宮島達男氏による「光の蘇生」プロジェクトまとめ
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おはよう!昨日、告知が始まった「光の蘇生」は東京文化発信プロジェクト室+特定非営利活動法人AIT との共同リサーチプログラム。現代美術の保存や修復という、今まであまり議論されなかった問題を考える。そこで、ちょっと整理してみたい。http://t.co/jeav9biSSf
2013-06-20 08:34:201) 美術の歴史は「美しさ」をいかに永遠に伝えていくか。その技術の歴史であった。モザイチ、ア・フレスコ、テンペラ、油彩と続く技術は、美しい色を違うメデイウムで固着し、長く退色させないための工夫であった。だから、400年経ってもジオットの赤や青、ダビンチの肌色を楽しめる。
2013-06-20 08:42:472) この場合、美しさとは永遠性と同義である。そして、その美しさをさらに永遠せしめるために、後の時代の人々が「修復」を行う。修復の仕方も、時代によって考え方がずいぶん違う。以前の修復は、埃や汚れを除去するだけでなく、「修正」も行われていた。有名なのは、システイーナの「最後の審判」
2013-06-20 10:45:443) 作者ミケランジェロはここに出てくるキリストもマリアも裸体で表現。しかし、彼の死後、裸体は不道徳であるとして、局部に布を加筆した。また、最近、話題になった「残念なキリスト」もその一例。修復には技術と思想が大切だ。http://t.co/QrCHf1lnXS
2013-06-20 11:00:154) 最近の主流は、汚れや埃の除去の他、最低限の補修に止めること。作られた当時の姿に戻すことよりも、修復する時点の姿を永く維持することが求められている。では、作品を作った作者は、これをどう考えているのだろうか。実はアーテイストはこの問題をあんまり考えてこなかったと言って良い。
2013-06-20 11:15:045) 昔のアーテイストは作品を生み出すことと、その美を永遠に持続させるためのワザを同時に行っていた。しかし、現代作家は、永く保たせるワザの制約から解放され、より自由に、今のリアルを輝かせる道を選ぶ場合が多い。必然的に、技法は無視され、劣化の激しいメデイアを多用するようになった。
2013-06-21 10:14:516) 例えば、ジャスパー・ジョーンズなどは「自分おの作品は50年もてばいい」と豪語した。作家自ら「永遠性」と手を切ったのだ。考えてみれば、20世紀の記念碑的な美術作品は保存性に優れていない。パフォーマンス、ジャンクアート、インスタレーション、コミュニケーションアートなどだ。
2013-06-21 10:20:507) では、それらの作品群は保存しなくていいのか? 近年「もの派展」に再制作作品が展示されるケースがある。これは当時の作品がもはや存在していないからだが、では、当時の作品と再制作で、同じ作品と言えるのか。一方、オリジナルでも、当時とは似て非なるボロボロになった作品で良いのか?
2013-06-21 10:31:518) こう考えてくると、保存や修復は結局、後世の、作品を享受する側の問題で、どのように扱うかはその時代の価値感や人気に左右されるということか。作家はここに口を挟むことは物理的に不可能となる。はたして、アーティストは後世に委ねるだけて良いものなのだろうか?
2013-06-22 10:41:419) 近現代の立体修復の第一人者であり、東北芸術工科大学の教授、藤原徹先生は「現代の修復は、作家が現存する場合、その作家の意図などできるだけ取材して行うことが望ましい。作家の意図しない修復は不幸」と話す。とても、真摯な態度。ここで、作家側の明確なビジョンが求められているのだ。
2013-06-22 10:55:5710) どのように残すか。真剣に考える現代作家もいる。ソル・ルウィットは、コンセプトと作り方が作品。それを具現化するのは常に第三者。だから、作品が壊れても、オリジナルは傷つかない。また、河原温さんのデート・ペインテイング。たとえ、傷ついても、彼は決して直接、修復はしない。
2013-06-24 18:31:5611) 彼は、自分の絵を修復する人を決めていて、修復依頼があれば、いつも紹介している。それは、自分の「ある日に作業した痕跡」は、その日限りであって、決して後日、追加作業をしてはならない。そんなことをすれば、コンセプトが崩れるからだ。さすが、コンセプチュアル系の作家は考えている。
2013-06-24 18:36:01