第二大罪大戦《第四の狭間》【戦闘フェイズ1】

紅(ルージュ)は嫉妬、アンヴィ・ナルシス(@HeNotShe_Envie) 黒(ノワール)は傲慢、ベルカイン(@fusui_kouryu) 狭間に出で遭い、交叉する。
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黒の傲慢:ベルカイン @fusui_kouryu

それはよきモノなのか悪しきモノなのか、それとも別の何かなのか。 あらゆる色を内包した光が消えた瞬間、顔面に広がる黒の沼地。そして、所々に咲き誇る満開のリコリス――曼珠沙華。 「ほう、なかなか佳き所ではないか」 そう笑うベルカインの姿が、子供から大人の姿に変容していく。→

2013-08-04 23:51:49
黒の傲慢:ベルカイン @fusui_kouryu

→男女の区別がつかぬ風貌と、巨躯。そこに媚びたいつもの『傲慢』はいない。威厳と狂気が混ざった雰囲気、混沌とした暗緑色の目。うねる触手、輝く銀髪。 近くにあった曼珠沙華を踏み、泥の沼に沈める。 「つまらぬ色を混ぜおって。黒のみこそこの狭間に相応しい」 言い切り、眼前を強く見据えた。

2013-08-05 00:10:35
紅の嫉妬アンヴィ・ナルシス @HeNotShe_Envie

まばらに咲いていた曼珠沙華のひとつが無残に踏みにじられた、その瞬間。息を潜めていた蕾たちが一斉に開いた。それは黒の沼地を染め上げるほどの数で、仄かな光すら帯びて鮮やかに目に映る。 開かれた『扉』は、こちらからはただの光に見えた。僕を通すと、バラバラの光の粒になって崩れ去った。→

2013-08-05 01:15:49
紅の嫉妬アンヴィ・ナルシス @HeNotShe_Envie

降り立った途端、ぬかるみに足が沈みこむ。白い下衣の裾を染める泥の色と、咲き誇る花を見て薄く笑む。 「黒と紅の交わる場所だね、ここは」 顔を上げる。淡い金色の長髪が揺れ、同じ色の瞳が、少し離れた位置に立つ『異形』を見据えた。異形ながら人の形を保ったそれが、おそらくは『黒』だろう。→

2013-08-05 01:15:56
紅の嫉妬アンヴィ・ナルシス @HeNotShe_Envie

見覚えはない。僕の知っている、黒の大罪の誰とも違う。当然、『クァート』もここにはない。 落胆。それが第一に感じたことだった。次いで、くすぶり続ける嫉妬心が膨れ上がるのがわかった。 「ねえ」 呼びかける。 「きみは、僕(ナルシス)を、知ってる?」 問いかける。まだ『不信』は込めず。

2013-08-05 01:16:03
黒の傲慢:ベルカイン @fusui_kouryu

光が射し込んだと思えば、一つの人影が不意に現れる。花を挟み、漆黒の世界に良く映える金髪と白の青年が立っていた。 だが――何故だろうか。それが幻か、夢か、ともかく意識上に入って来ないことに違和感を覚える。 あれはなんなのか、そう思案した刹那、それから漏れだす問いかけの声音。→

2013-08-05 02:46:59
黒の傲慢:ベルカイン @fusui_kouryu

知っているか否か、どう答えるのが得策か……いや、どちらでも構わない。言葉遊びがしたいなら付き合うのもまた、一興。 「卿のことは残念ながら知らぬな」 前・傲慢を食い破り産まれた時から、あの顔には確かに見覚えなどない。 ならば、あれが『紅』ということになるのだろうか。→

2013-08-05 03:02:42
黒の傲慢:ベルカイン @fusui_kouryu

「卿こそ我を知らぬであろう」 左の頭を覆う職種が伸び、沼地の中に強靭な椅子を産み出す。 それに腰かけると、声の主とおぼしき青年に向かい唇を歪めた。 「美しいかどうかも判らぬ。外見の美しさなどに興味はない」 進化をしておらぬモノに見出だす価値すらない。小さく鼻でせせら笑う。

2013-08-05 03:06:17
紅の嫉妬アンヴィ・ナルシス @HeNotShe_Envie

返った答えを受け止めて、信じられないその言葉を心中で転がす。 「そう。ごめんね、意味のない問いかけをして」 それは意味のない問いかけだった。けれどそれを言葉にしてみれば、そのことが信じられなくなる。意味を見出す。信じなくていい事実を拾い上げる。 「傲慢(ホーホムート)だね、きみ」

2013-08-05 04:25:26
紅の嫉妬アンヴィ・ナルシス @HeNotShe_Envie

その態度が、その在り様が、罪の座の気配が、彼が傲慢であると告げている。僕の記憶にある黒の傲慢でないのは、退いたからか簒されたからか。 「僕はきみを知らないし、知っているよ。少し、話をしてもいいかな?」 椅子を作り出し腰を落ちつけたのと対象的、僕は足下の花と同じように不動のまま。

2013-08-05 04:25:28
紅の嫉妬アンヴィ・ナルシス @HeNotShe_Envie

自然、浮かぶのは笑み。どこか昔を懐かしむような。瞳に宿るのは激情の炎。じきにそんな表情も色も、信じられない虚ろなものに変わるけれど。 「僕は、『僕がいない間』の『黒』の話が聞きたい。僕の知っている『黒』は、どれくらい残っているのかな」

2013-08-05 04:25:33
黒の傲慢:ベルカイン @fusui_kouryu

「座るのならば椅子を出してやらんでもないぞ?」 からかうように浮かべた笑みは裂けた口と相俟って、些か不気味に見えるだろうか。 相手の鋭い観察眼に内心満足しながら頷く。 「その通り、よくぞ理解した。我こそは黒の傲慢、ベルカイン。前・黒の傲慢を体を喰らって産まれた存在よ」→

