KURAMA天狗『動乱・上』

オリジナル作品「KURAMA天狗」ノベル版をtwitterにて公開する試みです。『動乱』『狗喰』『罪戻』『修羅』の作品から、『動乱・上』としてまとめたリストです。 誤字脱字もありますが暫定版としてご容赦下さい、感想も@unicornbtnあてにお待ちしております。 『前日譚』はこちら→http://togetter.com/li/492579 続き→http://togetter.com/li/493378
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ユニコーン事業本部@夏は休暇 @unicornbtn

【KURAMA天狗】 まもなく『動乱・上』をお送りします。 前日譚はこちら→http://t.co/KGvxEv7iLs 前日譚は戦国の世でしたが、時をかけぬけ今夜は幕末が舞台です。 #KURAMA天狗

2013-04-24 19:25:56
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【KURAMA天狗】これまでのあらすじ。戦国の世――突如火を放たれたとある城屋敷。混乱する城内で、ひとり、ふたりと暗殺されていく。そして、城主の命までも……。「おれァ、風魔一族の五代目小太郎よォ」すべては北条に仕える忍びの手によるもの!炎のなか、闇に溶け行く小太郎だった。

2013-04-24 19:31:51
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【動乱・上♯1】今は幕末――。しかし、万人の知る日本とは似て非なる日本。歴史は繰り返す。再びの動乱。果たして新たな時代に消えゆくものとは。黒船来航から早数年の歳月が経っている。

2013-04-24 19:34:00
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【動乱・上♯2】混乱広がる京都の町。碁盤の迷路は新参者を惑わせる。そんな道を『誠』の男どもが勢いよく通り抜けていった。「急げ!」「邪魔だガキ、どけっ」「ぐ、痛っ」みすぼらしい風体の少年がドスンと押され衝撃に呻く。

2013-04-24 19:36:04
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【動乱・上♯3】『御用改めである!』太平の世を、そう願った新撰組。しかし今や彼らも、京の都に惑わされているようだ。「大丈夫かい、坊や」驚いた店主がすかさず顔を出すも、浮浪児とわかるや眉根を寄せた。「さ、早く行っておしまい」「……」

2013-04-24 19:36:58
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【動乱・上♯4】世流でむやみな切り合いが激しくなったとたん町には浮浪児があふれかえった。親を奪われ、世間に捨てられ、ふらふら彷徨う子供の姿も珍しくない。「あ、…」少年・鈴丸の視界にはひらひらと浅葱色の羽織が揺れている。ぼおっとして何も考えられない。もう何日も物を食べていなかった。

2013-04-24 19:38:29
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【動乱・上♯5】よせては返す記憶の波。『死ぬなよ、鈴丸――』聞こえてくるのは共に里を飛び出した兄者の声だ。鈴丸は、満身創痍の体をひきずった。「わたしは、こんなところで倒れるわけにはいかないんだ……」まるで自分自身に言い聞かせるように瞳には強い光をやどしながら。

2013-04-24 19:40:51
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【動乱・上♯6】大柄な男が、淀川べりで空を眺めている。「一鬼さん」聞き覚えのある声に顔を向けると、町娘のさよが微笑んでいた。「おぅ、嬢ちゃんじゃないの」「またここで寝ていたのね」一鬼と呼ばれたこの男、名を眼法一鬼(がんぽういっき)といった。天気が良い日は、いつも昼寝か釣り。

2013-04-24 19:42:08
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【動乱・上♯7】かつて一鬼は淀川町で刀屋を営んでいた。侍相手の仕事をしていたが、ひょんなことから今では金物屋だ。それもさよの父親が釜の修理を頼んだことがはじまりだった。腕もさることながら、気さくな人柄が受けて評判が良い。『刀打つより、性にあってんだよ』一鬼はカカカッと笑った。

2013-04-24 19:44:12
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【動乱・上♯8】しかし、一鬼を刀から遠ざけた別の理由があることにさよは気づいていた。『・・・守らなきゃなんねーもんを、守るにはな』その理由まではわからないけれど。「気持ちのいい風ね」「ああ、そうだな。ふあああ」草花をなでていく。市中の騒がしさもここまでは聞こえない。

2013-04-24 19:45:42
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【動乱・上♯9】そばには『金物屋・修理シマス』の看板のあるボロ屋があった。ここが一鬼の住まいだ。(妙だな――)さよから預けられた包丁を片手に戻ると、奥から人のいる気配を感じた。空き屋にでも思われたのか。「出て来いよ、食いやしないぜ」

2013-04-24 19:46:56
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【動乱・上♯10】どうやら物陰に一三、四歳くらいの少年がうずくまっているではないか。しかも用意していた晩飯もすっからかん!はあ、とため息つくと、薄闇の中で光る目が殺気を放った。「――穏やかじゃないね。よう、どうして出てこないんだ?」一鬼は見定めるように暗闇に目を凝らした。

2013-04-24 19:47:42
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【動乱・上♯11】少年の腕はだらり垂れ、折れているようだ、足も血がにじんでいた。「傷だらけじゃないか!!」「離してくれっ」一鬼の剣幕に一瞬ひるんだ様子で少年は口を開いた。この少年こそ、長い旅路から京にたどり着いた鈴丸である。しかし威嚇か怒りか、憎しみか。殺気はゆるめないままだ。

2013-04-24 19:51:10
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【動乱・上♯12】手負いの獣ほど扱いにくいものだ。だが一鬼は鈴丸の昏い瞳のなかに、何か光を感じ見てしまった。あどけなさの残る声で鈴丸は言う。「奉行所にでも突き出すんならさっさとしてくんな」話せそうだ、ニシシと笑いながら一鬼は直感に従う。「働かざる者食うべからず、って知ってるか」

2013-04-24 19:52:59
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【動乱・上♯13】知ってる、こくりとうなづく鈴丸。「で、本題。お前、俺の夕飯、食ったよな?」「あ、ああ…」「だったら飯の分、ここで働け」「!?」鈴丸の目が大きく開かれると、一鬼は得意げに笑った。「おいらには行くとこあんだ」「奉行所はいやだろ?それに

2013-04-24 19:55:04
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【動乱・上♯14】その体じゃ無理だろ。ついでにケガ、治していけよ」今、鈴丸に浮かぶ感情は、疑いでも戸惑いでもない。「決まりだな」「・・・・・・世話ん、なる」鈴丸は身をよじる。あれほどまでのケガをしていながら、まだ動こうとしていた。

2013-04-24 19:56:35
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【動乱・上♯15】「そのあたり、毒虫出るから」「ぇ」「なんてな」おののく鈴丸に一鬼は優しく笑った。ただならぬ殺気はもう消えている。「泣かないたぁ、立派なもんだよ」「子供あつかいすんな」しかし鈴丸はこそばゆい気持ちでいっぱいだった。里を出て初めて、安心できる人間に出会ったのだ。

2013-04-24 19:58:08
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【動乱・上】終◆  #KURAMA天狗 物語は、【動乱・中】へと続きます。

2013-04-24 20:01:17
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【KURAMA天狗】以上、『動乱・上』をお届けいたしました。いかがでしょうか、感想などもお待ちしております。明日も同じ19:30~20:00にかけてお送りします。一鬼のもとに現れた謎の少年、鈴丸。彼の目的とはいったい。明日もどうぞよろしくお願いします。 #KURAMA天狗

2013-04-24 20:05:57