オイランドロイド・アンド・アンドロイド #6

日本語版公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「激しく前後に動くー」「ほとんど違法行為ー」楽曲はコーラス部分に達し、スタジアムを大歓声が圧した。「「「進歩!革命!」」」「「「ネコ!ネコ!カワイイ!」」」煽情パワーは拮抗!煽動MCにより深刻な混乱を来していたNERDZ親衛隊も我に返り、雛壇前で革命闘士らと肉弾戦闘を開始! 22

2014-02-20 23:16:45
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

『JUNKO:エッ、何これ、気持ちいい……』有線直結を行いながら、ケオスの坩堝の中でダンスを続けるユンコ。彼女は物理論理の両面で、一種の陶酔状態にあった。体が熱を帯び、マイコ回路が激しく回転する。全身を無数の01情報の波にさらす感覚。ニューロン自体が欲情しているかのような。 23

2014-02-20 23:24:54
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「激しく上下に動くー」「あなたは共犯者ー」そこには完全な同期状態にある二機のオイランドロイドだけがあった。ユンコの自我は、自らの胸に搭載されたマイコ回路に同調し過ぎ、呑まれかけていたのだ。『YCNAN:警告、PING率おかしいわよ。相手に深入りはノー。危険すぎる、警告!』 24

2014-02-20 23:31:16
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

論理空間を飛翔するナンシーは異常事態を察知していた。ユンコがコトダマ空間を知覚しつつある、と。これまでも何度か試みたが、ユンコはそれを認識できなかった。それが今、突然。だが今は……危険すぎる!『JUNKO:大丈夫、私は大丈夫。もっと同期する。もっと』『YCNAN:ノー!』 25

2014-02-20 23:39:15
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ナンシーの論理肉体は、広大な01空間上にノイズまみれで浮かぶユンコの論理肉体めがけ、超音速で接近する。だが次の瞬間、ユンコはナンシーとのIRCチャットから突如消失したのだ。物理空間のステージ上では、2体のオイランドロイドが何事も無かったかのように、同期ダンスを続けていた。 26

2014-02-20 23:46:09
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……ここ、何処?」ユンコは白い無限地平上に佇んでいた。「何処だ?」意識がワンレイヤ上に昇ったかのように、第三者的に自らを眺め下ろす視点に変わり、世界が回転。遥か遠くから、あるいはワンインチ距離で自らを観察。無意識のWHOISコマンド。頭上には光り輝く「JUNKO」の文字。 27

2014-02-20 23:55:01
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「オツカレサマドスエ」隣に誰かいる。ネコチャンだ。「ドーモ」「ドーモ」彼女らはOJIGIコマンドした。「そっか」ユンコは本能的に悟った。ナンシーから聞いた事がある。……ハッカーたちの伝説、無限の地平、コトダマ空間。だがここは何か違う。彼女は天を仰ぐ。空が閉じているのが解る。 28

2014-02-21 00:02:30
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

そこは不思議な空間だった。「なんてシンプルな世界だろう」「それはよく解りません」先程まで体が感じていた熱も、感情の昂りも、濾過されたかのように消え去っていた。決して悪い気分ではない。だが、何か……もの寂しい。ネコチャンは微笑むだけで、何も向こうから語りかけては来なかった。 29

2014-02-21 00:11:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ダンスする?」「ミュージックですか?はい、ダンスします」そして2人はダンスを始めた。次第に同期していった。すると電子的な音楽があり、真っ赤なトリイと何個ものカドマツが出現した。2人をミステリーサークル状に囲むように、多種多様のネコネコカワイイが正座状態で無数に出現した。  30

2014-02-21 00:15:48
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ユンコは地面を認識できなくなる。実際全ては白い無限遠空間に浮き、穏やかに回転していた。ミステリーサークルは自動的に延長され、輪の中には新たなユンコとネコチャンが出現し、全てが同期ダンスした。物理空間における2機の同期率は理論値を超え、120%に達していた。観衆は魅了された。 31

2014-02-21 00:24:05
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「「「ネコ!ネコ!カワイイ!ネコ!ネコ!カワイイ!」」」「「「打倒!破壊!進歩!革命!」」」「「「ネコ!ネコ!カワイイ!ネコ!ネコ!カワイイ!」」」「「「打倒!破壊!進歩!革命!」」」「「「ネコ!ネコ!カワイイ!ネコ!ネコ!カワイイ!」」」「「「打倒!破壊!進歩!革命!」」」32

2014-02-21 00:28:42
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「「「ネコ!ネコ!」」」「「「進歩!」」」「「「「カワイイ!」」」」「「革命!」」「「「「「ネコ!ネコ!」」」」」「だ……打倒ッ!」「「「「「「カワイイ!」」」」」」「破……」「「「「「「「ネコ!ネコ!カワイイ!ネコ!ネコ!カワイイ!」」」」」」」熱狂はついに分水嶺を超える!33

2014-02-21 00:35:11
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「「イヤーッ!」」スタジアム屋上では、二人のニンジャが数十発に及ぶカラテラリーの末に、激しいチョップを繰り出してザンシンを決めていた。その間合いはタタミ4枚!背を向けていた両者は、深い息を吐きながら振り返る! 34

