第二大罪大戦《第四の狭間》【戦闘フェイズ1】

紅(ルージュ)は嫉妬、アンヴィ・ナルシス(@HeNotShe_Envie) 黒(ノワール)は傲慢、ベルカイン(@fusui_kouryu) 狭間に出で遭い、交叉する。
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紅の嫉妬アンヴィ・ナルシス @HeNotShe_Envie

全部、全部、嘘じゃないか。嘘吐き、嘘吐き、嘘吐き嘘吐き嘘吐き嘘吐き! 解き放たれる『不信』。やさしく残酷な夢に煽られた、もはや止めどない『不信』。 「どうして僕を愛したの? そんな嘘を吐いたの? どうして僕を褒めたの? どうして僕に触れたの? どうして、どうして、どうして……!」

2013-08-09 15:22:02
紅の嫉妬アンヴィ・ナルシス @HeNotShe_Envie

夢の中に『答えるものはない』。だから『答えを待つ必要がない』。僕は『問いかけ続ける』。 この問いに囚われるものすべてから、何もかもが失われてしまえばいい。信じたものに裏切られる苦しみを知ればいい。信じたものを失う痛みを知ればいい。虚無と孤独に飲まれて、何もかもなくなってしまえ!!

2013-08-09 15:22:18
黒の傲慢:ベルカイン @fusui_kouryu

触手を伸ばした状態で、はて、と動きが止まる。 自分は何をしていたのか、  といたのか、全くもってわからない。 あるのは孤独。けれど確かに聞こえる、寂寥と悲痛に塗れた『問いかけ』。 楽しくて、一人じゃないことが嬉しくて、高らかに笑う。 暗緑の瞳に輝くは、狂気ではなく知性と理性。→

2013-08-09 19:07:25
黒の傲慢:ベルカイン @fusui_kouryu

「キミ、が優しい人だから、ネ」 何を喰って出てきたか、その記憶が綺麗に消えた。 「ボク、嘘はキライヨ」 【黒の強欲】に与えたモノを忘れた。 「多分、佳いものだと思ったからネ」 片足が消えた。 「温もりが愛しいからなの、ヨ」 もう片足が消え去り、胴と頭になってもなお笑いは止まず。→

2013-08-09 19:10:07
黒の傲慢:ベルカイン @fusui_kouryu

そして見えた、叫び続ける【紅】。 こんな程度で狂うのか。 世界を信じたいから壊れたか。 体の殆どを失っても自分はまだ、死ねないのに。 かぎ爪の一つ目を首元へ。 かぎ爪の二つ目を両腕へ。 かぎ爪の三つ目を腹部へ。 引っかけ絡めつけるよう最大力で引き戻す。 残る二本で凍土を抉り。→

2013-08-09 19:12:32
黒の傲慢:ベルカイン @fusui_kouryu

「逆に希望、を持ちすぎてたの、ネ」 憐憫の声音で囁きながら、耳まで裂けた、人の頭をも一気に食める口を広げる。 口腔内に輝くは、無数の犬歯。 「じゃなきゃ、『信じない』、なんて、出来ないヨ」 しかと見える胴体――胸元を貪るため、跳んだ。 子供の大きさだから出来る、体当たり。

2013-08-09 19:33:21
紅の嫉妬アンヴィ・ナルシス @HeNotShe_Envie

僕が狂ったのは、壊れたのは、もう遠い昔のこと。 それは、今、では、ない。 もし、本当に今、もう一度狂うことができたなら、僕はまた違った様相を見せていただろう。 彼が僕にとって、彼の罪科である『愛』足り得たなら。 ――ナルシス―― 聞こえるはずのない声に、はっと顔を上げる。

2013-08-09 20:41:31
紅の嫉妬アンヴィ・ナルシス @HeNotShe_Envie

湖底の風景に浮かび上がる、菫色の髪、緑色の瞳。穏やかに優しい表情を浮かべ、僕に手を差し伸べる、その姿は――。 「信じない」 見るや、これは違う、と断じた。ここに彼女がいるはずがないことは、惑わされた僕の心でなく、大罪たる僕の魂が識っている。こんな幻影を、信じられるわけがなかった。

