ぼくがかんがえた超電磁砲×フォックスの葬送

渡辺零氏の超電磁砲×虐殺器官本にインスパイアされた結果の事故。俺得。
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クロウ教授(Fake) @Dr_crowfake

「学園都市第1位の超能力者、一方通行(アクセラレータ)が学園都市に反旗を翻した」蒸し暑いバンガローから叩きだされて司令部に出頭した私を待っていたのは、そんな無慈悲な現実だった。「一方通行はラオスの奥地に妹達による独立王国を形成している。当地の安全保障はそれにより脅かされている」

2013-06-18 17:51:55
クロウ教授(Fake) @Dr_crowfake

「よりにもよってラオスなんて」「勢力の真空地帯だったから都合が良かったんだろう。ともあれ、一方通行は妹達――ミサカシスターズの残存個体を連れ、その地域を制圧し、支配している。君の任務は、一方通行を排除し、当地域における安全保障問題の懸念を排除することだ」

2013-06-18 17:54:37
クロウ教授(Fake) @Dr_crowfake

「一方通行は学園都市最強の能力者ですよ。現在は能力が制限されているとはいえ、まともに立ち向かったら全滅は免れえません」「だからこそ君を呼んだのだ。学園都市第3位の能力者にして、不正規戦のプロである君、御坂美琴を」私は溜息をついた。

2013-06-18 17:58:25
クロウ教授(Fake) @Dr_crowfake

「私に妹達と戦えと?」「妹達は副次的目標だ。一方通行さえ排除出来れば、問題は解決されるだろう」私の感傷とはお構いなしに司令官は告げる。「君は学園都市軍の情報幕僚として任命され、この任務を遂行するよう、要請されている。拒否権はない」再び溜息を付いた私を司令官は咎める。

2013-06-18 18:01:15
クロウ教授(Fake) @Dr_crowfake

「君は強敵への恐怖心からではなく、倫理的な問題からこの作戦に消極的なようだな。しかし彼が支配地域で行なっている行為は、そのような感傷的問題では測れないほど重大だ」「というと?」「彼は妹達を頤使し、王国の基盤産業を構築しようとしている。それが問題なのだ」

2013-06-18 18:05:19
クロウ教授(Fake) @Dr_crowfake

「ヘロイン、ブラッドジュエル、そのたぐいのものですね」「そうだ。これらが彼の勢力圏から周囲に供給されることで、周辺地域は安全保障的にも経済的にも混乱に陥っている。闇経済の拡大だ。ベトナム軍は対処しようとしたが、一方通行と妹達の圧倒的戦力の前に敗退したよ。他の国は云わずものがなだ」

2013-06-18 18:08:04
クロウ教授(Fake) @Dr_crowfake

「彼の心理プロファイルからは想像できない行動ですね」「ああ。だが彼はレベル6計画を経験している」司令官は押し黙り、私もその言葉を噛み締めた。2万人の私のクローンを殺すことでレベル6に到達させんとしたあの計画を鑑みれば、彼が妹達に特別な感情を抱くのも否定出来ない。

2013-06-18 18:10:49
クロウ教授(Fake) @Dr_crowfake

そしてそれは、私にとっても特別な感情だった。クローンとはいえ、1万人以上の私の「妹達」を殺した男が、また妹達を頤使して、何かを始めようとすることなど許せはしなかった。だが、私はそれを噛み殺し、司令官の命令を待った。

2013-06-18 18:14:02
クロウ教授(Fake) @Dr_crowfake

司令官は云った。「「一方通行」の殺害。それが君の最優先任務だ。その障害になるものに関しては、全て排除して良いと統括理事会は判断している」つまりそれは、一方通行のみならず、妹達とも戦う可能性があるということだ。私は唇を噛み、やがて答えた。「お引き受けします」

2013-06-18 18:16:26
クロウ教授(Fake) @Dr_crowfake

その間にどれだけの葛藤があったか、おそらく司令官は察しているだろう。だが彼は冷徹に言葉を継いだ。「君には統括理事会から情報幕僚の権限ならびに無制限の殺人許可が降りている。必要とあれば行使し給え」そして司令官は私を下がらせた。

2013-06-18 18:18:47
クロウ教授(Fake) @Dr_crowfake

一方通行の支配する領域への単独潜入。マラヤですらフォーマンセルが常識だったのに、これは常軌を逸している。だが、かつての絶対性を失った「一方通行」と、私の能力は相性が良いのも事実だった。超電磁砲による遠距離狙撃。彼がベクトル変換能力を用いていない時であれば一撃だ。

2013-06-18 18:22:43
クロウ教授(Fake) @Dr_crowfake

問題は潜入経路だ。おそらく主だったルートは妹達に封鎖されている。そこを避け、一方通行の王国の最深部に向かうためには、どうしても過酷な行軍が必要だった。こんなとき、黒子がいればと思って、私はその考えを頭から振り捨てた。これは結局、私が決着を付けるべき問題だからだ。

2013-06-18 18:24:16
クロウ教授(Fake) @Dr_crowfake

幸い、私は濃密な情報支援のもとで行動が可能だった。一方通行の「王国」に到るまでの領域は、学園都市のUAVがくまなく偵察している。このデータを用いれば、隙をつき、中枢部へと突入することも可能といえば可能だった。

