「人種は存在しない」を読みながら

フランスの生物学者ベルトラン・ジョルダンの著作「人種は存在しない」(林昌宏訳)に関するツイートです。 http://amzn.to/1t2giHm (ツイートの表現は内容の要約で、()は私のコメントです。) 著書には人種差別を正当化する具体的な意見への反論が多く述べられていますが、このまとめではあまり収録していません。また、遺伝子変異の種類についても解説されていますが、その部分も割愛していますので興味のある方は是非著書をごらん下さい。
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s_matashiro @glasscatfish

遺伝子検査ビジネスと言えば、伝統的には親子鑑定が多かった。SNP祖先解析が可能となって、特にアフリカ系の場合は地域レベルで祖先の出自を推定できる。歴史的な経緯から、アフリカ系のルーツは文書で辿ることが難しいため、この解析の需要は小さくない。

2014-08-14 21:45:09
s_matashiro @glasscatfish

皮肉なことに、「アフリカ系の血」を誇りにしていた人や利用していた政治家の中には、SNP祖先解析を依頼してその結果を見たら、自らの祖先の中に含まれるヨーロッパ系の割合の多さを受け止められず戸惑う人もいるそう(前出のアフリカ系ヒト集団祖先の多様性を参照)。

2014-08-15 06:33:12

どう遺伝的変異の理解を広めるか

s_matashiro @glasscatfish

ヒト祖先集団(より不適切には「人種」と呼ばれる)の間で、遺伝的な要因による能力差が存在するか」という問いにどう答えるかが現代の科学にとっての重要な課題。これまで差があるという結果は得られておらず答えは『NO』なのだが、これを人々に納得してもらう科学コミュニケーションが問題

2014-08-15 06:44:34
s_matashiro @glasscatfish

統計的な解析から例えば「IQの60%は遺伝的因子の影響下にある」と言う表現がなされることがあるが、この内実を統計的な考え方に馴染のない一般の人が理解するのは容易ではない。 そもそも、知的能力をIQで定量化することに無理がある(本来は集団教育への適合度の指標)が、それはまた別の話。

2014-08-15 21:49:49
人気ついーと和訳 @Forkillingtimee

我々の教育システム:それでは、公平に評価を行うために、同じテストをしましょう。みなさん、木に登ってください。 (全員が天才なんだ。しかし、木を登る能力で魚の能力をはかってしまうと彼は自分が無能だと思ってしまうだろう) pic.twitter.com/6BtfIZhIqT

2014-08-12 17:10:11
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s_matashiro @glasscatfish

すべての測定値や指標にはばらつきがあるので、「遺伝的に決まるのは60%」と言った場合、このバラつきの60%が遺伝的因子で説明されると言うのが実際の計算に近い説明。 IQのバラつきが80~120の時は、遺伝的因子による変動は24程度。これがIQ100のうち60が遺伝と誤解され易い

2014-08-15 21:57:41

遺伝的変異とヒト集団間の能力の違い・遺伝子疾患

s_matashiro @glasscatfish

"素朴"な現代的意見「黒人の運動能力は素晴らしい。だから他の能力(知的能力)でも人種差があるのは当然ではないかね?」 この観点では「人種」集団と特定の祖先集団を同一視する誤りがある。また、ある地域集団の生育環境と遺伝要因も混同されている場合が多いし、これらの分離は容易ではない

2014-08-15 09:01:29
s_matashiro @glasscatfish

運動能力に関係する遺伝的変異の存在がいくつか知られている。αアクチニン-3、アンジオテンシン変換酵素などであるが、運動選手でこれらの遺伝子変異の頻度が一般の人々と異なるわけではない。今後、ヒト集団と関係した発見される可能性はゼロではないが、見つかってもその解釈は単純ではない。

2014-08-15 09:20:01
s_matashiro @glasscatfish

能力に関係する遺伝的変異とヒト集団の解釈は、社会や環境との関係が大きく困難であるが、ある種の遺伝的疾患の場合はより単純化した解釈が可能である。 嚢胞性線維症やハンチントン病、ティ・ザックス病など、特定の人集団での頻度が高い遺伝的変異も知られている。

