第二大罪大戦《第七の狭間》【戦闘フェイズ1】

紅(ルージュ)は傲慢、オルグイユ(@Ssace_sin) 黒(ノワール)は強欲、ギーア(@ikjkr_sin) 狭間に出で遭い、交叉する。
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『   』 @Ssace_sin

——進んで、進み出でたのは、背の高い書架と書架の谷底。背後で道の役割を終えた扉が空気に溶けて消えていく。 「……この前は、お城? だったよねぇ」 回廊のような、ちょっと入り組んだ場所だった。くる、とまわりを見渡せば、ひとの背の何倍もあるような、そんな本の大群。

2013-08-04 21:42:59
『   』 @Ssace_sin

「目が回りそうだねぇ……」 言いながら、視線を下ろして。 書架と書架の間も広い。時折テーブルと椅子が並べられている。いいところ、集中できそう、なんておもいながら、ゆったりと足を踏み出した。 だれが、いるのだろう。そう考えながら。

2013-08-04 21:43:00
エッシェ @ikjkr_sin

扉の先には、膨大な量の本が並んだ景色が広がっていた。 どこかで見たような気がする。……どこで見たんだっけ。 「ああ、トレークハイトの書庫か」 少し考えてその結論に達するけれど、屋敷のよりもずっと広い。回廊のようになってはいるが、察するにここは図書館か。

2013-08-04 22:08:23
エッシェ @ikjkr_sin

大人の自分よりもずっと高さのある本棚が、広めの間隔を保って整然と並ぶ。 その横を、きょろきょろ目線を漂わせながらゆっくりと歩く。 そして見つけたのは、自分よりもずっと小さな、影。

2013-08-04 22:08:46
『   』 @Ssace_sin

はた、と見渡す視線を一箇所に止める。声が聞こえて、姿が見えて。 随分、穏やかそうな人だなぁと、そんなふうに思いながら、少年はそちらへと身体を向けた。 「こんにちは。はじめましてだね?」 暗さとは無縁の明るい書庫、図書館の中で、何も持たない空の両手を後ろで組み、ことりと首を傾げる。

2013-08-04 22:17:33
エッシェ @ikjkr_sin

視線の先に佇むのは、白髪金目の、幼い少年。 こちらに気付いた少年は、ふわりと白い髪を揺らして話しかけてきた。 「うん、初めましてだね。こんにちは」 少年に向かって微笑んでそう返す。 「で?君は一体、だれなの?」 挨拶から一拍置き、問う。ここに居るということは、僕らの敵、『紅』。

2013-08-04 22:38:18
『   』 @Ssace_sin

返答、まず挨拶の言葉が返って来た事に破顔する。ほう、と息をついて胸元に手を当てる。 「よかった。また急に怒られるかと思ってたんだ」 お話しする隙もなかったから、と眉尻をほんの少しだけ下げる。そうして問いかけには、にこりとその人に向かって笑いかけた。 「名乗るときは、自分から」

2013-08-04 22:51:25
『   』 @Ssace_sin

「……すくなくとも、僕はそういう風に言われたよ」 前に潜った扉の先で。そう付け加える。これでもう、伝わったも同然なのだろうけれど。 「ねえ」 だから返答はせず、問い返す。 「君は誰? 僕のもの?」 笑みのまま、変わらない様子で、二つの問いを同時に投げかけた。

2013-08-04 22:51:26
エッシェ @ikjkr_sin

「怒る?何故?僕は嬉しいよ」 素直にそう感想を述べて、小首を傾げる。 だって君の関心を得られたってことじゃないか。まぁ確かに、トレークハイトにとっては嫌うべき『無駄』なのだろうけど。 僕は無駄な物だって欲しい。――『強欲』だからね。

2013-08-04 23:03:40
エッシェ @ikjkr_sin

「そっか、そうだね」 学がないから知らなかった。ごめんね、と笑いかけてから、彼の問いに返して言う。 「僕は『黒』の『強欲(ギーア)』。」 僕は、君のものじゃない。 対抗心を表す言葉とは裏腹に、その顔に浮かぶのは柔らかな笑み。

2013-08-04 23:03:54
『   』 @Ssace_sin

会えて嬉しい、の意味だろうかと、すこし疑問に思う。だとすれば…… 少年はやはり、笑む。だとしても、何が変わる訳でもない。 「『黒(noir)』の『強欲(Gier)』だね。僕は『紅(rouge)』の『傲慢(Orgueil)』」 よろしくね? そう、すこし気恥ずかし気に身体を揺らす。

2013-08-04 23:17:48
エッシェ @ikjkr_sin

「うん、こちらこそよろしく」 あどけない少年の、かわいらしい挙動を見ながらそう一言返す。 しかし、今。目の前の少年は何と言った?『紅』の『傲慢』? 僕らの怠惰は最初、相手の傲慢と戦ったはず。もし本当なら、これは。 「っふふ、」 ――この扉の選択は、『当たり』だ。

2013-08-04 23:42:14
『   』 @Ssace_sin

少年はほっと息をつく。よかった、このひとは、『いいひと』だ。 思う最中に、微かに聞こえて来る笑い声。少年は疑念を浮かべる。首を傾げて、その様子をみやって、そして。 ——ああ、あのひとも、僕の事を皆に話したのかな。なら。 「ね、ギーア」 まるで古くからの知り合いであるかのように、