2014-02-21 00:43:24
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ヌウーッ……!」ニンジャスレイヤーの肩から脇腹にかけて袈裟斬りの傷痕!だが彼のカラテは些かも揺るがぬ!吹き出した血飛沫は赤黒く燃え上がって、新たな装束へと変わった。アンサラーも無傷ではない「ヌウーッ……!」がっくりと片方の膝をつき、断続的なカラテ衝撃に軋む己の左腕を見た! 35

2014-02-21 00:48:26
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

アンサラーは変化を感じ取る。革命の空気が変わり始めた。「下が気になるか。団結の勝利とやらが、音を立てて崩れ去る様子が」ネオサイタマの死神が言い放つ。「砂上の城は崩れる。当然の帰結だ。どの道オヌシらには、城を築く甲斐性もあるまい」「黙れ」革命闘士は立ち上がり、怪物を睨んだ。 36

2014-02-21 00:59:37
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「我らは腐敗せぬ闘争組織!」アンサラーが左腕を決断的に掲げる!死神も構えた!「その道具にユカノを利用した事、アノヨでセンセイに詫びよ」「詭弁!同志アムニジアは闘争理由を与えられ真に幸福」「偽りの記憶であろうが!」フジキドの両目が憎悪で赤く輝き、鋼鉄メンポがばきばきと軋んだ! 37

2014-02-21 01:12:37
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

死神の傷だらけの装束が、ジゴクめいた風に吹かれ炎の如く揺れる。この人外の怪物は何者だ。アンサラーの内なるニンジャソウルが怯んだ。決断的撤退が脳裏をよぎる。だが彼は闘争継続を選んだ。彼は己のカラテを、また暴力革命思想の正義と同志アムニジアの幸福を、愚直なまでに信じていたからだ。38

2014-02-21 01:29:51
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「団結!打倒!勝利!革命!」「ニンジャ、殺すべし……イヤーッ!」みたび両者は激突!常人に見えるのは激突が生む火花のスパークのみ!かたや空気を焦がす赤熱カラテチョップ!かたや黒い憎悪の炎を纏った、暗黒カラテチョップ!無慈悲なる最終決着に向けて、死のカラテ・ラリーが開始された! 39

2014-02-21 01:34:33
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

一方、ナンシー・リーはLAN直結を性急に解除し、頭痛を振り払いながら無線端末をジャックインすると、VIP室から飛び出した!「一体何が……!」いくらコマンドを送ってもユンコは反応を返さない。ステージへ向かい、ユンコとLAN直結するしかない!物理肉体が非情なまでに重く感じた。 40

2014-02-21 01:40:34
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

闘士軍団とNERDZの死闘は一進一退の攻防!「打算的無思考!」角材で殴る!「ふざけんなバカヤロー!何も考えずに踊りたいから金払って来てんだバカヤロー!」半身サイバネ性別不明NERDZが反撃!「グワーッ!」腹部貫通!「アジなら別な所でしろバカヤロー!」「グワーッ!」ジゴクだ! 41

2014-02-21 01:52:10
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ヴィーヴヴィ!ヴィーヴヴィ!ヴィーヴヴィ!ヴィーヴィーヴィ!!おお、大観衆のケオスを圧し、耳を聾するほどの電子音とドラムロールが、ほとんど違法行為を最後のクライマックスへと突き進ませる!そしてクラップ!クラップ!電子クラップ!最後のネコネコカワイイ・ジャンプが全てを決する! 42

2014-02-21 01:59:42
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ネコネコカワイイ・ジャンプまで20秒!」「同期パターン良!」「勝てるぞ!」だが思わぬ異常!「警告!モーターカワイイの膝、限界です!破損確率92%!」「跳躍高度をセーブ不可か?!」「無理です!ど……同期率が高すぎて……現在180%、190、200……ウワーッ!」ナムサン! 43

2014-02-21 02:09:43
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「応急修理……不足だったか…!」制御室の混乱をIRCで拾ったサイバネ技師が、無念の表情でくずおれる。モーターユンコが戦闘で負った膝部位ダメージだ。「やれるだけやった!あとは祈るだけだ!テックの力を信じろ!作業続けろ!」主任はエンジニアたちを鼓舞する!オムラコールが始まった! 44

2014-02-21 02:14:59
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

白い無限遠地平。覚醒ニューロン時間感覚で数十分間に渡りネコチャンと踊り続けたユンコは、汗だくになって息を切らし、地平に座り込んでいた。「気持ちよかったね」「ハイ、気持ちいいです」ネコチャンが答え、サポートするために手を伸ばす。ユンコは立ち上がり、彼女をハグして軽くキスした。 42

2014-02-21 02:22:07
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「もっとしてください」ネコチャンが屈託の無い笑顔で返す。その声は優しい電子的無表情。「寂しいの?」「寂しくはないです」「そういえば、ここ、何処なの?」「その質問はわかりません」ネコチャンが答える。無数のネコネコカワイイが彼女らを観察する。ユンコは、何かを忘れている気がした。 43

2014-02-21 02:25:45
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