野川忍・明大大学院教授(@theophil21)の語る「なぜ労働者は保護されるのか」

※参考:「野川忍先生のついーと労働法講義シリーズ」http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2010/10/post-38ce.html
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theophil21 @theophil21

なぜ労働者は保護されるのか(1) …そういう基本的疑問を抱いている方も多いかと思います。答えはいくつかありうるのですが、「労働契約の一方当事者である労働者には、生身の人間しかなれないから」というのが最も本質的な解答ですね。

2010-10-14 07:39:21
theophil21 @theophil21

なぜ労働者は保護されるのか(2) もともと雇用関係は契約関係です。本人同士が意識していなくても、働く側は「使用されて労働する」ことを、雇う側は「指示どうりに働いてくれたら代金として賃金を支払う」ことを、それぞれ相手に約束することで成立しています。

2010-10-14 07:41:14
theophil21 @theophil21

なぜ労働者は保護されるのか(3) 民間において(公共部門は法的枠組みが違う)は、一日だけのアルバイトでも、長期雇用を前提とした正規労働者でも全く同様に、この「労働契約」によって雇用関係が成立し、展開しています。 

2010-10-14 07:42:36
theophil21 @theophil21

なぜ労働者は保護されるのか(4) ところが、売買契約や委託契約やリース契約など、世の中に行われている典型的な諸契約と労働契約には、決定的に異なるところがあります。言い換えれば、労働契約だけにみられる本質的な特徴があります。それが、「労働者の側には、生身の個人しかなれない」です。 

2010-10-14 07:44:25
theophil21 @theophil21

なぜ労働者は保護されるのか(5) たとえば売買契約なら、売り手と買い手は、どちらも個人であったりどちらも法人(組織)であったり、どちらかが個人で相手が法人であったりできます。個人が買い手で大企業が売り手なら売り手が強いでしょうが逆のこともある。 

2010-10-14 07:46:23
theophil21 @theophil21

なぜ労働者は保護されるのか(6) だから、売買契約では売り手と買い手とは、アベレージで言えば対等であって必ず売り手が強いとか買い手が強いとかいうことはない。しかし労働契約は、雇用される側は本質的に生身の個人でしかなく、雇う側は実態としてほぼ法人(会社)ですね。 

2010-10-14 07:47:57
theophil21 @theophil21

なぜ労働者は保護されるのか(7) そうなると、労働契約では本質的に雇う側の言い分だけが通る契約となってしまいます。なぜなら、法人には時間的・空間的な限界がなく、情報量や交渉力も程度の差ではなく次元の違いとして、生身の個人より有利だからです。

2010-10-14 07:49:30
theophil21 @theophil21

なぜ労働者は保護されるのか(8) たとえば、イチロー君のようなスーパー労働者がいても、同じ時間に違う場所、で同時に複数の会社の面接を対面で受けることはできませんが、会社なら、東京と札幌とニューヨークで、同時に何人でも面接できる。 

2010-10-14 07:51:26
theophil21 @theophil21

なぜ労働者は保護されるのか(9) つまり、本来「契約」とは、対等な交渉の中で一致点を見出す仕組みなのに、労働契約の実際は、使用者側の要求だけが通り、労働者はそれを全面的に受け入れる、という形でしか成立も展開もしないのです。

2010-10-14 07:53:32
theophil21 @theophil21

なぜ労働者は保護されるのか(10) そこで、19~20世紀初頭の先進工業国ではどこでも労働者は低賃金や重労働を「契約で同意したはずだ」という理由で実際には強制され、追い詰められて労働運動が過激に展開されることになりました。 

2010-10-14 07:54:46
theophil21 @theophil21

なぜ労働者は保護されるのか(11) 各国はそれに対して市場経済システムを守りつつ労働契約の本質的欠陥を乗り越えることを目的として、まず労働条件の最低基準は法律で強制する(最低賃金制度の世界)こと、そして労働者側の交渉力を確保するために労働組合を法認し、助成する制度を作りました。 

