- FiveHolyWar
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「うむうむ、ではゆくぞー」 みんなが指を絡めたのを確認して、少女は満足そうにえへん、と小さな胸を大きくはります。 結局の所魔王らしい指切りがなんなのかという結論はでなかったようで、せめて口調だけはとそれらしく声をはってみました。
2014-09-27 14:34:01「ゆーびきーりげーんまーん、うーそつーいたら……うんと…ぅーんと、えっと、に、ニンニクとトマトジュースのーます!ゆびきった!」 あまり大きな声をあげない少女にしては珍しく、少しがんばって大声を出してみました。
2014-09-27 14:34:27土壇場で少女なりに魔王っぽさを演出してみましたが、魔王というよりは吸血鬼、それも片方は好物とも言われたりするものだった事には気がついていないようです。 「うん、これで大丈夫。きっときっと、大丈夫だよ」
2014-09-27 14:34:43にこにこ、にこにこ。少女は指切りに喜んで、大きく頷く。 「うん、だいじょーぶ!!」 きっときっと大丈夫。ずっとずっと一緒にいられる。にこにこ笑って、手を離して。 「いってきます!」 大きな声を出して、笑顔。大きく手を振って、少女は足取り軽く走り出す。ぱたぱた、ぱたぱた。
2014-09-27 14:46:33三の扉はすぐそこ。ノブを掴んで、回して。勢いよく開いて、少女は一度振り返る。また手を大きく振って、歩き出す。 そうして少女は扉の中へと消えて行った。
2014-09-27 14:46:45「ま、こんなもんだろ……」 無事に魔王らしくない指切りを終え、ホッと一息付く徒波。 しかし感慨に浸る暇もなく、八衢はとたとたと走り去って行き、扉の向こう側に消えてしまった。 「元気だなぁあいつ」 まるで年寄りのような、ぽつりと飛び出た自分の一言に気付き、鼻で笑う。
2014-09-27 15:19:40「俺様だって元気だ……いいか!すぐに戻ってきてやる!」 何に対抗したいのか、言うや否や、早足で大広間の扉を開き、迅速に目的地まで。 男にしては珍しく、階段を飛ばしながら自分の部屋まで。 息切れもなく辿り着いたそこ、の三つ隣の部屋。白く無垢な扉がずらりと並ぶ中に、一つだけ怪しく光る
2014-09-27 15:19:52扉がある。その上部には、四番を表す文字が自らの存在を誇示するように大きく記されている。 「最初に帰ってくるのは俺様だ」 やはり威張ったような態度を取りながら、徒波はドアノブを回した。
2014-09-27 15:21:01「おう、いってこい、やっちゃん」 笑う。こちらを振り返って大きく手を振った少女に振り返す。少女に見せる表情はいつだって笑顔だった。いつまでもそうでありたい。この先もずっと。 「オイ! とちんじゃねーぞォ、あだっちゃん!」 早足で大広間を去る背中に投げ掛ける。
2014-09-27 15:24:07「……さァて、アタシも行くかね」 回した肩がごきりと鳴る。燃え尽きた眼帯の下にあったのは、縦一文字傷痕と左目とは違う赤の目。 「じゃ、ぐーちゃんまたな」 ひらりと手を振り、背を見せる。 「あ、これあると邪魔か」 どうしたものかと小さく首を捻ったあと、颶風の方を振り返る。
2014-09-27 15:28:41「ぐーちゃん、またなって言ったあとだけどよォ、お守り代わりに持ってくかァ?」 汚れはさっき燃やしたし、割と綺麗なはずだ。たぶん。 赫焉の角と似た色をした外套をばさりとはためかせる。それを差し出す赫焉の表情は、悪戯を仕掛ける子供のように無邪気だ。にかりと笑う。
2014-09-27 15:30:55「いいの…かしら、私で」 赫焉から戸惑いながらも外套を受け取った少女は、それはそれは大切そうにそれを抱きしめました。 「…必ず、返すわ。絶対に、絶対に」 だからきっと帰ってきてね。と言外にそう訴えて。
2014-09-27 15:47:56少女はふわりと外套を身に纏いました。 「…えへへ、赫焉の真似っこ。似合う?」 照れたように、柔らかい笑顔を浮かべて笑います。 そして礼儀正しく、人形らしく、スカートの裾を持ち上げて少女は優雅に一礼をしました。 「…それではごきげんよう、また会いましょう。…なのだわ」
2014-09-27 15:49:55「おう、似合う似合う。ぐーちゃんは可愛いかんなー」 にまりと笑ってぽすぽすとその頭を撫でた。 「たりめーだろ、ぜってェ帰ってくる。だからぐーちゃんも帰ってこいよ?」 それお気に入りだからなァと付け足して、今度こそ背を向けた。 「またな」 ひらりと片手を振って扉を蹴り開ける。
2014-09-27 16:02:30「ニンゲン共は皆殺し。カンタンな話だ」 かつかつかつとヒールが鳴る。思考を止める。ごちゃごちゃ考えるのは趣味じゃねェ。
2014-09-27 16:04:31いつも昼寝していた場所。そこにある異質な扉。 「……んじゃまァ、殺すか」 肩を回す。扉を蹴り開け、そのまま中へと入っていく。 その表情はまるで解き放たれた獰猛なドラゴンのようだった。
2014-09-27 16:10:56