ロンゲスト・デイ・オブ・アマクダリ10100209:デス・オブ・アキレス #2
ニンジャスレイヤーが言いかけた言葉を、メフィストフェレスは遮った。「いい!言いたくないのなら、よい。不粋なことを聞いてしまった。君達は信頼しあっている。当然、お互いを知り尽くしての作戦だろう。しかし、いかんな」メフィストフェレスは山羊鬚をしごいた。「君の質問に答えたいのだが」24
2014-07-26 01:35:38「私の質問だと」「そうだ。君は執事を弔ってくれた。この私はアマクダリ・セクトの十二人だ。君の敵だ。君は問答無用のカラテで私を殺すこともできたろう。私は実際、君にそれを勧めたというのに、君はシツレイをしなかった。礼を尽くした。私は多少心苦しさを覚えている。ゆえに、一つ明かそう」25
2014-07-26 01:37:48「何をだ」「だから、君の質問に答えようというのだ。何がいい。十二人の、他の者の名か?十二人は互いを知り尽くしているわけではない。非常に注意深く構築されたシステムなのだ。乏しい情報で君を失望させてしまう。もっと有用なものがいい」10100219。「そこのUNIXに触れたまえ」26
2014-07-26 01:43:19ニンジャスレイヤーは警戒を絶やさず、片手をのばし、黒漆塗りの小型UNIXデッキのエンターキーを押す。アマクダリ意匠が画面内を反射するスクリーンセーバーが消え、IRC通信記録が表示される。確かな記録だ。「私にも見せてくれ」メフィストフェレスが横に立つ「そうか。既に動いているか」27
2014-07-26 01:45:57ナムサン……それは直近の通信記録!ニンジャスレイヤーがエントリーする直前にメフィストフェレスが投げた問いに、返答が来ているではないか。「スパルタカスが動いているぞ、ニンジャスレイヤー=サン」メフィストフェレスは低く言った。「強大なニンジャだ。彼は今回、従者に誰を連れている?」28
2014-07-26 01:50:47メフィストフェレスはキーボードに触れ、メッセージをさらに展開した。「いかんな、これは……ドラゴンベインとスワッシュバックラーが動いている……特にドラゴンベインは相当の使い手だ。ラオモト=サンは本腰を入れているようだぞ。君達の電撃的攻勢とどちらが先を行くか、興味深い」29
2014-07-26 01:55:01「何が目的だ」ニンジャスレイヤーが呟いた。「何だって?」すぐ横でメフィストフェレスが聞き返した。ニンジャスレイヤーは言った。「何故明かした」「理由はさっき言ったではないか。敬意だ。どのみち、私もタイムリミットだ。もう2時22分だ。殺せ」「……」ニンジャスレイヤーは言葉を探す。30
2014-07-26 02:00:50「君は誠実な男だ。ニンジャスレイヤー=サン」メフィストフェレスは呻くように言った。「私が想定していたよりも、遥かに。私は君に賭けていいのやもしれんな」「何をだ」問いながら、ニンジャスレイヤーは苦く思った。今ナラクが意識下にあれば、あの悪鬼はおそらく激昂し、悪罵を極めるだろう。31
2014-07-26 02:05:12「考え始めている。真の目的を共有してもいいかと」メフィストフェレスが言った。ナラクは黙っている。ブラックロータスを殺したのち、ビル街を跳び渡り、オルトロスを殺し、邸内に入り、メフィストフェレスとアイサツした。その間ナラクはずっと黙っている。ニンジャスレイヤーは既視感を覚える。32
2014-07-26 02:07:21ナラクはなぜ動かない?なぜなら自分自身の姿を見ることは出来ぬからだ。自分自身と会話することは出来ぬからだ。UNIXモニタに、彼自身の顔が映っている。ニンジャスレイヤーは無限の落下を錯覚した。なんたる事か。今の彼は……。「ニンジャスレイヤー=サン?」メフィストフェレスが呼んだ。33
2014-07-26 02:13:37「スウーッ……」ニンジャスレイヤーは深く息を吸った。「ハアーッ……」そして吐いた。マジェスティ殺害後を思い出せ。チャドー。フーリンカザン。そしてチャドーせよ。ほんの僅かな間に、共振が再びこうまで深まってしまっていたとは……!「スウーッ……ハアーッ……!」34