2010-10-14 07:56:22
theophil21 @theophil21

なぜ労働者は保護されるのか(12) ポイントは、労働者個人の直接的な保護よりは、労働者の交渉力の強化ということが優先すること。仮に労働組合の組織率が100%になったら、どんな一人の労働者にもバックに強力な労働組合があることとなり、いっさい国家的保護は必要なくなります。 

2010-10-14 07:57:57
theophil21 @theophil21

なぜ労働者は保護されるのか(13) フィンランドやデンマーク、スウエーデンなど一応うまくいっているとされる先進資本主義国の共通の特徴は、労働組合の組織率が高く、社会的地位も権威もあることです。しかし労働組合は任意団体ですから、個人保護ももちろん必要です。 

2010-10-14 08:00:11
theophil21 @theophil21

なぜ労働者は保護されるのか(14) これで終わりますが、要するに、労働者が保護されるのは「弱くてかわいそう」だからではなく、労働契約が本質的に不均衡なので、それを「対等な当事者の交渉により物事を決定する」という本来の姿に戻す為なのです。この原点を確認したいですね。

2010-10-14 08:02:00
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theophil21 @theophil21

まず、労働組合が会社別に自己完結しているのは国際標準ではありません。失業者も労働組合員であって当たり前という場合には、もちろん労働組合が就業機会の獲得に全力で取り組みます。日本の企業別組合は長所もありますが、おっしゃる点が明らかな欠点ですねRT @shintaroyamaguc

2010-10-14 08:18:23
theophil21 @theophil21

また、労働組合性善説はもちろん間違いで、労働組合は「ツール」なのです。うまく使えばこうなるよ、というのが法の示す理念型としての労働組合で、現実の労働組合がそれに遠いことは言うまでもありません。RT @shintaroyamaguc

2010-10-14 08:20:17
このツイートは権利者によって削除されています。
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theophil21 @theophil21

「労働組合とは『会社にあるもの』」という誤解が蔓延していることは残念。先進国では日本くらいのものである、会社と労働組合の単位が一致しているのは。もちろん、企業別組合には、過去には長所もあった。しかし現在と未来のためにはこの形態は古すぎる。国際標準の労働組合の拡大が望まれる。

2010-10-14 08:27:30
ユニオンちれん @uniontiren

@theophil21  個人加盟の組合員としてはわが意を得たりという感じですが、これだけ企業内組合が大半だと難しいですね。まず、本工主義を何とかしないといけないと思うのですが・・・。

2010-10-14 09:01:24
theophil21 @theophil21

まだまだおっしゃる通りの状況ですが、変化ははっきり見えています。合併、分社化、分割等、企業変動が加速化している現状で、会社と一体化しているだけの労働組合に未来はない、ということは徐々に現場で痛感され始めています。問題は、「次の方向」が見えにくいこと。RT @uniontiren

2010-10-14 09:05:16
ユニオンちれん @uniontiren

@theophil21  私は職場でも組合に加入しています。大学の嘱託事務職なんですが・・・。なんとなく、私立大学事務職の横断的な組織化?が、ちらりと頭をよぎりました。

2010-10-14 09:18:48
シムカヨ @kayorine

野川先生 @theophil21 の派遣法についての連続ツイートに出井さんがコメントされています http://bit.ly/bYnRh3 現場の思いはここですよね・・・と納得。そしてもちろん濱口さんも。http://bit.ly/cBsU96 #hakenhou

2010-10-14 11:30:31
theophil21 @theophil21

ありがとうございます。お二人のブログも拝見しました。本当は、ツイッターという極めて制約の大きい場で、何かの解説や主張をするのは必ずしも適切ではないのですが、自戒しつつ少しずつ進めていきたいと思います。RT @kayorine

2010-10-14 11:53:19