日本政府(文化庁)の解釈では、日本は文化的多様性に富んだ国である。ただし、その意味は、国際標準であるマイノリティ等の人権擁護ではなく、「生活文化やアニメーション,ポップミュージックの支援」といった独自解釈に基づいている。る。http://t.co/rWWzrsE87X
2013-11-07 12:33:20これに対する批判は、神戸大学の藤野和夫「『文化多様性』をめぐるポリティクスとアポリア」(『文化経済学』2007年3月)や、鈴木洸二郎「分権化課程における文化権制定法理の課題」(『文化政策研究』Vol.1 2007)などで指摘されている。
2013-11-07 12:36:31もとより「文化」という言葉の多義性はあるし、例えば「わいせつ」のような法的な概念一つであっても各国で全く違う意味を持つわけだけど、さすがに「①文化遺産,②オペラ,オーケストラその他の舞台芸術等,③メディア芸術の振興」が「文化多様性の保護」になるというのは不可思議というほかない。
2013-11-07 12:38:18日本は文化的表現多様性条約に未加盟だが、文化芸術振興基本法が、こうした濫用的な解釈を補強するのに一役買ってしまったというのは、国際法規範から見た一種の「負の文化政策」(稲木徹「文化政策の国際的評価の視点」『文化政策研究』Vol3., 2009参照)といえるかもしれない。
2013-11-07 12:52:30ところが、今年8月になって、クールジャパン戦略の一環として、主に経済(貿易)政策上の理由から文化多様性条約への積極加盟を促すペーパーが、経済産業省の経済産業研究所から出てきている。 http://t.co/ZSo6n6mBGP
2013-11-07 12:55:31「文化的産品の貿易外交戦略上も有効である」というこのペーパーに対する賛否はさて置き、元々の文化庁の審議会と結論が酷くお粗末だったという他ない。憶測だが、文化庁が文化多様性について国際的にありえない解釈を取ってしまったことが文化多様性条約への加入が遅れている理由の一つなら、尚更だ。
2013-11-07 13:00:40文化庁は文化的多様性を検討するにあたり、世界の国々や国内のマイノリティではなく「世界の中でも独自の文化を持つ日本文化の発信の契機」と位置づけてしまった。これに対する反省はあるのだろうか。あるいは文化庁・文部科学省が国内マイノリティの問題を検討したくなくて敢えてそうしたのか。
2013-11-07 13:09:11日本ユネスコ国内委員会は2010年3月に条約締結への取組を川端文部科学大臣(当時)に要望している http://t.co/L8PPnFCydc が、その後なかなか進んでいないようだ。
2013-11-07 13:16:48文化庁の文化多様性研究部会のメンバーを見てみよう。文化法の研究者も、国際人権法学者は一人もいない。座長がテレビ大阪社長、座長代理は文化財修復の専門家、臨時委員は元文部科学官僚の芸大教授(当時)、(続く)
2013-11-07 13:26:36文化庁無用研究会?“@Arts_Policy: 文化庁の文化多様性研究部会のメンバーを見てみよう。文化法の研究者も、国際人権法学者は一人もいない。座長がテレビ大阪社長、座長代理は文化財修復の専門家、臨時委員は元文部科学官僚の芸大教授(当時)、(続く)”
2013-11-07 13:29:49専門委員は、九大教授は文化多様性条約起草に関わっているものの本人のレポートを見る限り貿易外交の駆け引きが関心事でhttp://t.co/S1n13y1RMH 東大総合文化教授は国際経済法が専門、ユネスコアジア文化センターは産業界が基盤 http://t.co/DKWbc3OWOo
2013-11-07 13:31:16(ちなみにユネスコアジアセンター役員名簿はhttp://t.co/zH9JrckU5C )それぞれの委員の専門的見識自体への信頼はおくとしても、こうした部会委員の人選を見れば、そりゃ独自解釈になるだろう、と思う。
2013-11-07 13:34:23しかし8月の経済産業研究所の前掲レポートを受けて、仮に「経済・貿易外交政策上の見地からも文化多様性条約への加盟を積極的にすべし」と経産省からも言われたら、文化庁はどうするのかな。あるいは、文化多様性条約へ加盟するとして、文化多様性の定義をどうするんだろうか。
2013-11-07 13:45:09関連参照文献として2つ置いておきます。1.持続可能な社会を支える文化多様性 ―国際的動向を中心に 寺倉憲一 http://t.co/Gs8BVH05IE 2.日本における文化的多様性 その過去・現在・未来 Harumi BEFU http://t.co/HRbwtrHJKc
2013-11-07 13:48:47↓の寺倉論文にもあるように、むしろ国レベルではなく都市政策のレベルで文化多様性ないし多文化主義は先行していて、UNESCOの創造都市(クリエイティブシティ)や多文化都市(インターカルチュラルシティ、参照:http://t.co/gdiK23j3rA )においても重要視されている。
2013-11-07 13:53:43例えば名古屋市が(UNESCO創造都市ネットワークに入るのを目標に含んで)文化振興計画を改定する際に、多様性条約の条文を引っ張ってきていたりする。http://t.co/8VXTxRj6Oo
2013-11-07 14:04:21文化多様性は、世界の中での一国の文化というだけではなく、また一国内での多様な地域文化という意味だけでもないのだが、日本国内で具体的な文化政策に落とし込まれる時にそこまでで留まってしまいがち。それは結局、「個人にとっての文化」の重要性、すなわち「人権」が意識されていないからだろう。
2013-11-07 14:07:58先住民や在住外国人の人権-アイデンティティに関わる文化権をベースにした議論が関心を得られないのと、全ての人の文化的(あるいは広く芸術的)な表現行為、表現の享受、表現への参加、表現の伝播の支援といった行為が人格と結びついて非常に重要な人権であるという議論の退潮は同根かもしれない。
2013-11-07 14:11:09まあ、月末の文化政策学会での報告ではここまで踏み込んだ断言はできないと思いますが、研究の傍らで出てきた資料を見ていて思ったことをつぶやきました。いずれまとめて論文書きます。
2013-11-07 14:12:41(学生向け補足>自治体においては文化行政の中の多文化主義だけみてもだめで、「多文化共生」についての取組みを同時に見てください。多文化共生は各地で蓄積されてきているし、文化行政と多文化共生をうまく重ねている自治体もあると思います。ただ、縦割りで別物になっているところも少なくない)
2013-11-07 14:22:17(追加補足)インターカルチュラル・シティについては、国際交流基金の報告書『インターカルチュラル・シティと多文化共生』http://t.co/34eqASBBjo 嶋根智章「インターカルチュラリティについてー分析と国際文化交流への応用ー」『文化政策研究』Vol.5, 2011 参照
2013-11-07 14:31:08