五大聖戦:第一戦闘フェイズ【第五の扉】

──激突するは光耀と瞑漠。
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ルクス @light_Shino

光から遠い闇こそ、光は良く見えるかもしれない。 人竜も知らぬうちに、人竜の足は止まっていた。

2014-10-30 12:40:07
冥煌の者ルスシェスィア @Five_Reuswiccia

「闇は、安らぐものです」 問いには、すぐに声を返す。五度六度、触れるたびに、ドレスのドレープは減り、冥漠の身体は次第に少女のそれへと変化していく。 ゆらと揺れるのだけは、変わらない。 「求める者は、与えられましょう。拒否する者には、何もない夜を授けましょう」 ゆらり、揺らぐ。

2014-10-30 21:29:25
冥煌の者ルスシェスィア @Five_Reuswiccia

幼い声で、言う。 「真白い竜。光の中の……光は闇でしか、形を得られず、闇もまた、光でしか、そうと知る事の出来ない、もの」 冥漠は何も見る事が出来ない。名は自分で付けた、だが同じく闇に住む者も知らないまま、自身の身体が斑に白に染まっている事も、わからない。 「わたくしには、」

2014-10-30 21:29:26
冥煌の者ルスシェスィア @Five_Reuswiccia

「竜。光の竜。わたくしには、あなたを『見る』事は、出来ません。ただ、あなたに触れ、『視る』ことは、出来ましょう」 手を伸ばす。両腕を伸ばす。迎え入れる事を、示すように。 「竜、光の竜。照らす事は出来ても、照らされる事のないひとつ。勇と剛を持ち……ただそれだけの、孤高のひとつ」

2014-10-30 21:29:30
冥煌の者ルスシェスィア @Five_Reuswiccia

冥漠は記憶出来ない。冥漠は眠る事眠らせる事しかできない。『真夜』の天涯を、与える事しか出来ない。冥漠は闇以外に何も持たない。 「——『両極(ひとりきり)』は、寂しいものです」 それが答えだった。

2014-10-30 21:29:33
ルクス @light_Shino

「俺も、独りぼっちは少し、寂しいのだ」 ぽつりと呟いて、竜は歩き出した。もう、相手を引き潰さんとする勢いは無い。ふらふらと、光は闇の元へ。 「ルスシェスィア」 呼び掛ける。 「俺に、名をくれるか」 ――安らぎをくれるか。

2014-10-31 01:14:54
冥煌の者ルスシェスィア @Five_Reuswiccia

「……ええ」 冥漠の身体は揺らとと揺らぐ。それでも伸ばした両腕も、開かれた両手も変わらない。 「ルクス」 呼び掛ける。 「貴方に、名を与えましょう」 ——光を宿した闇が触れる。

2014-10-31 09:39:47
ルクス @light_Shino

――闇を湛えた光が受け止める。 「ああ」 人竜は、ルクスは、己が何者であるかを理解した。 ルクスはただ「光耀の勇者」であった。女神の威光、彼女の正義の体現者であった。それ故ルクスの放つ光は、ルクス自身のものではなく、 「自ら光を発さず、日を返し、輝く鏡が『光耀の勇者』なのだな」

2014-11-01 00:15:06
ルクス @light_Shino

ルクスは力尽き、どう、と大地に伏した。目は虚ろで、もう瞼が半分ほど下りている。 「……ありがとう。地に足がついた、そんな心地だ」 黄金の身体が急速に色を変え始めた。闇色の部分はそのままに、金色が赤く、赤く燃えていく。 これが、ルクス本来の色。 女神の光に隠れていた竜の光だ。

2014-11-01 00:42:20
冥煌の者ルスシェスィア @Five_Reuswiccia

「……そう、では、」 触れた『竜』が、『ルクス』が、下へと落ちて行く。 「お寝みなさい、ルクス。揺ると、暖かく、安らぐ『真夜(ねむり)』を、わたくしは貴方へ、贈りましょう」 竜の姿は、冥漠には見えもしない。だが『解る』。光が、変わって行く。『両極(もうひとつ)』が、変わって行く。

2014-11-01 01:01:46
ルクス @light_Shino

「ルスシェスィア」 ルクスは眠たげな声で、闇色の乙女を呼んだ。 「お前は、行くのだ。俺はこれから、ずうっと、お前を見続けることにする。瞼の裏の、闇(ルスシェスィア)を。女神の光でなく、俺の光(ルクス)で、照らし続ける」 光は、闇の隣に常にあるのならば、 「俺もまた、お前の隣に」

2014-11-01 01:04:30
冥煌の者ルスシェスィア @Five_Reuswiccia

——『娘』は、ただ、笑んだ。 「……お眠りなさい、ルクス。『冥漠』は、ルクス、貴方を、受け入れましょう……?」 膝を突く。手を伸ばし、掌を滑らせる。 「……お眠りなさい、独りだった貴方」 冥漠の身体は痛覚を覚えない、闇は炎で焼かれる事はない。闇はただ、笑む。 「わたくしと、共に」

2014-11-01 01:07:06
ルクス @light_Shino

「うん……いつか、いつか、おまえも、ねむれるといいなあ、るすしぇすぃあ」 ルクスは瞼を閉じる。闇が降りてくる。 「ああ」 ルクスは、笑った。 「ひかりがみえる」

2014-11-01 01:11:57
冥煌の者ルスシェスィア @Five_Reuswiccia

撫でる手は止まらない。揺らと揺れる身体はそのまま、『娘』は笑う。——笑っていると、『娘』は思っていた。 「……お眠りなさい、……わたくしも、すぐに、眠りましょう、ルクス。全てが、静まれば……」 手は止めない。ゆるりと、動かしたまま、微かに震える吐息を吐き出した。

2014-11-01 01:22:56
冥煌の者ルスシェスィア @Five_Reuswiccia

「……お眠りなさい……わたくしに、『真夜』を、願ってくれた、貴方」 勇者とは、そうなのだろうか。純か、直か、あるいは愚かさ故なのか。 ——魔王の願いの成就をと、言うなどと。 「……おやすみなさい。ルクス」

2014-11-01 01:22:56