暗礁艦隊/ZERO ３話

CF型マシニーカhir @hir_CF

『－続報です。確認された死者は２１３４人に上り、さらに増え―』 次々と悲報を告げるテレビをぼーっと見ながら、ソファに座るシーフは缶ビールをくいっと一口。 「やってらんねぇな」 「全くだ。横、いいか」 魔法使いがその横に座る。手にはジュース。 #暗礁艦隊０

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激しい戦いの後。４人と１頭と１匹は無事な民家に転がり込む事に成功した。 親切な老夫婦はボロボロになった一同を快く受け入れ、一夜の宿を提供してくれたのだ。 「で、明日はどーするよ？」 今夜はもう来ないという前提。若干の願望と冷静な判断による。 #暗礁艦隊０

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「おう、お主らまだ起きておったか」 眠れないのか、アロハシャツになったＨＦＯがやってくる。 「ああ。とりあえず奴らとどうやりあうかでね。ここの軍隊と協力できないしな」 「無理か」 「無理だね。魔法使いですとか言っても追い返されるのが関の山だ」 #暗礁艦隊０

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「となると、船を自前で調達する必要があるな」 「ああ。それもただの船じゃダメだ。頑丈で強力で足の速い戦闘艦が最低限必要だ」 彼らの最大の懸念はそれだった。陸の上なら二本の足で踏みしめる事ができる。だが海の上はそれだけで機動力を大きく制限されるのだ。 #暗礁艦隊０

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「どっちにしろ、港にあった軍艦は壊滅状態だけどな」 「……ふむ。魔法使いよ。それは現役のものだけか？」 「何？…ちょっと待て。まさか」 ＨＦＯの発言に魔法使いは嫌な予感を覚える。 「元々、我々が見に行く予定だったあれがあるではないか」 ――戦艦ミズーリ #暗礁艦隊０

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「…ほんとに無事だよおい……」 呆然と、岸壁に接舷した巨艦を見上げながらシーフが呟いた。 周囲は人もおらず閑散としている。昨日の今日では仕方あるまいが。 「ちょっくら見てくるよ」 シーフは言うなり駆け出す。十数分後。 艦橋のてっぺんで手を振るシーフの姿を一同は認めた #暗礁艦隊０

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「ほぅ……古い船だと聞いていたが、見事なものだ」 「今も見学者を受け入れるために整備されてる。それに、時々大規模整備のために移動もしているはずだ」 つまり彼らが必要としているものは全てあるということだ。ただ一つ 「で、どうやって動かすんだ？」 これだけが問題だった。 #暗礁艦隊０

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暗礁艦隊世界では艦むすは物凄く安く大量生産できるが電子機器を積もうとすると途端にイージス艦並のお高いブツになってしまう。なので比較的原始的な海戦しかできない。最大の敵は破産だからだ。 #暗礁

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０ではパーティが逃げるという選択肢を最初から選ばず深海棲艦と殴り合ってますが、魔法使いとシーフにとっては故郷の危機であり、僧侶からしてみれば救われぬ魂を救済する戦いであり、ＨＦＯにとっては仲間の故郷の危機なので肩を並べて戦うのは当然という合意が形成されておる。 #暗礁

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「さて問題。ミズーリをはじめとするアイオワ級戦艦の乗員は何人でしょう？」 「１９２１人とパンフレットにあったぞ」 「正解。…どーすんだよそんな人員」 いざ目当てのバトルシップを発見、乗り込んだ一行であったが４人しかいない。これで戦艦を動かせるのか？ #暗礁艦隊０

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「何とかならんか？魔法使い」 困った時は魔法使いの出番だ。とはいえ彼も途方に暮れている。 「単純に労働力としてなら何とかする手段はないではない。が、こいつはプロ中のプロが２０００人近くいないと無理だ」 「そういうものなのですか？」 「そうだな。例えば…」 #暗礁艦隊０

