五大聖戦:第一交流フェイズ【邪なる矛】

──集いしは五の魔王。
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冥煌の者ルスシェスィア @Five_Reuswiccia

——ひらり、繊手が闇に閃いた。空気を手繰るように、指先が泳ぐ。 「——……」 吐息に似せた声を零して、踏み出した足、靴が石畳と出会う音。 「——……ああ、そう、そう……ああ、でも、」 心得たと言わんばかりの頷く声を落とす。間も開けずに次は疑念。 「皆は、何処でしょうか……?」

2014-10-21 22:42:27
名もなき魔術師 @Luca_w_de

日の光は地上に降り注いでいる。太陽に近いはずの城の中は、薄暗い。 その薄暗い廊下を、太陽ではなくランプが妖しく光を零す廊下に、かつん、かつんと靴音が響く。 《ねェ、お姉様》 呼びかけたのは幼い少女の声。期待に弾んだその声に、応える者はいない。 《これから、人間のところに行くの?》

2014-10-21 22:44:54
名もなき魔術師 @Luca_w_de

――えぇ、そうよ。 答える。少女の声を聴く者は、応え得る者は、私しかいない。 《本当? 楽しみだわ。ねぇ、お姉様は人間のところで――》 ――ごめんなさい、後でお話しましょう。 少女の声を遮り、顔を上げる。薄暗い廊下を抜け、豪華な調度品が並ぶ客間に足を踏み入れた。

2014-10-21 22:45:06
名もなき魔術師 @Luca_w_de

すぅ、と呼吸。気を引き締める。 此処は魔王と呼ばれる者達の集う場であり、私もその名を冠する身。そして―― 視界の奥。五つの扉が、言葉にし難い厳かな空気を纏って其処に在る。 其の扉が重く感じられるのは、装飾のせいではない。 この扉の向こうを思えば、無礼も、失敗も、許されない。

2014-10-21 22:45:16
冥煌の者ルスシェスィア @Five_Reuswiccia

伸ばした白い両腕が空中に泳ぐ。肩が引かれるようなのは、羽織った天鵞絨のローブの裾が長く長く引き摺られているからだ。左右に向けた指先、だが何にも触れることは無い。 女は、真黒の布で視界を封じられた白い貌を、ゆるりと傾けた。 手を伸ばす。そのまま、よろめいて歩き出す。

2014-10-21 22:45:30
名もなき魔術師 @Luca_w_de

「――お手を……」 よろよろと歩を進める黒髪の少女に、右手を差し出す。 顔を覗き込み、相手の視界が暗いことを察してほんの少し躊躇うも、差し出した手はそのままに。

2014-10-21 22:51:52
冥煌の者ルスシェスィア @Five_Reuswiccia

一つ声が聞こえて、顔を向けた。手を伸ばす、足を踏み出す。彷徨わせた指先が掠めて、握る。柔らかい暖かいもの。どうやら手のようだと解って安堵した。導にするように、その手を目標に歩を進める。 黒い女は、声の方向に向かって、笑みを浮かべた。 「声を、お聴かせ願えませんか。優しいあなた」

2014-10-21 22:59:13
名もなき魔術師 @Luca_w_de

少女の小さなぬくもりが右手に添えられて、不安そうな指先が導を見つけたそれに変わる。その様に私も安堵した。 少女の足取りに合わせ、ゆっくり、ゆっくりと歩を進める。

2014-10-21 23:13:07
名もなき魔術師 @Luca_w_de

「わたくしは、徒波の魔王。ルーサルカと申します」 頭の中では、私の《少女たち》が騒いでいる。どうやら私が他人に触れることが気に入らないらしい。 「貴女の、御名前は……?」 構わず、黒い少女に尋ねる。

2014-10-21 23:13:21
冥煌の者ルスシェスィア @Five_Reuswiccia

「あだなみ、徒波。ルーサルカ、ですね。有難う、優しいルーサルカ」 声の距離が近い事に殊更安堵して、そこで足を止める。向かい合っている、のだろうか。声は此方に向いているように感じた。 「わたくしは、冥漠。冥漠のルスシェスィア。お好きなようにお呼び下さいませ」 ふわり。また笑む。

2014-10-21 23:18:24
冥煌の者ルスシェスィア @Five_Reuswiccia

「そして、ごめんなさい、ルーサルカ。わたくしと貴女は、初めましてでよろしかったでしょうか」 眼を隠した黒い布、その上の眉が困ったように下げられる。 「ずっとずうっと、ただ揺蕩うばかりで、憶えていることも曖昧なのです。皆、魔王の皆がいることは、憶えておりますが」

