五大聖戦:第一戦闘フェイズ【第五の扉】

──激突するは光耀と瞑漠。
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冥煌の者ルスシェスィア @Five_Reuswiccia

扉を抜けた——そう思ったのは、足元の感触が変わったからだった。 それでも、景色が見えない事には、変わりない。闇は足場を必要としないから、あるいは今立っているそこが、大地なのか、あるいは海なのか、空なのか、そのいずれでもないのかも、わからない。 ひらりと、手を伸ばす。

2014-10-27 22:04:40
冥煌の者ルスシェスィア @Five_Reuswiccia

付き従った蛇が、ざらりと音を立てて崩れ、闇に戻って手首に絡み付く。黒いサテンのリボン。見えもしないそれにゆらりと笑んで、歩き出す。 「——さあ、どちらにゆけば、お会い出来ますでしょうか……?」 ゆらゆらと、どことも知れず、進んで行く。

2014-10-27 22:06:49
ルクス @light_Shino

光の先は、光であった。 白い草。扉を抜けた人竜はまずそれを視界に映す。 風を受けて、やんわりと揺らめく草原。降雪の後と見紛うばかりの光景である。 ただ、人竜はあまり情緒を解さない竜であった。その為、一面の絵画にどかどかと足を踏み入れ、葉を折って汚すのに何の躊躇もなかった。

2014-10-28 00:15:26
ルクス @light_Shino

顔を上げ、太陽を見る。 白い。 足で土を削り掬った。 黒い。 影が濃いのではない。土はただ黒々としてそこにあった。 「他の色が……ない?」 気になって己を見れば、自慢の甲殻は常の金色であった。 どうやら、こういう世界らしい。

2014-10-28 00:23:16
ルクス @light_Shino

人竜の他にも色を持つ者が1人いた。 「魔王か」 光耀の勇者は誰何した後、続けて宣言した。 「俺が勇者だ」

2014-10-28 00:29:23
冥煌の者ルスシェスィア @Five_Reuswiccia

声が聴こえて、足を止めた。ふら、と揺れる身体をそのまま、緩く伸ばしていた腕を引き戻す。 「ええ、冥漠の魔王、ルスシェスィアと申します」 右手を胸元、左手でドレスを持ち上げ一礼する。顔を上げればまたふらりと揺らぐ感触。 「わたくしの前に在る勇者、あなたの司るものを、お訊きしても?」

2014-10-28 17:14:43
冥煌の者ルスシェスィア @Five_Reuswiccia

ふらりふらりと揺れながら、問い返す。声の聴こえた方向へ。目は見えなくとも、音が聞こえればそれで十分。

2014-10-28 17:14:45
ルクス @light_Shino

「名乗り忘れたのは失敬だったな、冥漠の。俺は光耀の勇者だ。つまり、貴様と俺とは、対ということになるのか」 勇者は正面を見た。魔王をはっきりと見た。 「一時の間だが、よろしく頼むぞ」 人竜は笑う。笑いながら、のしのしと魔王へと歩み寄る。境界が、近付く。

2014-10-28 21:31:32
冥煌の者ルスシェスィア @Five_Reuswiccia

「ええ、こちらこそ、宜しくお願い致しますわ、光輝の勇者。対の勇者」 ゆらゆら揺れながら、近づいてくる声に顔を上げる。随分と高いところから、聞こえるような。 「……あなたは、どのような姿をしていらっしゃるのでしょうか」 音が人とは違う。気付いてなんとなく、問いかけた。

2014-10-29 12:55:57
ルクス @light_Shino

「ああ、目が見えんのか。気が付かんで、すまんな」 何だか人竜は魔王に謝ってばかりだ。少し不思議に思いつつ、人竜はゆらゆらと揺れる彼女の問に、ふんぞり返って答えた。 「よし、特別に教えてやろう。俺は竜だ。それも、めちゃくちゃ格好良い。――見れんで、残念だったな?」 左腕を引く。

2014-10-29 15:05:23
ルクス @light_Shino

左腕が奔る。狙いは真っ直ぐ魔王へ。ストレート。正直な拳が魔王を襲う。

2014-10-29 15:11:44
冥煌の者ルスシェスィア @Five_Reuswiccia

「あら……」 竜、と、そう呟く声は颶風に紛れて消える。 衝撃は——無い。冥漠の身体にも、光輝の拳にも。ふふ、と、笑う声。人竜の背後。 「あなたも光であるならば、闇に触れる事など出来ぬのだと、既にご存知かと思いました」 ゆらりと揺れる。 「今世の光は、野蛮、でございますね」

2014-10-29 17:49:18
ルクス @light_Shino

「野蛮は格好悪いな。できれば豪快と言ってくれ!」 振り向きざまの裏拳。まあ、恐らく当たらないだろう。 「見えていないのにひょいひょい躱すなあ! 心眼か何かかぁ!?」 よって次の手。一拍置いて尾を振り、魔王を打ち据えんと欲っす。