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「例えばそんなプロを無から何千も作れるなら、私はＨＦＯを２０００人作るね」 「ああ。納得がいきました」 確かに戦艦をいちいち動かすよりＨＦＯ２０００人が手漕ぎボートにでも分乗した方が強い。プロフェッショナルを作れというのはつまりそういうことだ。 #暗礁艦隊０

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「となるとどうする？元の乗員を探してくんのか？」 シーフの発言。そこでふっと、ＨＦＯが顔を綻ばせた。 「動かし方を聞けばいいではないか。本人に」 一同は顔を見合わせる。 「本人？…まさかこの船の精霊を呼ぶ気か」 「うむ」 #暗礁艦隊０

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「進水してからでも７０年、幾度もの大戦に参加し、国の象徴として保存されている。これで魂が宿らぬ道理はない」 パンフレット片手のＨＦＯは自信満々に言い切った。 「確かにな。待てよ。それならもっといい手があるぞ」 魔法使いも閃いたという顔で答える 「本人に制御させよう」 #暗礁艦隊０

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この時点で察した人もいるかもしれませんが魔法使いが思いついたのは暗礁艦隊方式の艦娘の構造とほぼ同じです。 #暗礁

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艦の中で最も高い場所。艦橋。そこに４人の男たちは集まっていた。 「…つ、疲れたぜ…」 シーフがぐったりしながら言う。 魔法使いは足りない乗員を補うために魔法的従者を印刷という手段で大量生産する事を選んだ。そこらじゅうに押した芋判が起き上がるという寸法である。 #暗礁艦隊０

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２次元で人型の墨が歩いている光景は中々に異様なものがあるが、合計二千回近くも判子をぺったん押して歩いていた一同としては気にしていられるほどの体力は残っていない。 「こちらはエンジンに火の精霊を宿した。これで燃料なしで永遠に動き続けるだろう」 魔法使いも進捗を伝える。 #暗礁艦隊０

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「僧侶は？」 「終わりました。これでこの艦の全ての武器は、功徳によって敵に必ず命中するようになるでしょう」 僧侶の宗派には経文を書き込んだドラムを回転させることで経文を唱えるのに等しい功徳を積む法具がある。ライフル砲は砲弾が回転するから、それを応用したのだ。 #暗礁艦隊０

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ちなみにマニ車と原理は一緒である #暗礁

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「では類似魔術を構築する」 乗員が連携することで、艦艇はまるで生き物のような有機的な動きが可能となる。生き物のようならば生き物との違いはなんだ？似ているものは同じものだ。魔術の世界ではそれこそが真理。 故に、乗員の乗ったミズーリは、魔法使いの言葉で命を宿した。 #暗礁艦隊０

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「では召喚を開始しよう」 そう告げたのは魔法使いではなく、ＨＦＯだった。彼の全身に描かれた刺青が光を宿す。 とある世界の辺境に生きる一族。その族長の次男だった彼は、一族に伝わる祖霊信仰。そして精霊と語らう術を身に着けていた。 艦の全体に光。それは収束し文様となる。 #暗礁艦隊０

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光は空に伸び、そして巨大な絵画を描き出す。それは図案化された鷹。 「国鳥か…」 シーフが呟く。 最後に、光の中央から降りてくる人影。 それは、少女の姿をしていた。 #暗礁艦隊０

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げ、さっきのシーン鷲って書いたつもりが鷹になってる。なんてこった #暗礁　

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鈍色の髪。折れそうな細い手足。軍服を思わせる髪と同じ色の衣装、軍帽。愛らしい顔。そして腰から左右に伸びた２基と、右肩についた１基の砲塔。左肩に止まっているのは無人偵察機か。周囲には数本の円筒が旋回。 後方に伸びる煙突とアンテナ。それが戦艦ミズーリの精霊の姿であった。 #暗礁艦隊０

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「…お前たちが私を起こしたのね？」 ミズーリの第一声はそれだった。 「うむ。その通りである」 ＨＦＯの返答に、彼女は胡散臭げな視線を向けた。そのまま一同を見回す。 「で？栄えある米海軍ならいざ知らず、何故お前たちが私を呼んだのですか？」 #暗礁艦隊０