趣味創作まとめ1

ツイッター作品その1「幻想図書館」
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星海黒乃 @necomeitei

【26】「一ページの兵士達」マリアは本は開かず片手に持ったまま説明する。名前は明記されず、その場の雰囲気のために台詞だけはある兵士。一ページであろうとも彼らの存在は偉大。本当に彼らは一ページで終わるべき存在なのだろうか?

2014-08-01 12:40:02
星海黒乃 @necomeitei

【27】「当然完結した物語ならそれだけの役目。この中に居るのは死んだ物語の兵士」(居る…?)マリアの言い方に違和感があった。まるでそこに存在しているかのように。「一日時間をあげる。この本を読んで、明日この兵士に命をいれてあげて」マリアの言っていることがいまいち解らない。

2014-08-01 12:49:51
星海黒乃 @necomeitei

【28】「あなたも自分の子に思い入れがあるのなら越えられる…余計なことを言ったわ」そう言ってマリアから本を受け取る。表紙は茶色一色でタイトルもなにも書かれていなかった。「最初の暖炉の部屋、そこで寝泊まりするといいわ」再び歩き出すマリア。感じた疑問はついに聞くことは出来なかった。

2014-08-04 12:42:42
星海黒乃 @necomeitei

【29】暖炉の前に座り、まだ開いていない本を見つめる。一ページの兵士達、この本を読み中に居る兵士に命を吹き込む。本の登場人物に命。単純に考えれば導かれる解は…文字を書くこと。それだけしか今は思い浮かばない。

2014-08-04 12:53:10
星海黒乃 @necomeitei

【30】とりあえず本を開いてみる。表紙はなかったが、普通の文庫本と同じだろうと思う一ページ目には『兵士』と書かれた兵士の紹介が載っていた。『あなたが生み出す兵士。数で勝る強大な相手にどう立ち向かうのか?』どうやらお題はあるようだ。次のページを捲ると、そこには目次が並んでいた。

2014-08-05 12:45:03
星海黒乃 @necomeitei

【31】目次の数字は一頁に一つと細かく、タイトルは人の名前のようだった。一枚捲り話を読んでみる。次のページには別の名前が入っており、マリアが言った通り一頁で終わる話のようだ。

2014-08-06 12:44:36
星海黒乃 @necomeitei

【32】それからしばらく他人の作品を読んでいた。他の兵士に混ざって奮闘していたり、敵を際立たせるためのやられ役だったり、生死がわからないままフェードアウトしていたり。マリアの言う命が無いものばかりで、ほとんどの兵士が背景と化していた。

2014-08-08 12:39:03
星海黒乃 @necomeitei

【33】そういえば無くなった作品の中に、最初はただの志願兵だったのがその強い精神と並外れた努力で成長していく人物がいた。確か初めての戦いで命を落としそうになったときに…思い出そうとすると、無意識のうちに形見の万年筆を握り締めていた。

2014-08-11 12:50:53
星海黒乃 @necomeitei

【34】幻想図書館にまた一人やってきた。連れ込んだのは私だけど、見つけてしまったのだから仕方がない。今度のも作家だが、口が利けない初めて見るタイプの男だ。同時に初めて自分に向けられる文字も。書いてくれた紙をじっと眺める。自分と対話する文字。

2014-08-12 12:36:59
星海黒乃 @necomeitei

【35】本以外の文章は久しぶりだ。最後に見たのはいつだっただろう。「でも」誰にも本は渡さない。それが自分が存在するために課せられた唯一の契約だから。今回のあの人はどこまで生き残れるだろうか?

2014-08-18 12:37:55
星海黒乃 @necomeitei

【36】私の方もそろそろ仕上げに入ろう。今回は血を流さなくていいハッピーエンドだ。結末に至るまで苦難を創りすぎてしまったかもしれないけど、ようやく完成する。さあ、マリア。これが貴女の生きる物語よ―――

2014-08-19 12:35:08
星海黒乃 @necomeitei

【37】自分よりはるか前にいる仲間達の姿が消えていく。実際に消えているわけではないが、人がひしめき合う中で急に倒れれば消えたように見えるのだ。やがてそんな錯覚も見えなくなり、ついに自分の目の前の兵士が倒れた。

2014-08-21 12:37:40
星海黒乃 @necomeitei

【38】(何が…起こっている…?)流雅の目の前で一方的な殺戮が行われている。一人の大きな戦士に次々と薙ぎ倒される兵士。その血を吸った剣は、流雅が書いた兵士に向けられた。そう、一ページの兵士達に書いた文章がそのまま目の前で再現されているのだ。

