ウィアード・ワンダラー・アンド・ワイアード・ウィッチ #5

日本語版公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

集中豪雨めいた銃弾の中を死者は突き進んだ。バズソーを弾避けに使ったが、かなりの肉が抉り取られた。彼はまずヤクザ側の中央に飛び込んだ。『ならば見よ』SPLAT!SPLAT!死者が振り回す回転バズソーで、即座に十数人が死体に変わった。「「「アバーッ!」」」『私は蝗を解き放つ』 48

2014-08-26 00:22:25
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ギャングが混乱する間に、たちまち殺戮の嵐が吹き荒れた。回転バズソーは甲高い唸りを上げた。『そして見よ』ブラックハンドが飛び掛かり、心臓に向けてヤミ・ケン手刀を放った。ジェノサイドはそれを受けた。代わりに腕を掴み、敵の肩口に喰らいついた。『それは汝の地に育つ木を全て食い倒す』 49

2014-08-26 00:30:59
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ギャング団がサイバーサングラスを放り捨てた時、死者は既にヤクザの半数を殺し、ブラックハンドの首を噛み千切り、咀嚼していた。ドレッドノートがまとめて射殺すべく命令を下した。集中した銃弾が死者の胸を、腹を、あるいは頭を貫通した。ブラックハンドは射殺されたが、死者はなおも動いた。 50

2014-08-26 00:42:11
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

死者は叫び、バズソーを振り回しながら反対側のサルーン屋根へ大跳躍を打った。撃ち抜かれた彼の肉は、即座に再生された。『それは先の災いを逃れたものを喰らう』ギャング団は戦慄し、失禁し、逃げ惑い、あるいは赦しを請うた。だが彼は容赦なくバズソーを振るい、鎖の届く全てを肉片に変えた。 51

2014-08-26 00:49:09
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ストリートは血飛沫と臓物と切断された四肢で満たされ、地は見えなくなった。崩壊してゆく自軍を前に、いよいよドレッドノートが挑みかかった。両者は激しくカラテを打ち合い、彼はサイバネ義手で死者の牙を防いだ。だがついにはネクロカラテが勝り、回転バズソーが義手を、次いで脚を切断した。 52

2014-08-26 00:54:07
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

死者は彼を喰らい終えると、再び殺戮を始めた。いつしか腕は繋がり、死の嵐は強さを増していた。最後に残ったのは、恐怖に狂った赤毛のレッサーヤクザであった。それは老人を抱え、銃を突きつけ何事か叫んだ。ジェノサイドには何も聞こえなかった。彼はバズソーを投擲し、最後のヤクザを殺した。 53

2014-08-26 01:04:41
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

BLAM!ツルギ老人のこめかみに当てられていた銃は手首ごと切断され、回転しながら空を飛び、銃弾は鐘つき台の鐘に命中して鳴った。レッサーヤクザは首から噴水めいた血飛沫を上げ、老人とともに後ろに倒れた。 54

2014-08-26 01:12:34
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

弔鐘めいた鐘の音がストリートに響いた。敵の気配はもはや無し。ジェノサイドは近くのギャングの死体から二枚の布を引き剥がすと、その一枚をバンダナめいて巻き、己の目から下を覆い隠した。それからツルギ老人に歩み寄り、抱え上げ、彼の肩口の傷にもう一枚を強く巻いて止血した。 55

2014-08-26 01:20:10
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「旦那、どうなった」ツルギ老人は苦しげに問うた。ジェノサイドの顔は布に隠され見えなかった。空はいつのまにか黒い雨雲に覆われていた。「ブッ殺してやった」彼は吐き捨てるように言った。「ヤクザも、ギャングも、全員、ブッ殺してやった。命乞いする奴も、逃げる奴も、全員だ。ゼツメツだ」 56

2014-08-26 15:43:23
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

老人は何か言おうとしたが、言葉に詰まった。「……わかったろ、ロクなもんじゃねえのさ」ジェノサイドが言った。 57

2014-08-26 15:46:08
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ロービットマインは、解放を祝う声に満ちていた。爆破の恐怖に怯えていた採掘労働者らが、そして弟子たちの手でフートンごと抱えられたクラタ・メイジンが、ホリイに先導され出口へ向かった。彼女が歩むと地下の検問装置は自ずと開き、彼女が手をかざすと天井の自動操縦マシンガンは頭を垂れた。 59

