「ア・カインド・オブ・サツバツ・ナイト」#3後編・再放送Ver(実況なし)

ツイッター連載小説"ニンジャスレイヤー 第1部 「ネオサイタマ炎上/Neo-Saitama in Flames」"より @njslyr_rによる再放送「ア・カインド・オブ・サツバツ・ナイト」#3後編のまとめ(実況なし) #1 http://togetter.com/li/507904 #2&#3前半 http://togetter.com/li/508704 #3後半 (今ここ) 続きを読む
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NJSLYR SAIHOSO @njslyr_r

これらのニンジャが明らかに自分よりも強大であると察知したヨモダは、おとなしくドゲザし忠誠を誓った。実際、この中にはシックスゲイツが含まれていたため、彼の直感は正しかったといえよう。だが(((トレーニングを積み、いずれ寝首を掻いてやるさ)))という彼の考えはいささか甘すぎた。 23

2013-06-03 22:23:12
NJSLYR SAIHOSO @njslyr_r

ソウカイ・ニンジャとなったヨモダに待っていたのは、スラッシャー時代よりもそれ以前のサラリマン時代よりも、遥かに過酷な日々であった。カロウシと即死の違いこそあれ、いずれも死と隣り合わせという点では同じだが、ソウカイ・シンジケートでの生活はそのどれよりもサツバツとしていたのだ。 24

2013-06-03 22:27:16
NJSLYR SAIHOSO @njslyr_r

ラオモトの前に連れてゆかれ、忠誠の証としてドゲザし、レオパルドというコードネームを与えられた夜の事を、彼はいまだに覚えている。ラオモトの全身から発散される殺気と、七つのニンジャソウルの前に、彼の魂は圧倒され、恐怖し、誰に強いられるでもなく、ひとりでにドゲザしていたのだから。 25

2013-06-03 22:31:18
NJSLYR SAIHOSO @njslyr_r

彼は「このラオモトという男には一生かかっても、どんなにシツレイな手を使って襲ったとしても、絶対に勝つことが出来ないだろう」という歴然たる力の差を味わったのだった。ニンジャとなり、俗悪な暴力と憎悪の世界から脱出したかと思えば、さらにその上に暴力と憎悪の世界があったのである。  26

2013-06-03 22:35:01
NJSLYR SAIHOSO @njslyr_r

そして、ラオモトよりも遥かに恐ろしい恐怖として彼のニューロンに巣食ったのが……「忍」……「殺」……! 27

2013-06-03 22:38:06
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2013-06-03 22:39:16
NJSLYR SAIHOSO @njslyr_r

「アイエーエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ!」回想から現実に引き戻されたレオパルドは、頭を左右に激しく振りながら悲鳴を上げた。不意に、ドアが外側から開かれる。レオパルドは恐怖に凍りついた。集中を乱していたせいで、敵の接近に気付かなかったのだ。  29

2013-06-03 22:42:16
NJSLYR SAIHOSO @njslyr_r

それはニンジャスレイヤーではなかった。「アレエエエエエーッ!」オイランが後ろから蹴り飛ばされ、ふらふらと廃テンプルの中に入ってきたのだ。彼女が床に倒れ、胸の谷間に隠した小型銃を引き抜いて後方を振り返った瞬間、ドアの向こうでデッカーガンの銃声が上がり、オイランの頭が弾けた。 30

2013-06-03 22:45:19
NJSLYR SAIHOSO @njslyr_r

「無力化しろ」聞き覚えのある声が、廃テンプルに響く。その声に続いて、高性能緑色ライト付きサスマタを構えた十人のマッポが、土足のままタタミの上に乗り込んでくる。「アイエエエ? ノリベ=サン、犯罪者が倒れて死んでいますよ?」マッポたちは指差し確認を行いながら不思議そうに言った。 31

2013-06-03 22:49:18
NJSLYR SAIHOSO @njslyr_r

「仲間割れか? 奴らには良くあることだが」デッカーガンを油断無く構えたノリベが、気だるそうな声を出しながらテンプルに入ってくる。「首の辺りに何か刺さっています。これは…鉄の…トゲトゲとした…スリケ、アバーッ!」報告中だったマッポの額に闇の中からスリケンが飛来し、突き刺さる! 32

2013-06-03 22:52:13
NJSLYR SAIHOSO @njslyr_r

ノリベの号令のもと、マッポたちは一斉にサスマタを投げ捨て、腰のホルスターからマッポガンを抜く!スリケンが飛んできた方向めがけ、闇雲に銃を乱射した!ツーハンデッドソードを持った戦闘的ブッダ像が破壊される!闇の中から新たなスリケン!1人、また1人とマッポたちが死んでゆく! 33

2013-06-03 22:55:17
NJSLYR SAIHOSO @njslyr_r

「アイエエエエ!」ついに最後のマッポが倒れ、残るはフォールン・デッカーのノリベだけとなった。ノリベは高性能サイバーサングラスに備わったスキャニング機能を作動させ、鐘の上に立つニンジャ装束の男を認識する。そこから飛来する四枚のスリケンを、デッカーガンの射撃でたやすく破壊した。 34

