『ゴリラスレイヤー ア・カインド・オブ・ダークゴリラ』#1
ゴリラスレイヤーはナックルウォーク姿勢から体を起こし、威嚇ドラミング行為を開始する。不意打ちは可能だが、敵ゴリラは空中でも自由に動く油断ならぬ敵。奇手を用いず、正攻法で迎え撃とうというのだ。 19
2014-02-04 15:15:24オブシディアン色のゴリラ……ダークゴリラもまた、ヘリ回転を停止し、空中でドラミングを開始。恐るべきワザマエだ。だがそのドラミング音に、ゴリラスレイヤーの眼は大きく見開かれた!! 20
2014-02-04 15:16:35ゴリラスレイヤーがその音を聞き逃す筈はない。……彼の人生を終わらせ、妻子を奪った憎き音色。憎悪の旋律。(ゴリラ……ダークゴリラ)それが仇の名か。フルーツ・シンジケートを追い続け、ついに見いだせなかった仇の。 21
2014-02-04 15:17:24(ゴリラ……殺すべし)ゴリラスレイヤーの心が憎しみで染まる。自らの生は、ただこの時のために。「ゴリラ……殺すべし」ゴリラスレイヤーの体から血汗が滲む!!ナラクピテクスが己と溶け合う感触。 22
2014-02-04 15:18:35「ゴリラ……殺すべし!!」ゴリラスレイヤーの背が白く発光する。銀の光が背中から溢れ、顎が肥大。全身に縄めいて筋肉が浮き出る。それに伴い頭部が鋭利な、よりゴリラ然とした形状へと変化してゆく。これこそがシルバーバックと呼ばれるゴリラスレイヤーの真の姿である! 23
2014-02-04 15:22:39ゴリラスレイヤーのドラミングが激しく響く。攻撃的な音だ。だがそれすらダークゴリラは意に介さず、自由落下ドラミングを継続。足でバナナの葉を掴み、速度を殺して着地した。 24
2014-02-04 15:23:50「……」ゴリラスレイヤーは、ただ対敵を見つめている。ゴリラ殺すべし。その殺意に淀みは無い。もはや何者も、ワシントン条約すらも彼を止める事は出来ない。しかし。 25
2014-02-04 15:28:12今のゴリラスレイヤーは、一度自我の軛を逃れれば地上から全てのゴリラ……いや、ヒト上科存在を抹消するまで止まらぬであろう。本来のナラクピテクスとは、そういう類のものだ。 26
2014-02-04 15:30:07その霊長殺戮機械とも言うべき衝動を押し殺し、ゴリラスレイヤーはダークゴリラへ問いを投げる。「鉱山を潰したのは、オヌシか?」沈黙の後。「そうだ。……そうか、貴様はあれの生き残りか」 27
2014-02-04 15:33:24ダークゴリラは肯定した。「何故?」「シンジケートのためだ。今と変わらぬ」ダークゴリラは平然と答える。そこに感情の起伏は無い。「フルーツ・シンジケートは潰れた筈だ!」ゴリラスレイヤーは思わず声を荒らげた。 28
2014-02-04 15:36:06「我々はセクトだ」「セクト?」ゴリラスレイヤーの顔つきが変わる。「時代遅れのフルーツ・シンジケート壊滅への助力、感謝するぞゴリラスレイヤー」オブシディアン色のゴリラは冷酷に笑った。 29
2014-02-04 15:36:46「……だが、ここで貴様には消えて貰う。冥土の土産も十分だろう」ダークゴリラは構えを取る。ライオンめいた構えを。ゴリラスレイヤーは、憎悪の手綱を緩める。 30
2014-02-04 15:38:01セクトという不安の種はある。だが、眼前のダークゴリラさえ殺せば、己の復讐は成るのだ。……その後の事など、それから考えれば良い。((ウホ……ウホ……))今は彼と溶け合っているナラクピテクスが、歓喜の声を上げた気がした。 31
2014-02-04 15:40:57バナナの葉が一枚千切れ、宙を舞う。ゴリラスレイヤーとダークゴリラは同時に駆け出した。「ウオオオオオーッ!!」背中を銀色に発光させ、ゴリラスレイヤーはダークゴリラに向かいストレートを放つ! 32
2014-02-04 15:42:22……だが!おお、ゴウランガ!ダークゴリラは宙を舞う。ヘリめいた回転飛行を行い、ゴリラスレイヤーの頭上を取った!!このまま上空からの回転攻撃を行おうというのか!!なんたるゴリラ発想力!そして、それを実現するゴリラ運動能力! 33
2014-02-04 15:43:36しかし、ゴリラスレイヤーはそれを許さない!!シルバーバックにより増強されたゴリラ脚力を活かし、力任せに跳躍!!ダークゴリラを空中で捉えたのだ!これは神話時代のバトル・オブ・ゴリラを彷彿とさせる神秘的光景である! 34
2014-02-04 15:45:36「ウオオオオオーッ!」ゴリラスレイヤーは驚異的ゴリラ握力でダークゴリラを掴み、地上目掛けて投げ落す!「ウ!ホ!ウ!ホーッ!」ダークゴリラは言葉も出ず、地上へ目掛け墜落!このまま物言わぬゴリラ肉塊となってしまうのか!? 35
2014-02-04 15:47:07ダークゴリラは空中で辛うじて体勢を立て直す!!上体を下に向けて両手を伸ばし、逆立ちめいた姿勢で地面へ!落下衝撃を回転エネルギーへ変換し、数回のゴリラ宙返り玩具めいたムーヴの後着地した!ワザマエ! 36
2014-02-05 16:18:11だが、ゴリラスレイヤーは追跡を行わない。その余力が無いのだ。ダークゴリラは油断ならぬ敵である。憎悪の手綱をあと少しでも緩めれば、この身はただの類人猿殺戮存在と化してしまうだろう。 37
2014-02-05 16:19:02ダークゴリラもまた、ダメージは小さくない。落下の衝撃は腕に小さくない損傷を齎した。このまま交戦を続ければ、相打ち可能性が高い、とダークゴリラのゴリラ本能は告げている。(……已む無し)ダークゴリラは信号弾を上空へ放った。 38
2014-02-05 16:25:21回収の合図である。上空からヘリが降下し、ロープを投下。ダークゴリラはそれに捕まり、ヘリと共に上昇を開始する。ヘリは徐々に高度を上げ、ダークゴリラとゴリラスレイヤーは再び同じ高度で相見えた。 39
2014-02-05 16:26:25ゴリラスレイヤーとダークゴリラの視線が交錯する。だが、それも一瞬だ。「ゴリラスレイヤー。その命、次の機会まで預けた」そう言い捨て、オブシディアン色のゴリラは天空へと去る。ゴリラスレイヤーは、動けなかった。 40
2014-02-05 16:27:25ダークゴリラは倒さねばならぬ。そのためなら人間性をも捨てよう。しかし、その後。自らが殺戮をヒト、ゴリラ、レスラなどに振りまく存在となったならば。行われるのは己の復讐の拡大再生産である。 41
2014-02-05 16:28:04