2014-07-26 02:18:26「私の目的を話そう。ニンジャスレイヤー=サン」メフィストフェレスが言った。「時間がない。スパルタカスらがここへ到着するのは恐らく時間の問題だ!」ニンジャスレイヤーは目を閉じる。チャドー……フーリンカザン……チャドー……(((フジキド!)))ニューロンに怒り狂った声が木霊した。35
2014-07-26 02:20:57「私の目的を話そう。ニンジャスレイヤー=サン」メフィストフェレスが言った。「時間がない。スパルタカスらがここへ到着するのは恐らく時間の問題だ!」ニンジャスレイヤーは目を閉じる。チャドー……フーリンカザン……チャドー……(((フジキド!)))ニューロンに怒り狂った声が木霊した。35
2014-07-27 17:35:39ニンジャスレイヤーはモニタに映る己を再び見た。メンポを禍々しく変形させた恐るべきニンジャスレイヤーの姿がある。彼はメンポに触れた。まともだ。鏡像はナラクの意思の投影か。共振が解けた。分かれたのだ。(((ハァーッ……ハァーッ……何だこれは……フジキド!)))鏡像のナラクが問う。36
2014-07-27 17:42:12(((其奴はニンジャぞ!貴様にしばしばまといつくサンシタの臆病者どもですらなし!真っ先に殺すべきアマクダリのニンジャであろう!談笑しておったのか!何たる……)))(わかっている!ナラク)ニンジャスレイヤーは遮った。ゴウゴウと耳元で空気が鳴り、時間感覚が圧縮された。 37
2014-07-27 17:54:59(わかっている……)フジキドはメフィストフェレスを見る。隙だらけだ。彼はメフィストフェレスの心臓に突きを入れ、えぐり取った。(見よ)(((ならば今すぐそのようにせよ)))(いつでも殺せる。だが)殺害の映像が掻き消え、無傷のメフィストフェレスの謎めいた眼差しが戻ってきた。38
2014-07-27 18:02:45(此奴はアマクダリの頂点に立つニンジャの一人だ。手を下す前に引き出すべき情報がある。ナラクよ。ただ殺せばよいというものではないのだ……このメフィストフェレスはロケット計画の全てを把握するニンジャでもあり……その情報が、場合によっては我らのイクサを左右するやも知れん)39
2014-07-27 18:06:32(((何をバカな……此奴の憑依ソウルは……ヌウーッ……)))ナラクの思考パルスがざわついた。(((此奴め……ソウルをよう隠しておる……何故隠す……!とにかく殺せフジキド!それで終わりだ!)))「どうした、ニンジャスレイヤー=サン」メフィストフェレスが案じるように言った。40
2014-07-27 18:12:01「貴様の目的とは何だ、メフィストフェレス=サン」ニンジャスレイヤーは呻くように言った。「うむ」メフィストフェレスは身を翻し、どこからか取り出したパイプを吸った。「私の宇宙開発に賭ける意欲は充分にわかっておろう。なにしろ他でもない君が、我々とあれほど激しく争ったのだから」 41
2014-07-27 18:20:04「前置きは要らぬ」「前置きではない。重要な説明だ。私は信頼を得るために全力を傾けねばならんだろう?」メフィストフェレスは再びソファにもたれ、煙を吐き出した。リング状の煙はゆらゆらと舞い上がり、霞んで消えた。(((ソウルが見えぬ……揺さぶれ!フジキド!)))「イヤーッ!」 42
2014-07-27 18:25:23やおら繰り出されたニンジャスレイヤーの蹴りが、メフィストフェレスの顔の横のソファーを突き破った。メフィストフェレスは少しも動かなかった。避けようともしなかったのだ。「引き延ばすな」「ふふ」彼はパイプを吸い、たしなめるように言った。「話の腰を折るでない。遊んでいる時間はない」43
2014-07-27 18:34:52TVからはミチグラの高圧的トーク。『フジキドの両親が他界しているのは、まだしも幸いでしたね。反社会的存在に堕ちた息子など見たくない!貴方のお子さんも他人事ではないですよ』「ロケットの飛ぶ先は知っていたかね?月の裏だ」メフィストフェレスは言った。「そこには棄てられた力がある」44
2014-07-27 18:47:48