ヤキ1カ電と栗田艦隊

大東亜戦争史上屈指のエピソードのひとつ、「謎の反転」問題について。
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四式戦闘機 @ki84type4

例の栗田艦隊の本、もうすぐ読み終わるのだが興味深いというか、納得のいく話が載っていたので紹介する。

2013-06-26 19:12:27
四式戦闘機 @ki84type4

栗田艦隊の反転について決定的要因となった「ヤキ1カに敵機動部隊」との誤報だが、これについては巷間色々言われてきた。小島清文なる予備士官(この人物は戦後不戦兵士を名乗って手広く講演していた札付きらしい)が「栗田司令部の命惜しさの捏造」等と言いだし、一時期広く流布されたこともあった。

2013-06-26 19:14:52
四式戦闘機 @ki84type4

この小島証言は、当時重巡熊野で通信士官を務めていた左近允大尉(後海将)によってほぼ完璧に論破されており、間違い無く嘘だと考えられる。この小島なる人物の証言は他にも様々な点で間違いがあり、到底信用するに足らない。

2013-06-26 19:21:56
四式戦闘機 @ki84type4

この小島証言の尻馬に乗ったのか、「ヤキ1カ」電捏造疑惑をしつこく主張しているのが例の半藤一利で、私はこの人物が呉の博物館の館長に収まっていることが不満でならない。まあそれはともかく、「ヤキ1カ」電についてこの本には様々な情報が載せられていた。

2013-06-26 19:24:07
四式戦闘機 @ki84type4

知らない人が多いが、「ヤキ1カ」電の発信者は不明で受信記録も残されていないのだが、そうした報告があったであろう状況証拠は栗田艦隊司令部関係以外にも存在する。当時呉にいた第六艦隊がそれで、司令部から前線の潜水艦にあてて、「ヤキ1カ」に存在する敵機動部隊についての通報が為されている。

2013-06-26 19:27:39
四式戦闘機 @ki84type4

また、東京の軍令部第一部の作戦室で、当該の敵機動部隊についての情報がプロットされている。つまり軍令部が「ヤキ1カ」に機動部隊がいるとの情報を把握していたのであって、この情報が栗田司令部の捏造であることはあり得ない。

2013-06-26 19:29:33
四式戦闘機 @ki84type4

で、「ヤキ1カ」電の出所なのだが、この本では恐らく南西方面艦隊(三川長官)だろうとしている。栗田提督も戦後そうだろうと言っているのだが、では何で記録が残っていないのか不思議だったのだが、この本をよんでなるほどと思った。

2013-06-26 19:31:05
四式戦闘機 @ki84type4

南西方面艦隊司令部はレイテ沖海戦の三日後、解体されていたのだ。長官も参謀長も、通信担当の参謀も解任されてフィリピンを去った。司令部も移動した。

2013-06-26 19:32:49
四式戦闘機 @ki84type4

しかも、当時三川長官は南西方面艦隊の長官だけでなく、第三南遣艦隊、第十三航空艦隊の長官まで兼ねていた。参謀達も全部兼任だった。三つの艦隊司令部が一度に解体され、要員が行ったり来たりした訳だ。

2013-06-26 19:34:15
四式戦闘機 @ki84type4

そりゃ電文記録を完璧に残すのなんて難しかろう。更に、通信担当の参謀は「ヤキ1カ」問題が明らかになるずっと以前、終戦直後に病没していて証言が残っていない。全ては闇の中になってしまったのだ。

2013-06-26 19:36:07
四式戦闘機 @ki84type4

以下個人的な余談になるが、随分前にWikipediaでレイテ沖海戦の箇所に手を入れようとした際、えらいしつこく粘着されて難儀したことがある。相手は栗田提督を徹底して貶めたいらしかった。

2013-06-26 19:38:38
四式戦闘機 @ki84type4

こちらは宇垣提督の「戦藻録」から色々引用して正当性を主張したが、誤読だなんだ言われしまいにはソックパペット疑惑まで掛けられ、うんざりして途中でやめた。

2013-06-26 19:39:59
四式戦闘機 @ki84type4

で、その時の私の主張がどうやら誤読ではなかったらしいことがこの栗田艦隊本で理解できたので、それも有り難かった。宇垣提督が反転下令の際、怒りながら「おい参謀長、レイテはあっちだぞ」と怒鳴ったという話は有名だが、その続きが載っていた。

