ロンゲスト・デイ・オブ・アマクダリ10100245:メニイ・オア・ワン #1

日本語版公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

コッ。コッ。コッ。コッ。コッ。武装ビークルのフロントガラスの雨粒を払うワイパーの規則的な動きがマシナリー・ビートを作り出す。濡れた路上にはネオン看板の蛍光色が滲み、会話の無い車内では、ノイズまじりのラジオ音声がBGMだ。 1

2014-08-29 22:17:24
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

スポイラーは助手席でダッシュボードに足を乗せ、ワイパーのBPMに合わせてクチャクチャとガムを噛んでいた。摘発品を署から適当に横領してきた違法物で、気付け効果もある。だが、こうまで単調で画一的なラジオ放送の流れるウシミツ・アワー。車内の光景に薄い夢と化した記憶が重なりあう……。2

2014-08-29 22:23:38
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

その記憶は真昼で、不快に暑く、雲は黄色かった。ドリフトするビークルのドアを蹴り開き、「49課だ!」スポイラーはデッドエンドと共にアスファルトの上に転がり降りた。その一連のアクションに伴い、バリケード前で見張っていた三人のヤクザの脳天と股間に鉛弾を二発ずつブチ込んで殺している。3

2014-08-29 22:33:45
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「お前らには黙秘権がある」スポイラーはデッカーガンをリロードしながら、虚空を見つめる死体に向かって言った。「つまり、そのまま黙って死んでろ」「こいつらも時間を選べッてンだよな。このクソ暑い中に」デッドエンドはスポイラーの背中をどやし、バリケードに銃を構えた。 4

2014-08-29 22:37:25
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「スッゾ!」バリケードの奥から別のヤクザが顔を出した。「横暴だぞ!訴えてや……」BLAMN!「アバーッ!」脳天が破砕し、奥に落ちた。デッドエンドは更に、腰からバクチク・グレネードを一束外し、放物線を描くように投擲した。KABOOOOM!「クリア」「クリア」スポイラーは頷いた。5

2014-08-29 22:41:57
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「「イヤーッ!」」二人は回転ジャンプで帯電バリケードを越え、問題テリトリー内に着地した。彼らはマッポニンジャ装束に身を包み、どちらも腕に赤腕章を装着している。マッポ……ニンジャ装束?然り。彼らはネオサイタマ市警49課に属するデッカーであるが、この装備は特別な事態のしるしだ。6

2014-08-29 22:48:10
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

デッドエンドは女、スポイラーは男。どちらもニンジャで、デッカーだ。デッカーがニンジャである必要が何故ある?犯人がニンジャであれば、当然、ニンジャをぶつける必要がある。それが49課、それが「N案件」。ニンジャにデッカーが務まるか?通常、務まらない。ゆえに49課のデッカーは外道だ。7

2014-08-29 22:54:57
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

たった今の爆発によりバリケード付近には四肢や肉片が散乱している。「バイオハゲタカのエサだな」女デッカーのデッドエンドが面白くもなさそうに言うと、「いるンすか?こんな都会に」スポイラーが尋ねた。デッドエンドは彼のふくらはぎを蹴った。「痛」「受け答えのポイントがズレてんだよ、お前」8

2014-08-29 22:57:12
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ニンジャになっても治らないですね」「ハナから期待してねえよ、坊主」「いやあ」スポイラーはふてぶてしく苦笑すると、砂利が敷き詰められた中庭を見渡した。無造作に点在するコンテナ。クレーン・アームからワイヤーが吊り下げられている。そこに血まみれの果実がなっている。「ああ。居た」9

2014-08-29 23:06:26
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「アー……」デッドエンドはガムを噛みながらタクティカル・ゴーグルをズームした。「虫の息だが、生きてるな」「生きてます」「居たッてのは、アレか?テメエ」デッドエンドは顔をしかめた。スポイラーは「違いますよ」と呟き、銃口を、吊るされた男のやや左下、コンテナ上に定めた。BLAM!10

2014-08-29 23:10:43
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「グワーッ!」バチバチと音が聴こえた。コンテナ上の空間に人型のノイズが生じ、そこに唐突にニンジャが出現した。左肩から白煙の筋。狙いすましたスポイラーの射撃によってステルス装束の隠密エフェクトが破られたのだ!BLAM!BLAM!BLAM!スポイラーは撃ちながら左へ展開! 11

2014-08-29 23:16:21
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

BLAMBLAMBLAMBLAMBLAM!デッドエンドは撃ちながら右へ展開!「イヤーッ!」ニンジャはコンテナ上から回転ジャンプして全ての銃弾を回避、砂利の上へ着地すると、流れるようにオジギを繰り出した。「ドーモ。ストールワームです」ワイヤーが切れ、吊られた男が落下した。 12

