悪い男に騙される山城【第二章二日目】
お互いに目を合わせたままだったが、視界の端で彼のもう片方の手が私の左手に近寄っていくのが見えた。 添え木が巻かれていなかった中指を握り締められる。 口が半開きのまま閉じてくれない。目を離せない。 皮膚だけ捻られた。 指に斜めに入った裂傷が開く、嫌な感触がした。
2013-10-08 01:45:16叫ぶ。今度は叫ぶ事ができた。他の指が引き攣ったように伸びて、骨に関わる熱い痛みに視界が歪む。心臓が跳ねているのがわかる。 とん、と両肩を押されて包帯だらけのベッドに押し倒される。 彼が両腕を伸ばしたまま覆い被さり、ライトの逆光で真っ黒になった笑顔で私を見下ろす。
2013-10-08 01:51:14半開きのままだった口に遠慮なく彼の舌が入り込み、溢れて溜まっていた唾液を掬い取られていく。背中が限界まで仰け反り、肩と腰を残してシーツから浮く。 筋肉に限界が来て背中が再びマットに沈んでも、口腔を犯されるのが終わらない。足りない酸素に閉じた瞼の中の黒が赤に点滅し始める。
2013-10-08 01:57:31ようやく唇が離れると、いつの間にか衣のほとんどを剥がされている事にぼんやりと気付く。 襟部分が肩の位置まで開かされ、へそに彼の上着の端がこすれてくすぐったい。スカートもめくり上げられて、日向と買いに行った白のショーツが晒されている。 荒い呼吸で上下に動く胸に彼の腕が伸びて。
2013-10-08 02:07:09左手の流血はいまだ止まらずに、シーツに染みを広げていく。 ブラ越しに胸を鷲掴みにされる。顎が跳ねて、視界から彼の姿を見失う。 額の汗に、前髪が張り付く。 脇に痛みが走るのはほんの一瞬で、ホックから壊されてブラジャーを引き剥がされる。顔が一瞬で熱くなって、顔を背けてしまう。
2013-10-08 02:13:20彼の人差し指の先が、胸に触れるか触れないかの距離で這っていく。先端には一定以上の距離より近付かないで、時折一点を強く押し込みながら歪な円を描く。 傷口の痛みのようにじんじんと、切ない衝動が胸の内側で積もっていく。 不意に指が離れる。横に背けて瞑っていた瞳を彼に向けてしまう。
2013-10-08 02:19:14彼の指が、再び私の左手首を掴む。一瞬全身に緊張が走ったが、抵抗は何もしなかった。左肩より先が持ち上げられていく。鼓動がうるさい。 自然と血の液が私の胸に滴って。間髪入れずに、彼がそれを舐め上げる。 自分のものとは思えない声が部屋に響き、視界が白く何度も閃光する。
2013-10-08 02:24:34血が滴る度に、その箇所を舌で舐め上げられる。口先で吸い付かれる。前歯でこそがれていく。乳首に雫が落ちる度に、次の瞬間に訪れる電流のような快楽を待ち侘びる。 左腕に違和感を覚えて、苦労を伴って瞼を開くと、傷の端を摘む彼の指先が妙にはっきりと見えた。 喉を鳴らして唾を飲み込む。
2013-10-08 02:31:46苛烈な痛みが。 鈍重な痺れが。 全て悦楽の波に呑み込まれて私の頭を壊していく。 彼の手がふとももの間に伸びる。昨夜に初めて開き、今夜初めて触られるというのに、既にぐしょぐしょに濡れているのを自覚する。生地を指先でどかされ、外気に触れただけで腰が跳ねてしまう。
2013-10-08 02:39:41彼が手放した左腕を自分の口元に寄せる。 微笑んで見せてから、傷の無い親指の根元に前歯を立てて、噛み付く。 新たにできた傷から滲む赤を、胸に塗り付ける。 彼は満足そうに微笑み返し、顔を寄せて舌を伸ばしてくれる。 舐めながら、私のふとももを左右に開いていく。
2013-10-08 02:45:51