2013-08-05 04:44:54
黒の傲慢:ベルカイン @fusui_kouryu

打ち響く会話は心地よい。刃で遊ぶ危険に似た感覚だ。 「言葉を交わすことに異存はない。互いに知りたい事柄もあろう」 嘘だ。前の傲慢に惹かれるモノなど何もない。餌は所詮、餌だった。 「敵に知人や縁者がいるとは皮肉なものよな……さて青年。卿は『黒の誰のこと』を知りたいのだ?」

2013-08-05 05:03:35
紅の嫉妬アンヴィ・ナルシス @HeNotShe_Envie

椅子を出すかとの言葉には頭を振る。 「敵、なんだろう?」 問いかけるかたちで返し。彼が僕を敵だと思っているのなら、 「それなら、僕がきみの作る椅子に収まれるはずがない。僕はこうして、一人で、立ち尽くしていればいい」 一人で。それなら誰も僕を捨てはしない。僕は等しく、全てを妬める。

2013-08-05 14:40:44
紅の嫉妬アンヴィ・ナルシス @HeNotShe_Envie

「知りたいこと……何だろうね。たくさんありすぎて、いざ何かって言われると困るけど」 言葉を紡ぐほど、それを信じられなくなって、たくさんあった何かは何もなくなっていく。そうして、最後まで残ったそれは。 「トレークハイトは、どの『狭間』へ行ったの? 彼女の側にはいま、誰がいるの?」

2013-08-05 14:40:51
黒の傲慢:ベルカイン @fusui_kouryu

「ふふ、敵、か」 男女の入り雑じった声音は鐘のように震え。 「そうか、敵なのだな」 納得したように頷く。同陣営の誰かが姿を変え己を討ちにくる、そんな下らない考えも予期していたが、どうやら違うようだ。 その時はその時で迎え撃つつもりではあったが――→

2013-08-05 16:35:16
黒の傲慢:ベルカイン @fusui_kouryu

「確かに卿の言う通り、敵…かつ見知らぬ相手からの申し出など警戒するが当然」 佳き座だ。疑心と暗に満ちた、虚ろある佳きモノ。 裡だけで思い、後の問いに目を瞬かせる。 「トレークの縁者か……答えてやらんでもないが、その前に名と座を名乗れ、青年よ」 子供をたしなめる声で尋ねた。

2013-08-05 16:46:23
紅の嫉妬アンヴィ・ナルシス @HeNotShe_Envie

右手を胸元へやって、指先で紅いペンダントに触れる。左手はまだ動かない。 「僕は紅の罪華、その毒、不信の嫉妬、アンヴィ・ナルシス・ルージュ。いまは、そう」 黒から削ぎ落とされた僕は、傲慢に掬われて紅に迎え入れられた。その頃の紅に色はなかったけれど、僕はあえて、ルージュを名乗って。

2013-08-05 17:07:50
紅の嫉妬アンヴィ・ナルシス @HeNotShe_Envie

知っていた。他の誰も知らなかったけれど、僕だけは、七つの大罪が他にもあることを知っていた。そうして、待っていたのだ。『大罪大戦(このとき)』が始まるのを。 「名乗ったけど、これできみは、教えてくれるのかな?」 待っていたのだ。再び見えるそのときを。 にこり、笑みを形作る。

2013-08-05 17:07:51
黒の傲慢:ベルカイン @fusui_kouryu

胸飾りを見つめながら返された言葉に目を細めた。 「……その名、真ととろう」 嘘偽り、少なくともアンヴィと名乗った青年の声音からそれらを感じとることは出来ない。 「興を削ぐことを言うな。例え敵とて交わした誓いを破るほど我は無粋ではない」 暗緑の瞳が、輝く。→

2013-08-05 17:48:32
黒の傲慢:ベルカイン @fusui_kouryu

身を微かに前に出し、どこか愉悦を思わせる声で囁いた。 「トレークハイト、勿論知っておる。我を傲慢に選びし賢者――黒の怠惰よ」 そして、揶揄するように肩を震わせれば、黒の沼地に波紋が浮かぶ。 「黒の色欲……フライシェスラスト、と言ったか。あの角男に随分となつかれておったわ」

2013-08-05 18:01:12
紅の嫉妬アンヴィ・ナルシス @HeNotShe_Envie

目を瞬かせた。答えを信じたからじゃなく、彼の口からそれが聞こえた事実に対して。 「色欲の、角男……?」 思い出される姿。僕は忘れていない。 「『清浄』のシェスは、まだそこにいるの?」 甘く囁かれた声も、触れた肌の温度も。 「へえ、そう。僕がいないのに、まだ」 全部、嘘じゃないか。

2013-08-05 19:31:32
紅の嫉妬アンヴィ・ナルシス @HeNotShe_Envie

「ああ、はは……は」 笑った。笑っていることを信じられないから、うつろに、途切れ途切れに。それから、唐突に大きく声を上げる。 「シェス……フライシェスラスト! きみは今、どこにいるんだい? ああ、会いたい、とても会いたいよ」 『不信』に、歪む。 「僕はきみのことも、愛していたよ」

2013-08-05 19:31:34
紅の嫉妬アンヴィ・ナルシス @HeNotShe_Envie

『不信』に、歪む。言葉に表せば、何もかも信じられなくなる。自分のこころさえも。 ずきずきと痛む頭を両手で押さえる。左手はもう動かせる。袖口から覗く肌には、まだはっきりと黒い痣が残っているけれど。そうして空笑いをしたあとで、いつものように呟く。 「安心した。世界は、今日も嘘吐きだ」

2013-08-05 19:31:39
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