2014-08-29 23:23:13
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ドーモ。ストールワーム=サン。デッドエンドです」「スポイラーです」二人のデッカーニンジャはアイサツに応えた。オジギから頭を戻した瞬間、デッドエンドのデッカーガンが激しく火を噴いた。BBBBLAMNNNN!「イヤーッ!」ストールワームはブリッジ回避!「デッカーニンジャだと?」13

2014-08-29 23:27:35
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

BLAMBLAMBLAM!デッドエンドはスポイラーに銃撃を継続させながらリロードする。「イヤーッ!」ストールワームは更にバックフリップして銃弾を回避した。デッドエンドはようやく答えた。「ああ、デッカーニンジャだ。こちとらネオサイタマ市警の49課だ。そこの死体の監禁致死容疑」14

2014-08-29 23:30:12
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「まだ死んでないと思います」撃ちながらスポイラーが指摘した。デッドエンドは走り出す。「どうでもいい。イヤーッ!」瞬時に加速!ストールワームのワン・インチ距離に接近したデッドエンドは、脇腹に強烈なパンチを叩き込んだ。「グワーッ!」吹き飛ぶストールワームに追い打ち銃撃!BLAM!15

2014-08-29 23:36:27
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」ストールワームは空中でチョップを繰り出し、銃弾を指先で掴んで止めながら着地した。BLAMBLAM!スポイラーは援護射撃を続けながらサイドを取りに行く。「イヤーッ!」ストールワームの片腕が霞んだ。「グワーッ!」スポイラーの両腕付け根にクナイが突き刺さった。 16

2014-08-29 23:38:56
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「弱敵!死んでおれ」「ヤバイ……」スポイラーが呻いた。「……ヤバイところだった。この新型のアーマーの助けがなければ……」彼は両クナイを掴み、引き抜いた。無事である。マッポニンジャ装束の中に、鱗状の装甲を連ねたスーツアーマーを着込んでいたのだ。ストールワームが目を見開く。 17

2014-08-29 23:42:34
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」走りこんだデッドエンドの脇腹パンチが再び叩き込まれる。「グワーッ!」ストールワームは弾かれる。BLAM!追い打ち銃撃!ストールワームは銃弾を指先で挟んで止める!その手首から先が消滅!「グワーッ!?」「バカが」デッドエンドは別の銃を……大型マグナム銃を構えている!18

2014-08-29 23:44:37
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「全くお前はタマ無しのチキン野郎だな!」デッドエンドは罵った。ストールワームにではない。スポイラーにだ。アーマーの件である。「キアイと正義がありゃ必要ないンだ、そんなモンは」「イヤーッ!」ストールワームは無事な手からクナイを放とうとした。BLAM!デッドエンドが速い。 19

2014-08-29 23:49:28
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「グワーッ!」クナイ投擲腕側の肩が爆ぜた。ストールワームは次のカラテ手段を取ろうとしたが、デッドエンドの踏み込みは速かった。踏み込みながら彼女は右肘を上げた。そして、逆手に持ったフラッシュライトでストールワームの目を焼いた。「グワーッ!?」 20

2014-08-29 23:55:20
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」そのまま、フラッシュライトでストールワームの脳天を殴りつけた!「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」頭蓋骨破砕!痙攣しながら両膝をついたストールワームのこめかみにマグナム銃口を当てる!「お前には黙秘権が……」「サヨナラ!」 21

2014-08-30 00:00:51
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ストールワームの胸部起爆装置が光を放つ。デッドエンドは舌打ちして飛び下がった。ストールワームは爆発四散した。「ああ。容疑者を殺っちゃって」スポイラーが銃を下ろし近づく。デッドエンドは反論した。「自爆だ」「ウーン」スポイラーは曖昧に頷いた。「ま、ホネの無いニンジャです」「だろ」22

2014-08-30 00:06:48
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「さいわい、そこの被害者に息があります。キンボシですよ」スポイラーは吊られていた男のもとへ駆け寄り、心音と呼気を確認した。「嫌味か?」銃をホルスターに戻しながらデッドエンドも近づく。スポイラーは被害者を助け起こした。「アー。ネオサイタマ市警です。もう大丈夫だ」「アイエエエ」23

2014-08-30 00:11:51
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「お前は我々が保護する。安全は保証する。そのかわり取引相手のニンジャ組織について喋ってもらうぞ」「アイエエエ」男は震えていた。その時である。キュラキュラキュラ……無限軌道走行車両の走行音が耳に飛び込んできた。スポイラーとデッドエンドはそちらを見た。デッドエンドは顔をしかめた。24

2014-08-30 00:16:29
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

バリケードを乗り越え敷地内へ入ってきた無限軌道走行車両のハッチが開き、中から、もはや見慣れたオナタカミ社製の戦闘服姿の兵員がゾロゾロと降りてきた。背格好は皆同じ。尊大な仕草で最後に現れた隊長格だけは例外だ。彼は小柄で、頭髪を嫌味なバーコード状に撫で付けている。25

2014-08-30 00:23:03
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