FF6二次創作・鎮魂のアリアその3
- minarudhia
- 1283
- 0
- 0
- 0
「セリス!ま、待った!」 「ロック」 ようやくセリスに追いついたロック。 はぁはぁと息をつくロックに、セリスが心配になって尋ねた。
2014-09-04 22:03:50「どうしたのロック?まさかマッシュに何か…!?」 「お前、その、手紙…どこへ?」 「どこへって、サマサ村だけど」 「さ、サマサ?フィガロじゃなかったのか」
2014-09-04 22:05:36膝から崩れ落ちそうになるロック。 息せき切って走ったせいもあり、地面についた足が重く感じる。 セリスは再度聞いた。 「それよりロック、マッシュは大丈夫なの?」
2014-09-04 22:07:25「そ、そうだった。マッシュなんだがなんとかなったよ」 「…なんとか?」 「仮釈放。こっちが捜査に協力すれば大丈夫だという話だったんだ。な、マッシュ」 振り返るも、いるはずのマッシュがいないことにロックは慌てた。
2014-09-04 22:09:06「あ、あれ、マッシュ!?」 「一緒にいたの?」 「ああ。アウザーさんには先に帰ってくれって伝えてから一緒に追いかけたんだが」 言いながらなお周囲を見回すロックにセリスは少し思案した。
2014-09-04 22:11:00「…仕方ないわ。何事もないことを信じて先に帰っていましょう。これを伝書鳩に届けてもらった帰りにぶつかるかもしれないから大丈夫よ」 「そうだな」 二人はそのまま伝書鳩の元へと歩いて行った。 当の本人が道草を食っている事も知らず。
2014-09-04 22:14:07「―――――そうだったの」 日当たりのいい草地に腰を下ろし、トンボと名乗った女は申し訳なさそうに呟いた。 マッシュもその隣に腰を下ろし、天辺へ昇りかけた太陽を見上げた。
2014-09-04 22:16:06「もう通報されていたのね。そちらの方に気を回しておけばよかった」 「いや、それでもどうにかなったから気にするな。…それより、トンボ…だったな。トンボもオペラを観に来ていたのか?」
2014-09-04 22:17:37マッシュが尋ねるとトンボは少し首を横に振った。 その動きに合わせて黒髪も艶やかに揺れ、銀の目も日の光と前髪でできた影で不思議な色合いに陰った。
2014-09-04 22:17:43「いえ…“彼”を探していたの。彼がオペラに来ていないかどうか」 「一昨日俺とぶつかった時、人違いって言っていたな。俺がそんなにトンボの探していた人に似てたのか?どう考えてもオペラを観に来る人間じゃないだろ」 「ええ……彼も、あなたと同じモンク僧なの。私の友人なんだけど」
2014-09-04 22:22:56トンボはマッシュと眼を合わすことなく息をすうと吐く。 その様子はどこか寂しげで、悲しげな雰囲気だった。 ずっと探し人を求めて孤独に彷徨っていた……そんなふうに。 「でも、二年前に別れてから一度も顔を合わせていないの」
2014-09-04 22:25:08「そもそも、なんで別れたんだ?」 「彼は、この世界がどうなってるか観て回りたいと、言ったきりどこかへ行ってしまった。必ず帰ってくるからと。でも……それきり、戻ってこないの。最初は伝書鳩で手紙も届けてくれたのだけど、それも数ヶ月しないうちにぱったり、途絶えてしまったのよ」
2014-09-04 22:28:46トンボの言葉にマッシュはいたたまれぬ気持ちになった。 崩壊前のモブリズで会った、傷を負ったマランダの兵士の事を思い出したのだ。 そしてその兵士と遠く離れたマランダで文通を交わしていた恋人の女性の事も。 (おそらく、トンボの探し人は、もう……)
2014-09-04 22:31:39世界が崩壊した後の彼らはもう互いに会うことが叶わない。 それを知っていたからこそ彼女の事を思ったマッシュは。 そっとその肩に手を置くと、身体が小刻みに反応した。 「…今、悪いことを考えているようかもしれない。しれない、が」
2014-09-04 22:33:24自分なりに言葉を紡ぎだす。 でも、彼女はそれでもわずかな希望を抱いて探している。 それを冷たく否定することは彼にはできなかった。 …かつて離れ離れになった仲間が生きていることを信じて、世界が崩壊し、絶望が蔓延していた一年間の間探し続けた自分がいたのだから。
2014-09-04 22:36:02「……生きていることがわかるまで、絶対に諦めるな。きっと彼は生きてるさ、きっとな」 「ええ…。私も、それを信じてる。もし探すことができたら…伝えたいこともあるから」 「え?」 「……あ。あまり長く居つかせてしまうわ」
2014-09-04 22:39:42日の傾きを見てトンボはマッシュとやっと顔を合わせた。 とたんに、顔を赤らめてうつむいてしまう。 「…ど、どうした?」 「い、いえ…なんでも…ないの」 首を傾げるマッシュの前でトンボが腰を上げた。
2014-09-04 22:41:20「ごめんなさい、引き止めておいて。あなたの無実を証明する捜査、私もお手伝いしたいわ」 「いいのか?でも直接巻き込まれたわけじゃあるまいに、そんなに気を回すことないだろう」 「いいえ!ジドールまで案内したのは私よ!それに、あの男が殺されたのを見ていたのはあなた達だけじゃない」
2014-09-04 22:43:08「じゃあ…どうせなら一緒に来るか?」 そうマッシュは聞いた。 色々と気になる点はあるが、協力を無碍にはできない。 思って尋ねたことだったが、彼女は首を横に振ったのだった。
2014-09-04 22:44:54