2014-08-26 15:54:07
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

地上の有様を、ホリイは把握できていなかった。決闘場のカメラは破壊され、ネットワークも沈黙していたからだ。ギャングかヤクザが健在ならば、まだ戦いが待っている。ならば、ともがらを偽りの希望に導いているのかもしれない。だが彼女の表情は力強かった。疫病と死者の力を信じていたからだ。 60

2014-08-26 16:02:13
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ホリイは人々を連れ坑道を歩き、橋を渡った。再び黒いフードを被った彼女は、どこか近付き難く、恐ろしげなアトモスフィアを纏っていた。しかし近寄って仰ぎ見れば、何も変わらぬホリイの顔があった。「教えて」採掘労働者の少女が、両親の止めるのも聞かず、岩がちな道を走って彼女に近づいた。 61

2014-08-26 16:10:36
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「教える?何を」ホリイは歩みを止めず微笑みかけた。マグロめいていた少女の瞳にはいまや、坑道を照らすボンボリめいた灯りが宿っていた。「……妖術を」少女はその言葉が両親や神々の耳に届かぬよう、囁くように言った。「妖術ね」ホリイは小さく笑った。彼女は何を為すべきか見いだしていた。 62

2014-08-26 16:17:53
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「いずれ教えてあげるわ。貴女には力がある。いずれ、世界をも裏返すほどの力が。私もそれを、この街で学んだの」ホリイは言った。かつてクラタ・メイジンから授かった言葉の通りに。「ありがとう」少女はそれを聞くと驚き、世界の真理の一端に触れたような顔で、両親のもとへ走り戻っていった。 63

2014-08-26 16:21:19
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……ホリイ」フートンごと抱えられたメイジンが、彼女の横に近づいた。その目はもはや盲目に近く、衰えた体力はサイバネ手術も受け付けぬ。「……なぜ戻ってきたのか」「……センセイ、私の運命は、私が考えていたよりも遥かに強く、この街に接続されていました」ホリイは気丈に答えた。 64

2014-08-26 16:30:22
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……そうであったか」メイジンは白く長い髭を撫でた。「……ナカニ・ストリートが暗黒へ向かっていると悟った儂は、有能な弟子たちを全て外へと送り出し、連絡も絶った……」「わかっています」ホリイが頷いた。「ですが、外の世界も同じでした。探究心を持つ者は皆、隠れ住まねばなりません」 65

2014-08-26 16:37:13
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……そうであったか」メイジンは再び頷き、髭を撫でた。「……ここに残るか?」「センセイ、私が邪魔でなければ」「……邪魔なものか」メイジンは小さく笑い、それ以上はもう何も問わなかった。ホリイたちは坑道を出で、荒廃したギャングビルへと到達した。戦える者たちはトミーガンを取った。 66

2014-08-26 16:40:55
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

地上は重金属酸性雨が振り、血を洗い流し始めていた。「何もない街」というネオン看板がバチバチと鳴った。ホリイの両脇には銃を持った数名の男が控え、後方には襤褸布を纏う移民めいた一団が続いた。ホリイは遠い教会の十字架に祈った。(((神よ、死者と共に歩む事を祝福してくれますか))) 67

2014-08-26 16:48:21
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

そして一団は見た。ストリートの反対側から、老人を抱えてやってくる、異様なアトモスフィアの偉丈夫の影を。ぼろぼろのカソックコートにウエスタンハットの男を。その口元は黒布で覆われていた。ホリイは後続の男たちに待つよう言い、一人で雨の中を走り、ジェノサイドのもとへ駆け寄った。 68

2014-08-26 16:54:23
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……arrrgh……ホーリイ」ジェノサイドが歩き続けながら言った。雨に濡れたコートからは、おびただしい返り血が滴った。「気を失った爺さんを、サルーンに運ぶ。それが、この街でやる最後の仕事だ」「……最後の?」ホリイは狼狽した。これまで保ってきた気丈な表情が、見る間に崩れた。 69

2014-08-26 17:01:24
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ジェノサイドは答えなかった。「最後の?」ホリイはもう一度聞いた。「最後だ」彼は歩みを止めずに言った。「出て行くの?」「もっとクソみてえな場所の方が、俺にはお似合いだ」「サルーンが気に入ってたのなら、この街に留まったって」「いいか、俺の後には厄介な野郎が纏わりついて来るんだ」 70

2014-08-26 17:08:49