四大聖戦:第一交流フェイズ【邪なる矛】

 ──立ちはだかりしは四人の魔王 赫焉@IgnisSatan 颶風@DeathWaltz_doll 徒波@fileWoz 続きを読む
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颶風の魔王 @DeathWaltz_doll

から、から、から。 きし、きし、きし。 魔王達の住まう広大な城。 緩やかな機械音の響く中庭で、その少女は目覚めました。 綺麗な夕焼け色の瞳を瞬かせるその小さな身体は、まるで人間そのものです。けれどその背中から伸びる沢山の不気味な羽が、それは間違いであると暗に告げていました。

2014-09-22 19:03:47
颶風の魔王 @DeathWaltz_doll

夜空のように真っ黒な羽と、機械で出来た精巧な羽。その一つ一つはとても美しいのに、それらが好き勝手にごちゃごちゃと生えているせいでせっかくの美しさを台無しにしていました。 そんな歪な羽をぱたり、ぱたり、羽ばたかせて、くぁあ、と大きな欠伸を一つ。 けれどもそれはただのふりでした。

2014-09-22 19:04:17
颶風の魔王 @DeathWaltz_doll

少女は別に眠くもないし、大きく伸びをする程の体のだるさも感じていません。 それなのになぜそんな事をするかといえば、少しでもいきものらしくあろうとする、「無機物」の少女なりの努力でした。 瞳は閉じても眠らない。 お腹を空かせて困ることもない。 少女は人形でした。

2014-09-22 19:05:29
颶風の魔王 @DeathWaltz_doll

赤いドレスの端からちらりと覗くまぁるい手首。関節球体のお人形。 お気に入りの中庭のなかで、うつら、うつら。再びお昼寝のまねっこをしようと、少女は瞼を閉じました。 から、から、から。 きし、きし、きし。 「……そろそろかしら」 機械音に混じって小さく呟いたそれは、寝言のふり。

2014-09-22 19:07:53
【聖焔の勇者】アンゼリカ @Feu_5hw

「お、ぐーちゃんはココにいたのか」  よく言えば気さくに、悪く言えば馴れ馴れしく、声は少女人形の頭上から降ってきた。 「よォ、邪魔したかい?」  にたりと浮かぶ笑みは悪戯が成功した悪ガキのようなそれ。飛ぶのには余り適さないであろうボロボロの翼を一度、強くはばたかせた。

2014-09-22 19:33:56
【聖焔の勇者】アンゼリカ @Feu_5hw

「お、っと、っとォ」  危なっかしい翼使いで何とか少女人形の目の前に降り立つ。 「他の連中知らねェかー?」  腹ァ減ったんだけどアタシどこに何があるか憶えてねーんだわ、と頬を掻きながら首を傾げた。 「ぐーちゃんが知ってンなら教えてくれよ」

2014-09-22 19:36:59
颶風の魔王 @DeathWaltz_doll

「…その声は、……赫焉、かしら」 聞こえてきた羽音と声に、少女は瞼を閉じたまま答えます。 颶風の魔王と呼ばれ恐れられる少女をそんな風に可愛らしい名前で呼ぶのは赫焉の魔王である彼女くらいですから、わざわざ見なくてもすぐにわかりました。 「邪魔ではないよ。どうせ僕は眠れないから」

2014-09-22 20:23:50
颶風の魔王 @DeathWaltz_doll

閉じていた瞼をぱちりと開いて、少女は赫焉に笑いかけました。けれどその口調は先程とは少し違っていて、まるで少年のようです。 人形である少女は忘れん坊で、よく自分がどんな喋り方をしていたのか忘れてしまうので、その口調が安定しないのです。

2014-09-22 20:24:39
颶風の魔王 @DeathWaltz_doll

「他の子が何処にいるかはわからないけれど、厨房の場所なら知ってるよ。行く?」 ちくたく、ちくたく、機械音を響かせたまま、少女はゆっくり立ち上がります。 小さな体に対して少し大きすぎる羽はとても重そうでした。 「…その道中で、他の子も…探す?…私も、みんなにお話、あるの。だから」

2014-09-22 20:27:24
颶風の魔王 @DeathWaltz_doll

お昼寝の最中に風達が教えてくれた、このお城の小さな変化を、みんなにお話しなくてはなりません。 もしかしたら、みんなもうすでに知っているかもしれないけれど。 「…手、繋いでほしいの」 小さな小さな作り物の手を、少女は真っ赤な魔王に差し出しました。

2014-09-22 20:31:30
【聖焔の勇者】アンゼリカ @Feu_5hw

「そうかい、でも寝てたンだろ? 邪魔したな」  ぐーちゃんと呼びつけて、その髪を梳くように撫でようと手を伸ばす。そうしてから軽く首を傾げると、そうだなァと頷き返した。 「の方がいいだろーなァ、あとはあだっちゃんとやっちゃんかァ?」  皆に話なんて珍しいなァと笑い声を上げる。

2014-09-22 20:38:12
【聖焔の勇者】アンゼリカ @Feu_5hw

「おう、繋ぐかァ。アタシがエスコートしてやんぜェ、ぐーちゃん」  にまりとどこか意地の悪そうな笑みを浮かべ地面に膝を付けば外套の中から左手を伸ばして、差し出された手を取って。 「風の向くまま気の向くまま、ぐーちゃんの行くままにィってなー」  歌うように言い少女人形に笑みを向けた。