2013-08-05 00:08:50
『   』 @Ssace_sin

少年はゆったり、柔らかく、嬉しそうに、その名を呼んだ。 「君は、『強欲』だね」 「僕は、それが君なら、それすらも君として、『罪科(それ)』を許容するよ」

2013-08-05 00:08:51
エッシェ @ikjkr_sin

こっそり笑う僕に向かって、少年は名を呼んだ。 親しみすら感じるその声に、いぶかしげに眉をひそめる。 僕を肯定する言葉。可笑しい。敵のはずなのに、何故僕を肯定するの? 「……ごめんね、僕には学がないから」 言っていることが、よく、わからないよ。 言いながらしょんぼりと、眉を下げる。

2013-08-05 00:29:09
『   』 @Ssace_sin

こと、と少年の首が、今度は反対側に傾く。笑みは、変わらない。 「言葉の、そのままの意味だよ。『ギーア』。ねえ、君は僕に、何か望む事はあるのかな?」 言葉が、連なっていく。呼びかけ、肯定、名を口にし、最後には問いかけと。 「『傲慢(ぼく)』は、君の望みを望んでいるよ」 『発露』を。

2013-08-05 00:56:11
エッシェ @ikjkr_sin

僕の、望み。『黒』の僕が『紅』の彼に向けて望む物。 「居場所を、」 ぽつりと、絞り出すような声で呟く。 独りの世界でひたすら強欲に生きてきた僕には、居場所らしい居場所なんてなかった。初めてだったんだ。 だから、どうか、どうか。 ――僕の“帰る場所(noir)”を奪わないで。

2013-08-05 01:20:09
『   』 @Ssace_sin

歩を、進める。空いていた距離を詰めようと。 「……ね、ギーア。『紅』の僕の言う事を、信じてとは、言えないけれど」 手を伸ばしても届かない位置で立ち止まる。少年には高い位置にある顔を、覗き込むようにして見上げ。 「僕は、『傲慢(Orgueil)』はね、『黒』を壊す気なんて、ないよ」

2013-08-05 01:43:46
エッシェ @ikjkr_sin

僕の目の前で、立ち止まる少年。彼は僕を見上げていて、視線を移せば少年と目があう。 「壊す気が、ない?」 目を見開いて、少年から一歩後ずさる。 でも、待て。『黒』を『壊す気』は無くたって。――『僕』が、『消し去られる』可能性はあるじゃないか。 我に返って少し、身構える。

2013-08-05 02:17:15
『   』 @Ssace_sin

「そう。壊す気なんてない」 後退るのを見やるそのまま、やはり笑みを浮かべたまま。 「黒がどうかは分からないけど、僕は、大罪が生き残る方法は、相手を殺す事だけじゃないって思ってるよ」 『座』はひとつ。これは変わらない。『大罪』はひとつきり。これも、変わらない。

2013-08-05 15:15:23
『   』 @Ssace_sin

「君が『居場所』を求めるのなら、僕はそれに応えるよ。死ぬ事は出来ないけれど。そうしたら応える事が出来ないから」 「ねえ、『強欲(Gier)』」 「君は僕に何を望むのかな。死かな。それとも生かな。紅の壊滅かな。黒の存続かな。ただ君が在れば良いのかな」 「教えて? 『ギーア』」

2013-08-05 15:15:24
エッシェ @ikjkr_sin

見据えた先にいる、自分よりも小さな存在が言い放つ言葉。 ――その選択肢、ならば。 「全部、ちょうだい」 君の死が欲しい君の生を奪いたい。そして『黒』に帰らせて『紅』を否定させて。 「安心してよ。君が死んだら、それは僕の望みに応えたことにはなるからね」 顔には、相変わらずの、笑顔。

2013-08-05 15:39:04
『   』 @Ssace_sin

「——うん、そうだね、ギーア」 笑みのまま。かちゃり、掌の中で小さな大理石の円盤が二つ。音を立てる。 「君は『強欲』だものね」 かつんと一つ、床に落ちて、跳ねて。 「だから僕は、君とは」 獅子の鉤爪が硬いタイルに突き刺さって。 「『仲良く』出来ると思うんだ」 躍りかかる。

2013-08-05 16:21:07
エッシェ @ikjkr_sin

少年が『仲良く出来る』と口にした刹那、駒が変化した獅子が襲いかかってくる。 発現する瞬間に危険と相手の殺気を感じ取って、横に飛び退く。 「……へぇ」 これが、彼の能力か、と。自身に確認するように呟いた。 同時に両袖から数本ずつ取り出した針を投げる。 左は獅子へ、……右は少年へ。

2013-08-05 16:48:04
『   』 @Ssace_sin

視界に走る細いものにたん、と床を蹴る。掠めるようにして書架に突き立った針を一瞥して、そのまま、明るい笑みのまま強欲を見やった。 「これが、君のだね」 確認の声。獅子の脇腹に針が刺さる感触。左手を手招くように振る、獅子が強欲を追って牙を剥いた。

2013-08-05 18:11:02