片岡剛士さんの「実質実効為替レートと交易条件と金融政策」についてのまとめ

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片岡剛士(Kataoka Goushi) @goushikataoka

実質実効為替レートと交易条件の動きが厳密に一致しないことを示したのが、岡田さんと浜田先生の論文のポイント。この二つが厳密に一致するのは、日本と外国の物価が自国の輸出財物価と同義である場合に限られる。非貿易財を導入すれば、実質実効為替レートは非貿易財価格変化にも影響を受ける。

2010-10-30 23:11:22
片岡剛士(Kataoka Goushi) @goushikataoka

つまり、日本と外国の物価が自国の輸出財価格と同義だとすると・・輸入が存在しないことになり、貿易自体が成り立っていないことに(汗。特殊ケースですね(汗。

2010-10-30 23:13:06
片岡剛士(Kataoka Goushi) @goushikataoka

前のツィートの話を念頭に置くと、例えば輸出財物価ベースのPPPが85円だから円高は大した話ではないという議論がいかに変な事なのかというのも容易に分かる・・筈w

2010-10-30 23:19:19
片岡剛士(Kataoka Goushi) @goushikataoka

これらからいえるのは、過度の円高と交易条件の改善との同時発生が円高の影響を過小評価させ、バブルの発端へと繋がってしまったのではないかということ。更に変動相場制度の元で為替に影響を与えるのは金融政策とすれば、実質為替レートを適度に抑えるのは金融政策の責務であること。

2010-10-31 00:46:57
片岡剛士(Kataoka Goushi) @goushikataoka

勿論、交易条件と実質実効為替レートが同方向に動くこともある。だが、交易条件の改善以上に円高が進む場合、日本の輸出産業は外国の輸出産業に対して収益性でハンディを負うことになる。直近では実質実効レートは円高が進むが、交易条件の悪化が進む。つまり収益は悪化しているということになる。

2010-10-30 23:24:51
片岡剛士(Kataoka Goushi) @goushikataoka

簡単な実証を行って実質実効為替レートに対する交易条件の寄与を分析してみると、81年から86年初までは実質実効為替レートは交易条件で説明できる実質実効為替レートの水準を下回っていた。当時の円の過少評価という話と整合的。

2010-10-30 23:38:06
片岡剛士(Kataoka Goushi) @goushikataoka

プラザ合意直後には、実質実効レートは交易条件に見合った水準へと上昇した。その後89年頃にかけて円は急騰したが、この際交易条件も共に急速に上昇した。我が国の交易条件は原油価格に大きく影響を受けるが、当時は原油価格の低下が進んでいた。

2010-10-30 23:50:26
片岡剛士(Kataoka Goushi) @goushikataoka

この交易条件の改善が、エネルギー効率の改善努力が効果を発揮した結果であり、恒久的かつ持続的な構造変化と誤認され、予想収益率の大幅引き下げ、そして低金利政策とあいまって、円高下の内需主導による景気拡大を引き起こした、というのが岡田浜田論文の解釈。

2010-10-30 23:54:18
片岡剛士(Kataoka Goushi) @goushikataoka

一時的な変化を恒久的な変化だと誤認する・・というのはバブルを生み出す条件になる。円高の定着と交易条件の改善、そしてインフレ率の低下、低金利がバブルを産み出すということに。

2010-10-30 23:56:50
片岡剛士(Kataoka Goushi) @goushikataoka

90年初になると株価は下落に転じる。そして90年夏には湾岸戦争により原油価格は急騰し、交易条件は急速に低下。資産価格の上昇(期待)の背景にあったファンダメンタルな裏付けは急速に剥落していくが、90年の株価暴落の頃から日本は政策金利を引き上げ、人為的に資産価格下落を誘発させてしまう

2010-10-31 00:05:13
片岡剛士(Kataoka Goushi) @goushikataoka

つまり平成の鬼平の登場という訳ですねw 企業収益の悪化により始まる景気後退(91年~)と株価バブルの崩壊が重なって、地価が下落。銀行融資は土地担保の安定性に依存していたために、金融システムの健全性が脅かされることに。そして信用秩序の危機、投資家のリスク回避行動の拡大へと繋がる。

2010-10-31 00:12:33
片岡剛士(Kataoka Goushi) @goushikataoka

本来早期に資本注入や急激な金融緩和を行う必要があった。だが、金融緩和のスピードは不十分だった。93年10月に景気は底入れするが、日銀は「過度の低金利」がバブルを誘発することを懸念する。そこで94年に入り長期金利の上昇傾向を放置してしまい、実質的に金融緩和を中断させてしまうことに。