2013-06-18 18:26:21
クロウ教授(Fake) @Dr_crowfake

私はその情報に基づき、体力消費を防ぎ常人以上の踏破能力を付与する環境追従型倍力服を着込んで、サイゴンからラオスへと向かった。途中まではグローブマスターが運んでくれたが、一方通行の「王国」手前でHALO降下し、そこからは孤独な行軍が始まった。

2013-06-18 18:29:13
クロウ教授(Fake) @Dr_crowfake

ジャングルの中の行軍は、私の能力を用いた電磁駆動の環境追従型装甲倍力服を用いても困難なものだったが、なんとか「妹達」の前哨線にはかからずに、一方通行の本拠地にたどり着くことができた。UAVによる綿密な情報支援が、それを可能にしてくれた。

2013-06-18 18:54:06
クロウ教授(Fake) @Dr_crowfake

だが、UAVは一方通行が前哨線を引き払い、かなりの数の「妹達」を本拠に集結させていることをも伝えてきた。彼とてバカではない。おそらく、何らかの手段で攻撃があること、そしてその第1目標は自分であることを察知したのだろう。この数を相手に、一方通行だけを仕留めるのはかなり困難だった。

2013-06-18 18:57:03
クロウ教授(Fake) @Dr_crowfake

「妹達を盾にして、自分はのうのうと逃げまわるつもり?」私は腹の底からの怒りを覚えた。その戦術を取られた場合、私は多くの妹達の犠牲を積み重ねた上で、残った妹達のネットワークに演算能力を支援された一方通行に殺されるだろう。合理的で冷徹な判断だった。

2013-06-18 19:01:55
クロウ教授(Fake) @Dr_crowfake

だが、私の目的は一方通行のみだ。そして心理的にも、妹達には手を出したくなかった。倫理マスキングを拒否したのを、今になって後悔する。「自分だけの現実」を強固に保つためには倫理マスキングは邪魔だったのだが。あれは自我を曖昧にするから、能力発揮の障害となるのだ。

2013-06-18 19:02:33
クロウ教授(Fake) @Dr_crowfake

やがて私は一方通行の「王国」の中心までたどり着いた。そこには村落とケシ畑が広がっており、彼が司令官の云うとおりの行動を取っていることを示していた。その広大な地域に、三々五々、私の「妹達」が歩哨に立っている。これらを始末するのは、戦術的にも気分的にもありえなかった。

2013-06-18 19:10:04
クロウ教授(Fake) @Dr_crowfake

もし私が歩哨たる「妹達」を殺せば、その情報はミサカネットワークを通じて一方通行に伝わる。そうすれば彼はベクトル変換能力をオンにし、臨戦態勢に入るだろう。そうなればこちらに勝ち目はない。妹達を皆殺しにするほどの弾薬も覚悟もない私にとっては、迂回だけが残された選択肢だった。

2013-06-18 19:12:04
クロウ教授(Fake) @Dr_crowfake

私は環境追従型装甲倍力服の電源をオンにし、ケシ畑の中を歩哨をかいくぐって進む。一方通行がいるであろう、この村落の中心、司令部に向かって。幸いに、妹達とは遭遇戦にならなかった。オクトカムの性能に感謝するとともに、疑念を抱く。もしかして、私は一方通行に誘導されているのではないかと。

2013-06-18 19:14:32
クロウ教授(Fake) @Dr_crowfake

そしてその懸念は当たった。一方通行がいると思われる村落中心部の司令部まで潜入した私は、そこで十数名の「妹達」と一方通行が待ち受けている事に気づいたのだ。「よお。遅かったじゃねえか」一方通行は軽く云う。それが私の怒りを押し上げる。「あんた、ここで自分が何してるかって判ってるの?」

2013-06-18 19:17:26
クロウ教授(Fake) @Dr_crowfake

一方通行は肩をすくめた。「俺はな、統括理事会や学園上層部に振り回される自分と、その犠牲になるこいつらを放っておけなかったんだ。だから学園都市を離脱した。ここにこいつらと、俺の居場所を作ろうとしたんだ」「贖罪のつもり? そんなことで許されると思っているの、あんたは!」私は叫んだ。

2013-06-18 19:20:08
クロウ教授(Fake) @Dr_crowfake

「それで許されると思っちゃいねえよ。だけどな、御坂。お前のクローンが何万人も量産されて、世界中で戦ってるときに、俺がそのひとすくいだけでも救おうとして何が悪い」そう。一方通行が連れて行った「妹達」だけではない。学園都市は妹達を廉価な兵士として紛争地域に供給しているのだ。

2013-06-18 19:30:12
クロウ教授(Fake) @Dr_crowfake

そこには救いがない。そこには邪悪な意志しかない。そしてあまりにも強大だ。私はそれから目を背けて、ただ「一方通行を殺せば妹達の幾分かは解放される」という偽りの希望にしがみついて、ここまでやってきたのだ。「で、やんのか、やんねえのか?」一方通行が首をコキリと鳴らす。

2013-06-18 19:32:34