2014-10-29 19:29:08
冥煌の者ルスシェスィア @Five_Reuswiccia

「では、予告無く、そうやって、」 後ろへと数歩。風が駆け抜けて行く。 「耳が潰れそうな程、大きな声で、」 何かが迫る。衝撃は無く、薙がれたそれは『突き抜けた』。 「大きな身体を振り回すのは、野蛮、の他には、何と言うのでしょう?」 ざらりと崩れた身体は宙に織り成す闇の色をしている。

2014-10-29 20:57:45
冥煌の者ルスシェスィア @Five_Reuswiccia

一度触れ、遠ざかる『竜』の身体の一部にも同じ色。崩れた身体は元通りに形を結ぶ。 だが手首のリボンだけ、消えていた。白い腕を『竜』へと伸ばす。 「力を振るうだけでは、疲れるでしょう、光の竜。身体が重く、揺るとして——だから、『お眠りなさい』」 誘う声を、向ける。

2014-10-29 20:57:46
冥煌の者ルスシェスィア @Five_Reuswiccia

「冥漠は、暗く、深く、須く全ての命に、ただ眼を鎖し眠り続けるだけの安寧を」 光が触れた闇は、まるで毒のように暖かな眠りへと手招くだろう。 「『お眠りなさい』、光の竜」

2014-10-29 20:57:47
ルクス @light_Shino

突然、瞼がずしりと重くなった。 「これが冥漠か……眠りの、ちから」 魔王の「誘い」が耳に気持ちが良い。乗ってしまおうか、単純な人竜はそう考えた。 「それは、嫌、だな」 思考を言葉で打ち消す。前へ、一歩。 きっと、瞼の裏の闇は優しいだろう。そこには誰もが望む安らぎがあるのだから。

2014-10-30 00:35:11
ルクス @light_Shino

だが、 「俺は、生きていたいのだ」 眠りとは、死そのものだ。眼の奥に、何も映さぬということだ。 「眠る(死ぬ)のは、嫌だ」 力が入らないなら、いくらか前のめりが丁度良い。少し身体を重力に任せて、さあ行こう。 顔を上げる。 冥漠の魔王を、しっかりと見る。 「行くぞ」 正面突撃だ。

2014-10-30 00:53:02
ルクス @light_Shino

――愚直、そう形容するに相応しい。 人竜は、一直線に己の身を魔王へぶつけに行く。小細工など無い。人竜はあまり脳みそが賢くない。 ただ、何となく、本当に何となくそうするのが一番良い気がしたのだ。 「俺の光を受けるが良い!」 冥漠の魔王へ、光耀の勇者は肩からぶちかました。

2014-10-30 01:08:57
冥煌の者ルスシェスィア @Five_Reuswiccia

「恐れる者には、恐ろしくも映りましょう」 正面から来る音。避けようとは、思わない。触れなければ意味が無い、——触れさえすれば、『真夜』は宿る。 「生を賛美し、死を忌避する者には、暗くも感じましょう」 音が近付く。避けはしない。 ゆらりと揺らぐ身体を動かそうともせず、笑った。

2014-10-30 10:31:23
冥煌の者ルスシェスィア @Five_Reuswiccia

「——そうしてやはり、生を唱える『光』は、私に『夜』を与え、眠らせてはくれないのですね」 痛みの無い衝撃。身体が霧散する感触。同時にその幾つかを触れた『光』に宿らせる。触れれば同時に灼かれるような。——だが、姿を紡げない程では、無い。 「『お眠りなさい』」

2014-10-30 10:31:25
冥煌の者ルスシェスィア @Five_Reuswiccia

唱えた声は僅かに高くなっている。肩にかかっていたローブの感触が失せている。その分の闇を、『光』は背負っただろうか。見えない視界に笑う。 「『お眠りなさい』、光の竜。『真夜』の眠りは、死ではない、安堵と安寧の安らぎです。『お眠りなさい』」 繰り返し、唱える。言葉は、必要ないけれど。

2014-10-30 10:31:26
冥煌の者ルスシェスィア @Five_Reuswiccia

唱えながら、ぼんやりと考える。考えるのは好きではないけれど。 ——あと何度、この『光』に灼かれながら、『真夜』を与える事ができるだろう。痛みなどとうの昔に失せたから、恐れの無いよう、笑っていられるけれど。

2014-10-30 10:34:07
ルクス @light_Shino

「闇は、暗くないのか」 三度、四度、繰り返し。 魔王の「闇」に触れる度、竜の金は黒を帯びていく。光と闇が混ざっていく。 「俺は、真白い光の中だ」 竜は名が無い。 「眩しくって、何も見えんのだ」 竜は生まれながらにして、「光耀の勇者」であった。 他に、何持たなかった。

2014-10-30 12:23:17
ルクス @light_Shino

栄誉の光の中で、竜は自問して生きてきた。 「俺は何者なのだろうか」 家族は居なかった。山の上でぴいと鳴いた時に、抱き締める者は居らず。 「闇に問えば、分かるのか」 今まで百と七つ、生きてきたが、己を識るものは誰も知らず。 「お前から俺はどう見える」 瞳は魔王を見続ける。

2014-10-30 12:37:04