銀の縁にて
まえがき
本編
◇あの時自分はあきづき搭載のSH-60Kで索敵に出ていた。夏目大佐の指示によりこんごう搭載のSH-60Kとともに駆逐イ級を沈め、重巡リ級に損害を与えたまでは良かった。しかし、増援に来た空母ヲ級の艦載機にあっという間に撃墜されてしまったのだ。#落ちぬい二次
2014-11-13 23:14:55■何気なく窓の外を見る。 直接は見えないが、その方向には米海軍の横須賀ベースがある。 思えば彼らも可哀想なものだ。#落ちぬい二次
2014-11-13 23:17:08◇自分は両足切断で済んだが、コパイとこんごうのSH-60Kの乗組員は生きて帰れなかった。 だから自分は運がいい。今もこうして戦い続け、愛する人とも一緒になれた。#落ちぬい二次
2014-11-13 23:17:51▼ポケットの中で微かな振動があった。 スマートフォンを取り出してみると、長瀬からメールが到着していた。業務メールでもないのに丁寧にオリジナルメッセージを残しているあたり、几帳面な長瀬らしい。#落ちぬい二次
2014-11-13 23:18:19◇何より、落穂拾いのように悠々と生き残った仲間たちを殺して行ったあの尻尾付き――あれを殺す機会を得たことが、とても幸せだった。#落ちぬい二次
2014-11-13 23:19:28▼内容はというと、兵頭が長瀬に女性と食事に行く際のアドバイスを求めたメールのCcだった。 うっせ > エロ野郎め >> ホテルでしけこみ中 >>> お前暇なの? >>>> ぬいぬいならイタリアンだろ >>>>> 若い子って焼肉だめなん? #落ちぬい二次
2014-11-13 23:19:57■小国の空軍を圧倒する空母航空隊、鉄壁の防御力を誇るイージス艦、多くの補助艦艇。それらから成る空母打撃群、第七艦隊。無敵と言える艦隊も深海棲艦と戦うには相性が悪すぎた。#落ちぬい二次
2014-11-13 23:22:02◇私は指揮下の翔鶴、瑞鶴、赤城、加賀の四人とケッコンカッコカリをしている。中でも翔鶴とは本当の意味で結婚もしている。近いうちに片目の鎮守府に所属している蒼龍と飛龍もこちらに移籍する手筈になっている。#落ちぬい二次
2014-11-13 23:23:40■一本何千万円もするミサイルを使っても撃墜できるのはちっぽけな艦載機が一機。ミサイルの飽和攻撃を想定したイージスシステムもオーバースペックだ。深海棲艦の航空攻撃から艦隊を守るなら、現在の運用ノウハウがあれば日本海軍のあきづき型とCIWSで充分だった。#落ちぬい二次
2014-11-13 23:25:08▼兵頭からのメールのCcに私のアドレスが入っていないのを見ると、長瀬が一緒に兵頭をいじって遊ぼうと誘っているらしい。#落ちぬい二次
2014-11-13 23:25:59◇蒼龍と飛龍の移籍の話は予想よりもあっさりまとまって内心少し驚いたのだが、彼の運用思想は水雷戦隊と戦艦による殴り合いで、実際のところ強力な空母は持て余していたそうだ。#落ちぬい二次
2014-11-13 23:27:05■内政のために外交を用いる国があり、かつての恨みを晴らすなら日本の軍備が深海棲艦との戦争に偏重しつつある今だ、と気炎を上げている以上、たしかに第七艦隊の存在は無駄ではない。#落ちぬい二次
2014-11-13 23:29:08▼しかし兵頭、女遊びをしている風を装っていても後腐れのない体だけの付き合いができる女性を厳選して、精査して、本当に体だけの付き合いのみを単発でしている長瀬に女性関係のアドバイスを求めるのはどうか。 ここは一つアドバイスしてやるとしよう。#落ちぬい二次
2014-11-13 23:30:23◇「それほど、マドンナに未練があるのでしょうか」 深海棲艦が現れた頃、あの男が交際していたのは陸自の西部方面普通科連隊に所属するWACだった。驚くべきことにそのWACは夏目艦隊がやられた後、海軍に移籍して艦娘となってあの男の指揮下に入った。#落ちぬい二次
2014-11-13 23:31:29■日本海軍が保有していたイージス艦のほとんどが失われ、その補充よりも深海棲艦への対応に予算が回されている状況にあっては米海軍のイージス艦が弾道ミサイルから日本を守る盾になっている。#落ちぬい二次
2014-11-13 23:34:05▼『横から失礼します。焼肉って(笑)』 焼肉は駄目だ。あれは満腹にはなるが、その割に摂取カロリーは低い。肉の脂は落ちるし、女性は野菜に逃げてしまう。#落ちぬい二次
2014-11-13 23:36:25◇艦娘としての名前は長門。 もともと西普連の猛者だった彼女は身体能力が非常に高く、砲打撃戦――要するに艦載砲による殴り合いを得意とする戦艦長門の艤装との適合率もずば抜けて高かった。#落ちぬい二次
2014-11-13 23:38:05■それでも、だ。 アメリカ議会には自国も深海棲艦の脅威にさらされている以上、軍備を本土防衛に回すべきだという意見が強い。 その状況でも米海軍が撤退しないのは、良くも悪くも米軍の軍事プレゼンスが世界の均衡を保っている事実と、単純に撤退が難しいという二つの理由だ。#落ちぬい二次
2014-11-13 23:39:45▼『Line入れてくださいよいい加減二人とも』 兵頭からは面倒くさいから嫌だ、長瀬からは個人情報管理のため嫌だという返事。#落ちぬい二次
2014-11-13 23:42:03◇それにしても、訓練どころか習慣からまるっきり違う海軍に移るとは。当時はこれが愛のなせる技か、と仲間内では大いに盛り上がったものだった。 あの頃の彼らはとても仲が良く、海ぼうずの集まりにも必ず同伴していて結婚も時間の問題だと思われていた。#落ちぬい二次
2014-11-13 23:42:34■はっきり言って、水上艦艇が太平洋を突っ切るのは自殺行為に近い。 弾数に限りがあり、コストが高く、艦体そのものの防御力が低い現代艦艇では深海棲艦の群れを突破することは非常に困難なのだ。#落ちぬい二次
2014-11-13 23:43:51