2013-08-09 20:41:39
紅の嫉妬アンヴィ・ナルシス @HeNotShe_Envie

無感動に、ただ冷静に、全身全霊を込めた拳を、真っ直ぐに叩きこむ。容赦なく幻の顔面へ。現実と重ね合わせるなら、それは黒の傲慢の顔に向かって。力は所詮人間並みだけれど、飛来する頭部と衝突すれば、いかほどの衝撃となるか。 同時に、問いかける。『不信』を込めて。 「ふざけてるの?」

2013-08-09 20:41:45
紅の嫉妬アンヴィ・ナルシス @HeNotShe_Envie

「何のつもり? 何がしたいの? きみは彼女の何なの? 僕に何が言いたいの? 僕に何を望むの? こんなものを僕に見せて、きみは僕がどうなると思ったの? 信じると思った? 縋ると思った? 受け容れると思った? 満たされると思った? 本当に? きみは本当に、それが嘘じゃないと思うの?」

2013-08-09 20:41:53
紅の嫉妬アンヴィ・ナルシス @HeNotShe_Envie

「ねえ、『愛』って何? そんなものが、この世界に存在していると思う? きみは、きみを愛してくれるものが、この世界に存在すると思う? きみに愛せるものが、この世界に存在すると思う? あるとしたら、それは何? 『不信』の僕にも理解るように教えて? きみの罪科なんだ、かんたんだろう?」

2013-08-09 20:42:12
黒の傲慢:ベルカイン @fusui_kouryu

毒も効かなかった。上手く攻撃もかわされた。 それは、言葉を巧みに操るこの【紅】の【罪科】が強かっただけのこと。【罪科】の混乱を使っても己の魂を信じられる輝き、それが見えた瞬間、鼻っ面にぶち当たる――やわらかい拳。 なんだ、やっぱり世界は愛で満ちているんじゃないか。→

2013-08-09 23:25:57
黒の傲慢:ベルカイン @fusui_kouryu

数本巻き付いたかぎ爪は、少しでも【敵】の傷になったろうか。そうなればいい。そうでなくては【黒】の皆が困る。 鼻から出たタール状の液体が目に入り、視界すら見えない。そんな暗闇の中、それでも『己』を見て、問いかける声音は優しい。詰問だとしても。『自分』を無視していないのだから。

2013-08-09 23:29:12
黒の傲慢:ベルカイン @fusui_kouryu

――ミンナ、無事ならいいネ。 「愛を一度知っているから、キミは『信じられない』ンデショ?」 ――もっかい、ギーアとお話ししたかったナ。 「それが辛いものでも佳いものでも、愛はそこらに、ずっと、ずぅっと続いて存在してる、のヨ」 ――イチジクのタルト、もっと食べたかったヨ。→

2013-08-09 23:33:31
黒の傲慢:ベルカイン @fusui_kouryu

――トレークに怒られちゃうネ。 「愛は、希望と同じ。見えないから戸惑って悩んで、それでも手にしようとするモノ、なのヨ」 ――感触、あまりよく、わからないネ。上手く、引っかかったカナ。 「そして希望は絶望にもなるのネ。だから、怖くなっちゃうのヨ」 少しずつ、体が軽くなるのはなぜ?→

2013-08-09 23:38:25
黒の傲慢:ベルカイン @fusui_kouryu

――こんなに清々しい開放感、初めてだ。 「でも、世界がある限り、愛は誰の元にも届くのネ。辛さと優しさと希望と絶望、そんなモノに変わって」 ――光が見える。暗闇の中、信じ続ける愛が迎えに来る。 「だから、負けちゃダメなのヨ。佳いモノに変える努力、しなきゃネ」 ――光が大きくなる。→