2014-08-15 09:24:10
s_matashiro @glasscatfish

しかし、これらは「人種」の効果ではなく、ヒト集団での特定の下部集団で起こった遺伝的変異が伝わったものと解釈することがより妥当。特に、劣性遺伝形質の場合はヒト集団の交配に関する閉じられ方が遺伝的変異の伝わり方と発現に重要。ユダヤ人(アシュケナージ)でのティ・ザックス病に典型例。

2014-08-15 09:27:42
s_matashiro @glasscatfish

@glasscatfish タイポ訂正:ティ・サックス病

2014-08-15 09:30:14
s_matashiro @glasscatfish

「正しき者の世代」という組織は正統派ユダヤ教徒の集団検診を行い、全員が検査を受けるが結果は本人に非通知。集団内での結婚を考えた人物は遺伝子データから見て適切な結婚を組織に尋ねると返答を得るが分析結果はあくまで非公開。集団検診と出生前診断によりティ・サックス病はほぼなくなった。

2014-08-15 09:45:37

特定ヒト集団向け医薬品・バイディル

s_matashiro @glasscatfish

米でバイディルという「黒人」専用の心疾患治療薬が2000年代半ばにFDAに認可された。当局はマイノリティの健康問題に取り組むようにという政策があり、この新薬の登場にはNNACPも歓迎声明を出した。 しかし、この新薬は既存の治療薬を組み合わせて「黒人向け」として特許を取得したもの

2014-08-15 09:54:30
s_matashiro @glasscatfish

バイディルの成分はヒドララジン kegg.jp/medicus-bin/ja… と、硝酸イソソルビド kegg.jp/medicus-bin/ja… 共に血管拡張作用を作用機構とする古い医薬品。バイディルは一錠2ドルと比較的高価だが、この2つの医薬品を組み合わせても30セント未満。

2014-08-15 12:10:18
s_matashiro @glasscatfish

バイディルは「特定人種向け」の政策と広告効果を利用し、非本質的な特許(特定人種で有効とするが、その特異性の根拠には疑念がある)を高収益の為に利用している。 保険会社はこの新薬を処方するより既存薬2つの処方を勧めている。

2014-08-15 12:32:52
s_matashiro @glasscatfish

遺伝子検査ビジネスでも、「人種差」が実際の差より過度に強調される傾向がある。 我々がようやく抜け出しつつあった差別イデオロギーが商業目的の為に再び流布しかねない状況に至っていることに、著者(ベルトラン・ジョルダン)は驚いている。

2014-08-15 12:35:22
s_matashiro @glasscatfish

(アフリカ系の遺伝的変異の幅が、ヨーロッパ系に比較して大きいことを考慮すると、「黒人向け」の医薬品がワンドロップルールの裏返しのような形で提供されることは、矛盾が大きいと言わざるを得ない。)

2014-08-15 12:44:42
s_matashiro @glasscatfish

薬物の効果が遺伝的変異によって異なるという知見はあるし、特に抗鬱剤では代謝酵素の遺伝的変異が体内濃度や効果に影響する。 しかし、これらも「人種差」が影響しているという根拠はない。複雑な因子の組合せで起こる現象という可能性もあるが、現在、解析も解釈もそのレベルに至ってない。

2014-08-15 12:52:58

遺伝子検査ビジネスに関する最近の話題

A.Wada @senryoAIIT

Reading:DeNA 遺伝子検査サービス開始 NHKニュース nhk.jp/N4Eo5lfT ”▽遺伝子解析の質や判定する際の科学的な根拠がきちんと確保できているかや▽「究極の個人情報」とされる遺伝子に関する情報がきちんと保護されるのかといった課題”

2014-08-12 19:29:17
s_matashiro @glasscatfish

再投:28歳の健康な女性がDNAで病気のリスク診断をうたう会社3つに自分のDNAを検査してもらった経験談。数百ドルの検査では結果も説明もバラバラ。 現状で大人のDNA検査でリスクがはっきり分かるのは比較的稀な23の病気のみ。 nyti.ms/KgStcm

2014-08-12 19:39:11
s_matashiro @glasscatfish

@glasscatfish 結果が3社で一致しない大きな原因は、DNA配列決定の対象となる場所(SNP)が異なるため。また、リスクの表現方法(High, Medium, decreased など)もさらに混乱を起こしかねない。 特定タイプの乳がんと痴呆リスクが低いことだけは一致

2014-08-12 19:40:05