2013-06-03 22:59:15
NJSLYR SAIHOSO @njslyr_r

「ドーモ…ノリベ=サン、レオパルドです」鐘の上に立つニンジャは、屠殺者のように無表情な声で言った。「俺を知っているのか?」ノリベは尊大な態度でそう返し、レオパルドの移動パターントレスを行いながらデッカーガンのトリガを引いた「だが俺は犯罪者の名前などいちいち覚えておらんぞ!」 35

2013-06-03 23:02:16
NJSLYR SAIHOSO @njslyr_r

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2013-06-03 23:04:16
NJSLYR SAIHOSO @njslyr_r

数分後、レオパルドが破壊した窓からヘルソード・テンプル内へと、赤黒い影がしめやかに着地する。ニンジャスレイヤーである。割られた窓から微かに忍び込んでくるネオン街の灯りが、フューネラル・ボンボリめいた陰鬱さで、廃テンプル内を照らす。タタミの上には、十数個の死体が転がっていた。 37

2013-06-03 23:07:14
NJSLYR SAIHOSO @njslyr_r

中央部に、向かい合って倒れるレオパルドとデッカーの姿が見えた。レオパルドはデッカーガンの射撃を受け、右膝から下が無かった。頭部の無いデッカーは、サイバネ義手を付け根付近から切断され、時折バチバチと火花を散らしていた。デッカーは絶命していたが、レオパルドにはまだ息があった。 38

2013-06-03 23:10:14
NJSLYR SAIHOSO @njslyr_r

レオパルドはぼんやりと天井の木目を目で追いながら、ソウカイヤの救援を待っていた。同時に、助けなど来るはずも無いことを予感していた。何しろ、ニンジャスレイヤーに遭遇した時から今まで、小型救援IRCメッセージ発信機の電源は常にONだからだ。切り捨てられたのだと薄々気付いていた。 39

2013-06-03 23:14:02
NJSLYR SAIHOSO @njslyr_r

ニンジャスレイヤーが視界に入る。不思議と、恐れはもう無かった。胸の奥に憑依したはずのソウルは、「忍」「殺」の恐怖によって去勢されたかのようであった。あるいは、もはや自分に存在価値など無い事を、レオパルドが悟ったためであろうか。ネオサイタマの死神は、慈悲の天使のように見えた。 40

2013-06-03 23:17:13
NJSLYR SAIHOSO @njslyr_r

「見逃してくれといったら、どうする?」もはや動く力すら残っていないレオパルドは、試みに聞いた。「駄目だ。全ニンジャを殺す」と、その狂人は答えた。「もう殺しはしない、と言ったら?」「常人が蟻を殺すように、ニンジャは人を殺す。いずれ、また、必ず殺すのだ」と答えた。 41

2013-06-03 23:20:16
NJSLYR SAIHOSO @njslyr_r

「見てきたような言い草だ」レオパルドが血の咳混じりに言う。彼の肺は、ニンジャスレイヤーのカラテと、デッカーの戦闘義手によって、両方とも破壊されていたのだ。「いかにも、見てきた。人の心がニンジャソウルの前に屈するのを」ニンジャスレイヤーは苦々しい口調で付け加えた。「ジゴクを」 42

2013-06-03 23:24:17
NJSLYR SAIHOSO @njslyr_r

「カイシャクしてやる」とニンジャスレイヤー。レオパルドの視界いっぱいに足裏が広がった。それが少し遠ざかり、カイシャクのためのタメが作られる。「ハイクを詠め」死神が冷酷に告げる。「寂しい秋な…実際安い…インガオホー」レオパルドが詠み終えると、デッカーの義手がバチバチと鳴った。 43

2013-06-03 23:27:13
NJSLYR SAIHOSO @njslyr_r

「ニンジャ、殺すべし…!」フジキドの足が容赦なくストンピングされ、レオパルドの頭部を破壊する。「サヨナラ!」叫び声と共にレオパルドの肉体は爆発四散を遂げた。…フジキドは胸に嫌な高揚感を覚えて舌打ちする。魂の同居人であるナラク・ニンジャの影響が、間違いなく及んできているのだ。 44

2013-06-03 23:31:16
NJSLYR SAIHOSO @njslyr_r

数十分後、住民の通報を受けて2人組のデッカーとマッポ・アシスタントたちが到着する頃、ヘルソード・テンプルには十数個の死体と、人型に焼け焦げたタタミだけが残されていた。それ以外は、何も、何も残らなかった。 45

2013-06-03 23:34:15
NJSLYR SAIHOSO @njslyr_r

ネオサイタマではごくありふれた、サツバツとした夜だった。割れた窓の外では、しとしとと重金属酸性雨が降り続く。誰にも見られることなく、血のように赤黒いニンジャの影が、ビル街の暗闇を飛び渡っていた。昂ぶりすぎた殺忍衝動を、淋しい秋の夜風で冷ますかのように、速く、速く……。 46

2013-06-03 23:36:59
NJSLYR SAIHOSO @njslyr_r

(「ア・カインド・オブ・サツバツ・ナイト」 終わり) 47

2013-06-03 23:39:16