2013-06-26 19:42:11
四式戦闘機 @ki84type4

宇垣に対し、栗田提督は「いや、貴官の進言通り北東の機動部隊に向かう」と言ったのだそうだ。私が「戦藻録」から読み取ったとおり、元々宇垣提督は北東の機動部隊を攻撃したかったのだ。これがはっきりしただけ、本を買った甲斐があった。

2013-06-26 19:44:26
四式戦闘機 @ki84type4

この本自体は元海兵生徒(任官する前に戦争が終わった)とはいえ専門の研究者ではない方によって書かれたもので、晩年の栗田提督と親しかったせいか栗田提督への傾倒振りが客観性を損なっている点も多く、書き味も素人っぽいところも多いのだが、それらに目をつぶるだけの価値のある本だと思う。

2013-06-26 19:46:59
四式戦闘機 @ki84type4

栗田提督をはじめ、実際にあの戦争に臨んだ人々の直接証言が多く収録されているのも大きい。栗田提督は「沈黙の提督」などと称されるが、案外色々な事を話しているのも意外だった。意地悪な言い方をすると、伊藤正徳や半藤一利のような連中は栗田提督から証言を引き出せなかっただけなのではないか。

2013-06-26 19:49:24
四式戦闘機 @ki84type4

伊藤正徳はともかく(彼は栗田提督とは少年時代の友人だったらしい)、半藤なんてやいのやいの言い出したのは栗田も小沢も死んだ後だもの。

2013-06-26 19:50:27
四式戦闘機 @ki84type4

ついでに載ってた酷い話。先に挙げた小島清文なる人物、自著の中にこう書いているそうな。「栗田中将自身、逝去される直前に親しい新聞記者に長年の沈黙を破って、そんな電報はなかった、とその真相を語った」と。これは真っ赤な嘘だそうな。

2013-06-26 19:56:18
四式戦闘機 @ki84type4

あと、この本の作者は福留繁のことが大嫌いらしく、あちこちでけちょんけちょんにけなしている。まあ福留だから仕方が無いのだが(ぁ

2013-06-26 19:57:40
四式戦闘機 @ki84type4

せっかくなので、レイテ沖海戦についての今のところの私見などを。率直に言って、栗田提督は運の悪い人だと考えている。佐藤大輔が何故あそこまで罵倒するのか、今も昔も本当に理解出来ない。

2013-06-26 20:45:48
四式戦闘機 @ki84type4

奥宮正武だったか、栗田提督のことを「中央の尻拭いばかりさせられた不運な人」と書いていたが、その通りだと思う。彼は常に中央の失敗の尻拭いをさせられ続けた。私が知っている限りでも、旧海軍軍人で中央に近い人ほど彼を批判し、現場に近い人ほど彼に同情的に思える。

2013-06-26 20:47:40
四式戦闘機 @ki84type4

「栗田は作戦の意図を理解していなかった」「船団攻撃が目的なのに、戦略を理解しない栗田は敵との決戦ばかり志向した」との批判がある。これは、作戦前に小柳参謀長と神GF参謀との間で行われた打ち合わせを引用すれば否定できる。

2013-06-26 20:49:57
四式戦闘機 @ki84type4

小柳参謀長はくどいくらいに念を押した。「輸送船団攻撃は理解した。しかし敵主力艦隊と遭遇した場合はこれを叩く。船団を叩いても艦隊が残っていればすぐに再起することは明白だからである。それでよいか」。

2013-06-26 20:51:28
四式戦闘機 @ki84type4

確かに、栗田司令部の意思はGF司令部の意思と乖離していたのかもしれない。それはこの小柳参謀長の態度でも明らかだ。GFとしては、断固とした意思を持ち作戦を完遂する気があるのなら、この時点で栗田司令部ごと馘首するべきだった。

2013-06-26 20:53:44