2014-09-22 20:43:40
【聖焔の勇者】アンゼリカ @Feu_5hw

「……お、それじゃあアタシがエスコートしてるコトになんねェな!?」  この魔王、おつむは余り、よくない。

2014-09-22 20:44:17
フロリーシャ・ラウィーニーア @flou_siki

その恐ろしく長い白髪は、引きずってしまうものである。 その身の丈に合わない大人のドレスは、引きずってしまうものである。 【変転】する。【変転】する。 その恐ろしく長い白髪は、浮き上がって地面につかない。 その身の丈に合わない大人のドレスは、浮き上がって地面につかない。

2014-09-22 20:52:44
フロリーシャ・ラウィーニーア @flou_siki

ぱたぱたぱたぱた。お城の廊下を走る音。ぱたぱたぱたぱた。一本角の少女が立てる軽い音。 いっぱいいっぱい、甘いお菓子の入った土の籠。腕に抱えて走る走る。ころんころん。こぼれた飴が廊下に落ちる。ぱたぱたぱたぱた。喜色満面、笑顔を浮かべて、少女は構わず走る走る。

2014-09-22 20:52:49
徒波の魔王 @fileWoz

知性と心を持つ生物において、大別可能な項目というのは大きかろうが小さかろうがそれこそ無限に思えるほど幾つも存在する。 その一つに、器の大きさというものが在る。 まさに知性と心の集大成とも呼ぶべきそれは、大小の二つに別れており、これによってその存在そのものの評価が変わることは多い。

2014-09-22 21:00:55
徒波の魔王 @fileWoz

器が大きいものというのは得てして何事も寛容であり、器が小さいものとは得てして小さな物事に荒声を立ててしまうものである。 「あ……あぁ、くそ……」 そしてその男は、今まさに小さな物事に荒声を立てようとするこの男は、器の小さな男だった。 「だぁ!!痛えくそ!俺様の髪がぁ!」

2014-09-22 21:01:03
徒波の魔王 @fileWoz

「髪が一本抜けやがったぁ!!!!」 男の居所……二階の角部屋から、城中に響き渡る声が轟く。その手には、紫の毛が一本絡まった真紅の髪櫛。 どうやら、毛髪を整えている最中に抜けてしまったらしい。 「あぁ、痛えちくしょう……」 鳥の羽根を模した模した髪留めで紫紺を後頭部に束ねる。

2014-09-22 21:01:20
徒波の魔王 @fileWoz

更に片手で櫛を握り潰すと、翡翠の瞳をじぃと縮ませて鏡を睨み付ける。 「あぁ、そうだそうだ俺様はこうでなくちゃな」 握り潰した櫛の破片は化粧台の横に備えられたゴミ箱へ。その次、額へと手が伸びる。 「あらよっと」 ぴょん、と二つの小さい束が、額から飛び出る。

2014-09-22 21:01:30
徒波の魔王 @fileWoz

それは、まるで触角のように見えるが実際はただの髪。後ろに束ねられた髪たちから反逆するように、二本の束が男の額に飛び出ている。 「さぁ、て準備も出来たし……俺様の一日を優雅な朝食で始めよう」 つい、と二本の触角を撫でると、男は立てかけてあったこれまた鳥の羽根の装飾が目立つローブを

2014-09-22 21:01:38
徒波の魔王 @fileWoz

羽織り、部屋を後にした。 男の消えた部屋には、一瞬の静寂。しかしそれもまた、扉の先の廊下で響く男の「この窓汚ねぇな!」という荒声に、邪魔されるのであった。

2014-09-22 21:01:49
颶風の魔王 @DeathWaltz_doll

「…えすこーと?…えへへ、じゃあ赫焉が私…のないとさんなのね」 ぐーちゃん。そう呼ばれるのをこっそり気に入っている少女は、ほんの少しだけ、握った手のひらに力を込めます。 少女がにぎったその手は、少女のそれより少し大きくて、ずっとずっと暖かいものでした。

2014-09-22 21:31:11
颶風の魔王 @DeathWaltz_doll

いいなぁ。いきものは。 こんなにも、あったかい。 少女は赫焉の魔王の、あったかい手を握りながら、そう思いました。 人形の少女は眠るまねは出来ても、あったかさはまね出来ません。 「うらやましいなぁ」 ぽつり。少女がそう言ったのと同時くらいでしょうか、……大きな音が聞こえました。

2014-09-22 21:32:18
颶風の魔王 @DeathWaltz_doll

もしかしたら、実際にはそんなに大きな音ではなかったかもしれません。けれども風達の声を聞き分けられる程に耳の良い少女ですから、音が聞こえてきた瞬間、驚いて、絡繰り仕掛けのその身体をびくりと震わせてしまいました。

2014-09-22 21:34:00
颶風の魔王 @DeathWaltz_doll

ひとつは、ばたばたと廊下を走る音。もうひとつは……とくにこれが大きい音だったのですが、何かに対して叫ぶ青年の声。 びっくりした少女は、思わず、隣にいた彼女に抱きつきました。

2014-09-22 21:34:36
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