【twitter小説】ナィレンの暴走列車#1【ファンタジー】

遺跡都市ナィレンの古代列車システムが復活した。列車は街を破壊しながらレールの上を暴走! 赤錆の騎士ミェルヒと冒険画家エンジェが列車に挑む。 @decay_world はツイッター小説アカウントです。この話は#4まで続きます
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減衰世界 @decay_world

 かつて科学文明を築いた古エシエドール帝国の首都ナィレンは今日も静かな朝を迎えた。古代の都は今やそのほとんどの区域が放棄され建築物の残骸を晒している。栄光の都市の跡を眺めながら、薄汚れたバラックの群れは朝日を浴びる。 1

2013-07-19 18:10:02
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 巨大な特殊材質の四角い建築物群は暴走状態にあり、街のひとが住むことは無い。ナィレンの街のひとは、巨大建築物群を円環状に取り囲むボロ屋に身を寄せ生活していた。いつもと変わらない朝、のはずだった。 2

2013-07-19 18:16:17
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 高い警笛が朝のナィレンに響き渡り、鳥の群れが飛び去った。街のひとは巨大建築物群を見上げる。すると、いまだ健在している高架の上を、列車が動き出したのが見えたのだった。それを見た街のひとは青い顔で庁舎へと駆けだした。 3

2013-07-19 18:19:56
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――ナィレンの暴走列車#1

2013-07-19 18:25:29
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 ナィレン庁舎は幾分豪華な建物だったが、その建物が揺れ動かんばかりの喧騒に包まれていた。旧ナィレンの鉄道システムが今朝突然復活したのだ。もちろん暴走状態になっている旧都市部でいくら列車が動いていようが構わないのだが……。 5

2013-07-19 18:29:45
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 問題は、古代のレールは都市外部まで伸びており、いまはその上に街が出来ているのだ。バラックの粗末な街ではあるが、たくさんのひとが住んでいる。しかもレール跡は破壊が不可能であったためそのままなのだ。 6

2013-07-19 18:33:07
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 このままでは全自動で動いている列車がダイヤ通りにやってきてしまう。……レールの上の街を蹴散らしながら! 幸い都市外部への列車は本数が少なく、時間に余裕がある。というのは、かつて何回か列車が復活したことがあるのだ。 7

2013-07-19 18:35:48
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 100年前列車が復活した際は、チームを編成してナィレン旧都市部へ赴き、システムを停止して事なきを得た。だが、システムの破壊までは不可能だったのだ。今回、それが何らかの理由で復活したことになる。 8

2013-07-19 18:40:28
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 ナィレン政府はギルドに救援要請を送ることになった。すなわち遺物破壊を取り扱うグランガダル廃棄物処理社である。このギルドはナィレンの暴走都市部も管轄していたため、市内にはいくつかギルドの詰所がある。早速市長の命令で招集がかけられた。 9

2013-07-19 18:44:31
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 さらにギルドは街に常駐する冒険者を人足として臨時雇用する。冒険者はダンジョンや遺跡探索を専門にする特殊職業だ。彼らは戦闘の経験と遺跡の扱いに長けている。赤錆の鎧を着る冒険者ミェルヒと冒険画家のエンジェもそんな形で今回雇われたのだった。 10

2013-07-19 18:48:15
減衰世界 @decay_world

 いまミェルヒとエンジェは外周の街に来ていた。ここは木の板で作られた粗末な建物ばかりが目につく。ミェルヒは足で道に積もった砂を払う。すると確かにそこには金属のようなレールが見えた。 11

2013-07-19 18:51:44
減衰世界 @decay_world

「これ脱線とかしないのかなぁ。こんなに土積もってるし」 「遺産列車はレールの上を浮遊するものだと言われています」  冷静に返事を返すのは、グランガダルギルドの派遣員であるミガサスだ。ミガサスは水色のゴーグルを額にかけ、赤と青の基調のギルド制服を着ている。 12

2013-07-19 18:54:55
減衰世界 @decay_world

 グランガダルギルドの制服は少し変わっている。たくさんのパイプが露出した作業服で、背中に大きなバックパックを背負っている。バックパックには長い筒状の物……火炎放射器が取り付けられていた。彼女の髪は燃えるような赤である。 13

2013-07-19 18:57:48
減衰世界 @decay_world

「で、どうするの? 走って列車を追いかけるの?」 「そのような無意味な行為は推奨されません」  エンジェの問いもまた冷たく返す。ミガサスは小さな公園へと歩いていく。その公園には変わった構築物があった。 14

2013-07-19 19:00:40
減衰世界 @decay_world

 それは台形の小さな細長い隆起した場所で、何か特殊な材質で出来ていた。この構築物を破壊することが出来なかったため、公園になったという。ミェルヒとエンジェはミガサスについていく。 15

2013-07-19 19:36:28
減衰世界 @decay_world

「私の背中にはジェットパックがあり、緊急時に加速飛行することが可能ですが私一人しか飛べませんし高速で動く列車に接近するのも危険です。そこで、これです」  ミガサスはその土台のような場所に手を触れる。 16

2013-07-19 19:47:29
減衰世界 @decay_world

「これは古代の駅の跡なのです。いわば列車が停車するホームですね。暴走した列車はこのホームで停車し、ドアを開きます。そこに我々が乗り込んで、列車を無力化します」  ミガサスは地図を数枚取り出すと、ミェルヒ達に手渡した。 17

2013-07-19 19:50:46
減衰世界 @decay_world

 地図を見てみると、そこには曲がりくねったレールの場所が記されており、駅の場所もすべて書いてあった。この地区は全部で5つの駅があるようだ。最後の駅を通過すると……レールの先はナィレンの繁華街へと伸びていた。 18

2013-07-19 19:54:43
減衰世界 @decay_world

「幸い駅のある場所は比較的閑散とした地域です。最初の駅で乗り込めば、繁華街へ突入する前に列車を無力化出来るでしょう。もっともこれは最終防衛ラインですが」  ミガサスは旧都市部の方を見上げる。そこには列車が通る高架がたくさんある。 19

2013-07-19 20:05:00
減衰世界 @decay_world

「今向こうで我がギルドの精鋭が列車無力化作戦を行っております。彼らが失敗したときのために、我々はここにいます」  そう言ってミガサスは地図の最初の駅を指差した。どうやらこの駅の跡が最初の駅らしい。 20

2013-07-19 20:13:00
減衰世界 @decay_world

「なんだ、楽な仕事なのね」 「いざというとき、もっとも責任がある仕事ですよ」  ミガサスは無線で配置についたことを本部に伝えた。グランガダルギルドほどの大きな組織ならば、個人用の無線も配備されている。 21

2013-07-19 20:19:11
減衰世界 @decay_world

 グオオーンと爆発音が響き、続けて3回の爆発音が続いた。ミガサス達は旧都市部の方を見上げる。するとそこから黒煙が立ち上り、鳥のような生き物が飛び立っていくのが見えた。作戦が始まったのだ。 22

2013-07-19 20:23:51
減衰世界 @decay_world

 そのとき、駅のホームからアンテナのようなものが持ち上がり、チャイムのような音を発した。ホームが怪しく発光する! 「これは……列車が来るということですか?」  直後、ミガサスの緊急無線が鳴る。 23

2013-07-19 20:27:22