「手口」発言は性急な改憲論者への皮肉？ ― The Japan Timesの論説についての疑問

直立演人 @royterek

ついに恐るべき論説が…。なんと、麻生の「手口」発言が、改憲を急ぐ安倍内閣を揶揄した皮肉だと解釈。"Aso’s Nazi-inspired quip rubs Seoul the wrong way" (The Japan Times) http://t.co/mz1ZW9RXxO

直立演人 @royterek

「安倍内閣を揶揄」と書いてしまったが、正確には「改憲に性急な政治家たち」といったぐらいの意味。だとすれば、当然、安倍がその筆頭に挙げられるわけで、安倍を首班として、その場に居合わせた政治家のほぼ全員に対する揶揄や皮肉ということになる。https://t.co/bzqMojX3N9

直立演人 @royterek

麻生はかつて「参院選が終わるまでは、外交・防衛・憲法に一切触るな。経済一本でいけ」とアドバイスしたと言われる。それ故、「改憲、改憲と騒ぐな」と改憲に前のめりな自民政治家に釘を刺したいう解釈にはそれなりの信憑性はある。しかしだからと言って、「手口」発言を単なる皮肉ととれるだろうか。

直立演人 @royterek

仮に、麻生の「真意」が、安倍を筆頭とする改憲に前のめりな自民政治家に「改憲、改憲と騒ぐな」と言いたかったのだとしたJapan Timesの解釈を採用したとしても、「手口」発言をそうした政治家への皮肉ととるのはやはり無理があるように思われる。皮肉というよりも自虐に近いのではないか。

直立演人 @royterek

いや、自虐というのも少し違う。なんというか、どきつい発想で聴衆を笑わせつつも、そこには一抹の真理があるのだ、ということを伝えたかったのではないか。いずれにしても、その直後で、「みんな納得して、あの憲法変わっているからね」と言ってるからには、ナチの手法を否定しているとはとりにくい。

直立演人 @royterek

「改憲、改憲とわーわー騒がない」方が、改憲を実現するには近道だよ。だから安倍内閣は、改憲について事を荒立てずに、なるべく「経済一本」で行き、その暁に高支持率をキープしさえすれば、大した反対運動も起こることなく、改憲も「静かに」実現できるよ。麻生の真意は概ねこんなところではないか。

直立演人 @royterek

ちなみに、Japan Timesの記事については、フェイスブックのある書き込みで知ったのだが、その書き込みをした人物は、この記事を敷衍しつつ、以下のように解釈していた。

直立演人 @royterek

「１．安倍政権は経済に集中しろ。 　　安倍と側近には話が通じなくてこまる。」

直立演人 @royterek

「２．安倍総理は八月十五日の終戦記念日に靖国に参拝するな。どうしてもしたいなら、普通の日にひとりで静かに参拝しろ。」

直立演人 @royterek

「３．大騒ぎして改憲を急ぐな。国民の合意が先だ。９６条の改正なんて、ナチスの手口をまねするつもりか。民主的に選挙で大勝したからといって、ナチスみたいなまねはするな。」

直立演人 @royterek

この三つの解釈のうち、１と２については、たしかにそんなところだろうと思う。１については過去に同じような発言をしているし（ただし、「参院選が終わるまでは」という限定はあったが）、２についても、「８月１５日だけに限っていくから、また話が込み入る」とまで言っているのだから。

直立演人 @royterek

しかし、３については、かなり無理があると思う。そもそも、麻生が「９６条の改正なんてもってのほか」といった類の発言をしたことなど一度も聞いたことがない。いずれにしても、ナチスをまねるなどもってのほかというのは、あまりにもポジティヴに解釈し過ぎだろう。

直立演人 @royterek

さらにこの人は、「手口」発言で、聴衆からどっと笑いが起きたのは、麻生の「真意」（すなわち、ナチに真似するなんてもってのほかというメッセージ）を即座に理解して、その「皮肉」をおもしろがって笑ったと解釈しているが、居合わせたメンツをみると、これもおよそありそうにない。

直立演人 @royterek

この人の解釈は、麻生もその場に居合わせたどの政治家も、世論の自発的形成という民主主義の原則を重んじ、ナチのような翼賛的体制ができることはなんとしても食い止めなければならないと考えている民主主義のよき守り手だといった肯定的なイメージを前提としているが、そんなこと誰が信じるだろうか。

直立演人 @royterek

重要なことなのでもう一度繰り返すが、麻生が撤回したのは、ナチを例示として使った事実のみであって、発言の内容それ自体は否定していない。改憲の議論は、「わーわー騒がず」「静かに」やって、「ある日気づいたら」「だれも気づかないで」変わるぐらいが一番理想的だという趣旨は揺るがないだろう。

直立演人 @royterek

民主主義を推し進めればナチズムが生まれる。だからそうならないためにも、自民党はナチスの手法に学んで、事を荒立てずにやるべきことを淡々とやる。そうすればナチズムの台頭を未然に防ぐと共に、自民流のすごい民主主義が改憲を通してこの国に定着するだろう。麻生発言を要約すればこんなところか。

直立演人 @royterek

麻生発言がユニークなのは（そしてそのユニークさ故に真っ向から対立する解釈を生んでいるわけだが）、ナチスの「手口」を、「わーわー騒ぎ」つつも「だれも気づかないで」やるという風に、正反対の特徴が総合された手法として理解している点だ。ホロコーストの犯罪はまさにそうやって起こされたのだ。

直立演人 @royterek

共産党の志位委員長は、麻生の「手口」発言を非難した上で、「「誰も気づかないで」すすんだどころか、無法な暴力と弾圧の嵐のなかで強行された」と歴史認識の誤りを指摘した。この指摘は歴史的にはもちろん正しいが、ナチに親和的な人々の社会心理については、麻生の矛盾した理解の方がリアルである。

直立演人 @royterek

あのようなメガトン級の失言をしでかした麻生は間違いなく底なしの阿呆であるが、理性よりも不合理性に依拠することの方が少なくないご都合主義的社会心理や、衆愚政治に陥りやすい民主主義の逆説性に対する洞察は、なかなか大したものだと思う。いずれにせよ、職業の選択を間違えたことは間違いない。