2014-10-21 23:21:11
【八衢の魔王】トレィク @m_earth_5hw

ず―――と、いう。重い音が鳴っただろうか。魔王の陣営の拠点の、隅。そこに、小さく少年が膝を立てて三角座りしている。 「…………」 徒波、それと冥漠をじいっと見ている。ただ、見ているだけ。

2014-10-21 23:24:17
【赫焉の魔王】セティオ @Cettio_FHW

男は陰気な表情を外套の中に隠したまま、微かに顔を上げた。広間。大柄な体躯を椅子に収めるように縮こまらせながら腰かけて、他の魔の者を待っている。 「――遅い」 別段、長いことそこで待っているわけでもなく。だが吐息めいた囁きを漏らした。 「遅い。忌むべき者はすぐそこだというに」

2014-10-21 23:29:51
名もなき魔術師 @Luca_w_de

「瞑漠……ルスシェスィア」 少女の名を口の中で転がした。柔らかく笑う、少女。 そっと手を引いて、椅子の元へと。 「どうぞ、お座りなさい」 小さな手を縁に触れさせながら、想う。 この少女も、魔王と呼ばれているのだと。 「……いえ。私の他にも魔王がいるとは、聞いていたのだけれど」

2014-10-21 23:32:43
名もなき魔術師 @Luca_w_de

「随分、騒がしくなったことね」 目を向けると、いつの間にやら二つの人影。 部屋の隅に蹲ってこちらに視線を投げかける少年と、不機嫌そうな大柄の男。 どちらも、魔王の名を冠する者たちだろう。

2014-10-21 23:36:37
冥煌の者ルスシェスィア @Five_Reuswiccia

そう、と小さく声を零す。手を引いてくれるそれには抵抗する事なく、従って触れたそこに腰掛けた。ただ立っているだけでもふらふらと眩しかったから、有り難かった。 声の向きが変わった事には、首を傾けた。 「誰か、いらっしゃるのですか? ……ここは、何処でしょうか」

2014-10-21 23:43:02
冥煌の者ルスシェスィア @Five_Reuswiccia

眼は眩んでしまうから封じてしまっている。それでも眩しくて、視力なんて欠片も働いていない。 もしかして知った仲の魔王は全て朽ちてしまったのかしら。そんなことを思って、ほんの少し俯いた。

2014-10-21 23:44:33
【八衢の魔王】トレィク @m_earth_5hw

「………」 ただ。黙って見ている、だけ。長すぎる両袖が床に垂れている。 顎は立てている膝に埋もれ気味で、目だけがそちらを向いている状態。

2014-10-21 23:47:59
【狂王】アルレット @FHW_ar

「んんー、ん―――…?」 暗い部屋の一つ窓。手を額に当て、身を乗り出すようにそれはいた。 ゆらゆらと骨のような大きな二つの尾を揺らし、真っ直ぐ、奥を見つめている。 「ん―――…見えるような、見えないような……あ、あれか!きっとそうだね、あれだ!」

2014-10-21 23:50:21
【狂王】アルレット @FHW_ar

目を細め見えた山を指し納得しているようだが、見当違いの方角を見ていることをそれは気が付かない。 ふと、いくつかの気配を感じた。 そしてそれは思い出す。行かねばならぬ場所があると。

2014-10-21 23:50:36
【狂王】アルレット @FHW_ar

「…やっばい、これ遅刻フラグ?」 怒られるのは勘弁、と窓から身を引き部屋を飛び出し、幾重ものランプが照らす廊下をそれは駆け抜けた。 途中途中道に迷い見当違いの部屋を訪れたがやっと目的の場所にたどり着く。 そろーっと静かに扉を開き中をのぞく。 ……まずい、すでに全員いるじゃん。

2014-10-21 23:50:50
【狂王】アルレット @FHW_ar

―――――…扉を静かに閉じる。 「どうしよう…ここはあれだ、堂々とすればいいんだよ、堂々と!」 ―――――…そして勢いよく扉は再び開かれて――… 「やぁやぁ皆の衆!おまたせしちゃったね!めんごーめんごー!」 満面の笑みでそれは現れた。

2014-10-21 23:51:07
【八衢の魔王】トレィク @m_earth_5hw

ふい、と扉の方に目を向けた。…もしかしたら、アルレットと目が合うかもしれない。 …が、目が合おうが合うまいが、それを彼はふ、と逸らして床に視線を送る。動く気配はまるで無い。

2014-10-22 00:01:04
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