2010-10-31 00:17:29
片岡剛士(Kataoka Goushi) @goushikataoka

そして94年後半にはGDPデフレータで見たインフレ率がマイナスに転じる。そして米国が大幅な金融緩和を開始した95年に、為替レートは過去最悪の円高を記録する。Jorgensonと野村さんの研究によれば、GDPデフレータベースの実質実効為替レートは購買力平価を78%も上回っていた。

2010-10-31 00:21:32
片岡剛士(Kataoka Goushi) @goushikataoka

企業収益の悪化が国内の設備投資の低下や輸入競合産業への圧迫をも引き起こしていく。こういった状況で93年11月以降の景気回復は脆弱なものに留まり、消費税引き上げが予見された96年には景気は拡大するが、消費税引き上げが実現すると需要の反動減、これと機を一にしてアジア通貨危機が生じる

2010-10-31 00:24:06
片岡剛士(Kataoka Goushi) @goushikataoka

そして景気後退懸念が強まる中で資産価格が急落し、金融危機へ。98年以降に更に厳しい状況へ。ITブームにより日本経済は一息ついたが、ITバブル崩壊とともに米国は金融緩和開始。

2010-10-31 00:27:54
片岡剛士(Kataoka Goushi) @goushikataoka

ただ、00年代の米国の金融緩和開始時には日本は大規模な為替介入により対抗し、1ドル100円割れを容認しないという認識が浸透することに。そして量的緩和策も同時期に実行された。円売り介入に伴う障害はインフレの亢進だが、デフレの最中だったのでその障害はなかった。米側も容認していた。

2010-10-31 00:32:00
片岡剛士(Kataoka Goushi) @goushikataoka

このような形で円高の再現を回避できた後に、米国の金融緩和が終了して、実質実効レートはプラザ合意前の水準に向かって下落していく。デフレ圧力が緩和に向かい、輸出主導の景気拡大によって長期停滞が一応収束することになる。

2010-10-31 00:36:18
片岡剛士(Kataoka Goushi) @goushikataoka

・・ということで長々と恐縮ですが、岡田さんと浜田先生の論文の話の一部をまとめてみました(汗。

2010-10-31 00:38:57
片岡剛士(Kataoka Goushi) @goushikataoka

これらからいえるのは、過度の円高と交易条件の改善との同時発生が円高の影響を過小評価させ、バブルの発端へと繋がってしまったのではないかということ。更に変動相場制度の元で為替に影響を与えるのは金融政策とすれば、実質為替レートを適度に抑えるのは金融政策の責務であること。

2010-10-31 00:46:57
片岡剛士(Kataoka Goushi) @goushikataoka

国内でインフレが進行する中で為替レートの減価(円安)を招くような政策を行うのは困難ですし、インフレを助長させることになる。これは第一次オイルショック時の狂乱物価という形で苦い経験があります。ただ、現代ではデフレが進行している以上、そうした制約は無いというわけです。

2010-10-31 00:49:11
片岡剛士(Kataoka Goushi) @goushikataoka

今日開催された政策メッセで以下に一部纏めてみた岡田さん、浜田先生の論文が賞を受賞されたのですが、経済停滞における貨幣的現象の持つ重要性を感じざるを得ません。http://www.policy-net.jp/

2010-10-31 00:52:20
斉藤 淳 『アメリカの大学生が学んでいる本物の教養』 (SB新書) 発売中💙💛 @junsaito0529

@goushikataoka 一連の流れをレビューするのに役立ちます。ありがとうございました。政治学者としてはこの背後の選挙政治に思いを馳せてしまいますが、まだ経済停滞に対して政治的に補償する余裕のある時期の話でしたね。近年はいよいよ袋小路の印象があります。

2010-10-31 00:40:05
片岡剛士(Kataoka Goushi) @goushikataoka

@junsaito0529 恐縮です。現象としてはこのように私は理解しており、背後には政策の失敗が大きく影響したと思いますが、政治学者の先生方に是非、政策の失敗の背後に何があったのか、それが今の混乱にどう繋がるのかを解明して頂きたいと思う次第です。私も追求したいと思っています(汗

2010-10-31 00:57:57
よわめう🐏(牛丼短観) @tacmasi

対数表示)実質為替レート=[名目為替レート]-[購買力平価]=([国内ウェイト]-[海外ウェイト])*[交易条件]+[ウェイト]*([国内非貿易財価格]-[国内貿易財価格]) - [ウェイト]*([外国非貿易財価格]-[外国貿易財価格]) に基づいてるんよ>浜田・岡田論文4章~

2010-10-31 00:12:44
よわめう🐏(牛丼短観) @tacmasi

@goushikataoka 恐縮なんてとんでもない。とても勉強になりました。ありがとうございますー

2010-10-31 00:46:17