2013-08-09 23:43:07
黒の傲慢:ベルカイン @fusui_kouryu

「目をつむって逃げてたら、そのまま終わり。もしかしたら」 ――上手く笑えているか、もう、わからないけれど。 「キミに、向けて誰か、が、辛い愛や、佳い愛を注いでくれてるかも、しれないヨ?」 ――そんなのも、もしかしたらボクの幻想かも、ネ。 呟きは聞こえただろうか。→

2013-08-09 23:46:35
黒の傲慢:ベルカイン @fusui_kouryu

また生まれ変わって、誰かと会えたら。 こんな戦いとかがなくて、自分も普通の姿だったら。 ――もっとちゃんとした形の『愛』を、皆にあげられたかも、しれない、ね―― ……囁きは白い靄に溶け消えた。 そして、タール状に溶けたベルカインの全てが、光の渦となって―― 消滅、した。

2013-08-09 23:50:31
紅の嫉妬アンヴィ・ナルシス @HeNotShe_Envie

誰かを殴ったことなんてなかった。ただ衝動のままに、真っ直ぐ突き出した拳は、幻の彼女と、現実の彼を打ち砕いた。殴り方など知らなかったから、僕の指も折れて砕けたけれど、それで十分だった。まだ幻に囚われたままの僕に痛みはない。

2013-08-10 01:17:02
紅の嫉妬アンヴィ・ナルシス @HeNotShe_Envie

両腕を狙ってきた触手は、左腕と右の脇腹に食い込んで突き刺さった。傷口から黒い血が滲み、衣服が黒く染まる。左腕は力を失う。首を狙ってきたものは、目標が動いたために僅か逸れ、右肩を裂いて力尽きた。右頬と耳から流れる血と混ざって、襟元を染めていく。水仙の香りが現実の狭間に満ちていく。

2013-08-10 01:17:17
紅の嫉妬アンヴィ・ナルシス @HeNotShe_Envie

幻の中に、穏やかな声が届いた。誰の声かはわからない。僕はそれを、忘れたまま聞く。優しく、諭すような調子で、おそらくは僕に語りかけられる言葉。 愛を知っているから? そうだ、知っている。そしてそれは事実として嘘だったのだ。僕は愛を信じられない。世界はどこまでも、嘘偽りに満ちている。

2013-08-10 01:18:02
紅の嫉妬アンヴィ・ナルシス @HeNotShe_Envie

僕は唯一にして真なる『嫉妬』に座す、『不信』のアンヴィ・ナルシス・ルージュ。僕がきみの言葉を信じることは、僕が存在しているかぎり、できないだろう。僕は、誰かの言葉を、想いを、疑い、否定し、踏みにじり、そうして自己を存続させているのだから。僕自身の想いすら、信じてはいられないのに。

2013-08-10 01:18:15
紅の嫉妬アンヴィ・ナルシス @HeNotShe_Envie

声が絶えて、しばらく。僕は口を開く。 「ねえ、きみがこの幻(うそ)を僕に見せたのなら、その上で『不信』に、信じろというのなら……ねえ、その、矛盾には気付いてる?」 慟哭さえ飲み込む優しい湖底で、僕の言葉は音を成さない。ただ、彼のいなくなった狭間に、虚しく漂って、消えていった。

2013-08-10 01:18:46
紅の嫉妬アンヴィ・ナルシス @HeNotShe_Envie

扉が、開く。僕の首に掛かった紅色の宝石が、現実の風景の中で強く、強く、狭間をすっかり満たすまでの光を放った。それが収まったときには、僕は『狭間』から消え失せていた。残された黒の沼地と紅い花は、『狭間』の綻び、西から昇る紅い夕陽に灼かれて■■■■に回収される。

2013-08-10 01:18:56
紅の嫉妬アンヴィ・ナルシス @HeNotShe_Envie

一度目の戦い、そのひとつに、幕が落ちた。

2013-08-10 01:19:04
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