2014-08-22 12:43:13
星海黒乃 @necomeitei

【39】血と汗、鉄や火の臭いがどこからか漂ってくる。頬を撫でる風もどこか生暖かい。再現というには現実味を帯びすぎていた。(この本が…?それとも…)手に握られている万年筆を見つめる。過去にこれで文章を書いたことはなかった。

2014-08-22 12:49:25
星海黒乃 @necomeitei

【40】それ以前にインクが入っていた覚えはなく、書けるはずがないのだが。改めて二人の方を見る。戦士は剣を突き付けたまま動かず、兵士もまた剣を構えたまま動かなかった。自分の書いた筋書き通りだが、ここまでの動きは書いてはいない。実際に動くとなんとやら、と言うやつだろうか。

2014-08-25 12:33:25
星海黒乃 @necomeitei

【41】止まっているという事は続きを書かないとダメなのだろうか。(命を吹き込む…)マリアが言っていたのはこれの例えだったのだろうか。明日と言われていたがどうも好奇心が抑えられない。自分で書くにも関わらず続きが見たい。流雅は衝動に任せて筆を走らせた。

2014-08-25 12:44:13
星海黒乃 @necomeitei

【42】どうやら書いた内容はすぐには反映されず、ある程度書くか、流れを埋める動作が書かれてないときに動き出すようだ。最早一ページでは終わらずに次のページに入り込む。だが次の一合で兵士が逆転勝ちする、はずだった。

2014-08-26 12:39:13
星海黒乃 @necomeitei

【43】(っ…!)万年筆を持つ手がビリッと痛む。そしてトドメを刺されるはずの戦士が兵士の一振りを弾いた。「己が道を自ら示せ!」戦士が口を開く。台詞なんて書いてはいない。「ウオォォアァァァァ!!」さらに戦士は雄叫びと共に剣を振り上げ、力任せに地面に叩き付けた。

2014-08-26 12:46:36
星海黒乃 @necomeitei

【44】発生した衝撃波で兵士はもちろん、流雅にまで干渉して吹き飛ばされた。少し咳き込みながらも身体を起こすと、いつの間にか側にマリアがいた。「いったい…どうやったの?」長い前髪から覗く目は驚いているようだった。

2014-08-28 12:38:49
星海黒乃 @necomeitei

【45】すぐさま返事をしようと、メモ帳を取りだし万年筆で書こうとするが、ガリガリとインクが出てこず文字にならなかった。「その万年筆…今はいいわ。それよりも本を見て」マリアの指示で本を見ると、先ほど戦士が起こした行動、言葉が書き起こされていた。当然、流雅が書いたものではない。

2014-08-28 12:45:24
星海黒乃 @necomeitei

【46】マリアは流雅が先に書いた部分を読む。「この戦士は抵抗している。物語を変える力を持つ者は書き手に反抗する。それが尚更、死であれば」つまりこの戦士は思い通りに動かず、このままでは話が進まないということだ。「あの兵士が負ければ、次はあなたに刃が向けられるわ」

2014-08-29 12:52:08
星海黒乃 @necomeitei

【47】戦士は兵士に何度も剣を振り下ろす。一撃で仕留める力を持っているにも関わらず、わざと受けさせて弄んでいるのだ。その様子も勝手に本に書かれていく。「一応テストだから助言はここまで…自分の子を信じて」

2014-09-01 12:46:04
星海黒乃 @necomeitei

【48】ボソッと聴こえた最後の言葉。テストの説明の時も似たような事を言っていた。マリアは話ではなく、あなたの子、とばかりこぼしている。流雅は万年筆を本に当てて文字を書いた。「なに…!?」突然戦士の剣が弾かれてバランスを崩す。思わぬ攻撃を出した兵士がふらつきながらも剣を構え直した。

2014-09-02 12:40:41
星海黒乃 @necomeitei

【49】「俺は…訪れるその時まで倒れるわけにはいかない」その台詞に流雅の筆が止まる。相手の剣を弾く行動は書いたが、そこから先はまだ書いてはいない。「名のある戦士よ、俺の名を刻みその歯車となれ!」(これは…まさか)視線を兵士に移すと、兵士もこちらを見ていた。

2014-09-05 12:40:25
星海黒乃 @necomeitei

【50】流雅はその視線を受けて再び筆を走らせる。「俺の名前はレオン!ただ一人、鳳流雅様に仕える騎士だ!」そう言い放ち戦士に斬りかかる。戦士は何の抵抗もなく剣を受けた。「…見事…貴様の道、確かに聞き届けた…」戦士の姿が霞み、そこから黒い霧のようなものが浮かび上がる。

2014-09-08 12:52:45