しげな影。燃え盛る炎に包まれる城内。はたして『敵』の正体やいかに。
2013-04-23 16:58:13【KURAMA天狗】まもなく、twitter版ノベル『動乱―前日壇―』をお送りします。戦国乱世、城内で起きたとある事件を描きます。主人公も登場しませんが、プロローグとしてお読みください!30分ほどツイートさせていただくと思います。お読みいただければ嬉しいです! #KURAMA天狗
2013-04-23 19:27:59時は遡り乱世戦国。大名同士が凌ぎを削り、天下統一を夢寄せた時代……。ごうごうと燃え盛る炎が暗い夜空を照らす。哨兵が異変に気が付いたのは、チリチリと肌が熱風に晒されたからだった。「こ、米蔵が燃えている!早ぅ、水を持て!」 1
2013-04-23 19:36:31驚きと悲痛に満ちた一声は、静けさを打ち破る。一気に騒がしくなった城内に、主も目を覚ました。「これは! なにごと!?」しかし、彼らはすでに『敵』の術中にはまっていた。人足が必死で火消しにあたるが、火の勢いは増すばかり。「一体誰が……」城内で異変は次々に起こっていた。 2
2013-04-23 19:38:10「ここの番兵らはどこに消えたのじゃ!」怒鳴る哨兵は、ようやく己の足元に転がる肉塊を見つけた。「――ヒィ・・・・・・!」番兵の喉笛はきれいに切り裂かれ絶命している。力のない四肢がおかしな方向に曲がった。パチパチと火種が燃えうつっているから、亡骸はゆっくりと業火に沈んでいくだろう。3
2013-04-23 19:38:59呆然とする哨兵に為す術はない。「ほっ。ほっ」そのとき、横を駆けた足軽が水桶を滑らせた。バシャ――ッ!飛び散る水しぶきに「この緊急事態に貴様ッ、」思わず声を張り上げた、瞬間、瞬間、男の顔を熱気が包む。眼前には紅蓮の炎が広がっていた。「火の、海……なぜ。火の手が早すぎる」4
2013-04-23 19:42:16哨兵は、腰の抜けた足軽をひっぱり炎に背を向けた。「貴様も死にたくはないだろ!ここには何者かが潜んでいる」だが、放たれた言葉は宙をさまよううちにドスンッ、哨兵は地面に伏した音にかき消された。「逃がすわけにはいかないんでね」足軽は手元に小さな針を光らせた。謎の男がにやり笑う……。5
2013-04-23 19:43:50あたりを煙が覆い始めると、城は混乱の頂点に達する。「だめだ、逃げられない」すべては『敵』の仕業。――タタタッと足音が廊下に響く。これは忍びの所業、側近である男はこの緊急事態を誰よりも早くに理解していた。「急がねば」主上を守ることこそ、自身の役目と決めた男だ。長い廊下を走り抜け 6
2013-04-23 19:45:47スパンッと襖を放ち、男は乱れた息を整えぬまま吠えた。「主上!風魔一族が侵入しております!」……月明かりが差し込む異様な静けさ、 誰が障子を開け放ったのか。 恐る恐る部屋を見渡す。 ごくり、唾を飲んだ。そして。ああ――、男は力が抜けていくのが分かった。 7
2013-04-23 19:49:40月明かりのせいで死顔がはっきりと見て取れた。濁った眼が浮かぶ。男は力を込めて、血の付いた畳を殴った。「……風魔……っ」「ほう、お呼びかねェ?」突如、落ちてきた影が返事をする。侵入者はその姿を現した。七尺二寸はあるかという巨躯な、んという威圧感だろうか。 8
2013-04-23 19:53:46「お、お主、風魔か。大人しく斬られい!」刀を抜くも威圧感に震えてが止まらない。一方、忍びはまったく動じることなく目の前に立ちはだかった。顔を覆いつくすヒゲと、獣のような眼光。「斬られろって言ったなァ? やなこったい。おれァ、風魔一族の五代目小太郎よォ」「風魔の、小太郎……」 9
2013-04-23 19:57:35将軍の感覚が狂っていく。声が出ず、体も動かない、息も荒れ脂汗がじんわりと噴き出した。死を覚悟した将軍に、あきらめと恐怖の色が浮かぶ。小太郎がにんまりと笑った。「おい。幻術にかけられるのは初めてかァ?」「げんじゅつ?」小太郎はすっと二本指を出した。将軍は、思わず見つめてしまう。10
2013-04-23 19:59:49ぐらぐらと支えを失ったように、ゆらゆら血走った眼は閉じられ、刀はするり落ちる「また今度遊んでやらァ」太い指で男の頭を小突くと、ドスン、側近は仰向けで畳の上に倒れた。ガハハっと笑い声はまるで獣そのものの咆哮だ、―― 五代目・小太郎は生ける伝説だった。 11
2013-04-23 20:03:47小太郎は異質の忍び、としか言いようがない。首だけになった城主をむんずと持ち上げる。「色男けぇ?」 まだ血がしたたり落ちるのを見て小太郎は唸った。「これでも介錯人のつもりだったんだがなァ。ちょっと気が逸っちまったみてぇだ。まあ構わんよな、くくっ」自らの死も選べぬ戦国時代。 12
2013-04-23 20:07:12小太郎は息をついた。どうも焦げ臭いにおいが鼻をくすぐる。「参った。ここも燃えそうだ、急がねえとな」 暴れ回った男は雇い主である北条の主君への土産を携える。すっぽり収まった首。血で汚れた髪がはらりと垂れた。瞬間――、跳躍をつけて飛び立つ小太郎。 13
2013-04-23 20:08:35獣に似た忍者、風魔の小太郎は月の真白さに溶けていく。ブオォォォォ、 大きな風が吹き上がる。 そして炎は咆哮をあげ、すべてを飲み込んでいった。 14 『動乱―前日壇―』終◆
2013-04-23 20:10:51【KURAMA天狗】いかがでしたでしょうか。以上、『前日壇』として明日に続く『動乱』のプロローグをお送りいたしました。ノベル版もコミティアで販売しますが、よろしければフォロワーのみなさまにはtwitterでの小説読みもたのしんでいただければと思います! #KURAMA天狗
2013-04-23 20:17:00読みかえすとところどころに誤字…。明日は読みやすさを重視してお届けします!5月5日以降は、まとめ読みもできるようする予定です。 #KURAMA天狗
2013-04-23 20:28:51