FF6二次創作SS:鎮魂のアリア~7回目
- minarudhia
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時刻は16時。 徐々に傾きつつある日を脇に、数羽のチョコボが原を駆け抜けていた。 歌が聞こえるのはその二時間後。 オペラ座に着くのに一時間かかるだろう。 以前ライオンのような獣が鎮座していた丘を抜け、森が見えてきた所まで来た時。
2014-11-22 21:48:10「クェェ!?」 突如チョコボ達の足並みが急ぎ足に変わった。 「何!?」 「ちょ、うわっ、どうした!」 慌てて鳥首を返そうとしたロックの目に映ったのは、こちらに向かって疾走してくる、あのライオンのような獣だった。
2014-11-22 21:51:03「来るぞ!」 「え!?」 「この間のあの獣だ、こっちに来るぞ。走らせろ!!」 獣の走る速度は意外にも速く、チョコボに追いつく勢いで迫ってくる。
2014-11-22 21:52:53「どうする?!」 「近くに二手に分かれた道があっただろ!そこで分かれるぞ!!」 森に入る前に分かれている道。 そこへ二手に分かれてチョコボは走る。
2014-11-22 21:54:09片方はロック・セリス・セッツァー。 もう片方はティナ・マッシュ・リルムとストラゴス、そして二人のチョコボに同乗しているインターセプター。 そしてその後ろを追いかける獣が選んだのは……ロック達の方だった。 「こっちに来たか!」 「なんとか振り切らないと厄介だわ」
2014-11-22 21:55:53三羽のチョコボが森の脇を走り抜け、悪路へと入り追跡を振り切ろうとする。 しかし獣はしっかりと背後に追いつき距離を離そうとはしない。 「ちっ!」 セッツァーが舌打ちしながら獣に向かいカードを投げつける。
2014-11-22 21:58:41カードは空気を切り裂き獣へと飛んでいくが、獣の纏う鎧の部分をわずかにかすった程度で足止めとまではいかなかった。 二枚目、三枚目のカードも、獣は難なくかわす。 獣が最短距離を縫うようにして追いかけているため、ロックはこのまま追いつかれるのは時間の問題と二人に向かって声を張り上げた。
2014-11-22 22:00:28「このままじゃ追いつかれるぞ!森の中を突っ切って狭い木の間や隙間を利用して撒こう!」 「わかった!」 ロックは素早く森の中へ目を走らせ、目星をつけた木々の合間へチョコボを突っ込ませた。 後をセリス、セッツァーのチョコボが続く。
2014-11-22 22:02:15木々の合間、茂みや狭い小道の中から獣が簡単にくぐれそうにない箇所を次々に見つけ出すロックの反応は目覚ましく。 遂に、獣を撹乱し撒くことができた。 「……」 撒けたとわかってはいても、三人の間に未だ緊迫した雰囲気が漂う。
2014-11-22 22:05:53「…さっきの獣、なんだったのかしら」 「ウラカタの弟子の話じゃ、あいつにトンボが乗っていたと言ってたな」 「…多分今からでも聞けるだろ。行くぞ」 セッツァーが吐き捨てるように言いながら、チョコボの足を早めさせた。
2014-11-22 22:07:22彼らが着くより30分前。 先に着いていたマッシュ達は、オペラ座に入ると先にダンチョーのいる部屋のドアを叩きに行った。 「誰だね?」 中からダンチョーの枯れた声が聞こえる。 「ロックの仲間です。中に入ってもいいですか?」 ティナが声をかける。
2014-11-22 22:09:26ややあって、ドアがゆっくり開いた。 「中に入ると良い、話を聞こう」 中を通され、改めてティナ達はここ数日もの間の成果をダンチョーに打ち明けた。 ダンチョーはそれを聞き終え、少しほっとしたように口を開いた。
2014-11-22 22:12:51「それはよかった。私の方もどこの誰か知らないが口添えがあって、どうにかこのオペラを解散させずに済みそうなのだよ。オペラの再開演まで時間がかかりそうだがね」 「…そうなの…」 「そう気を落とすなって」 ちょっとしゅんとなったティナの肩を軽く叩いてから、マッシュが聞いた。
2014-11-22 22:14:41「それはそうとダンチョーさん。俺達は少し気になることがあるんだ。18時過ぎまで、ここにいても構わないか?」 「ああ、いいとも。だいぶ落ち着いてきたからね、音楽団も暇を出しているからステージは閑散としてるよ」 「構いません。それでは…」
2014-11-22 22:16:11グリフォンの背から頭を伝って、人影が屋根の上に移るのが見えた。 そして1、2分後、グリフォンは再び翼を仰ぎどこかへ飛び去っていく。 見る間にその姿が見えなくなる頃合いを見計らい、三人は出てきた。 「……中へ急ぐぞ」
2014-11-22 22:24:30三人が中へ入ると、ちょうどマッシュ達がダンチョーの部屋を出て歩いてくるところだった。 「三人とも、無事だったか!」 「おかげさまで。でも、今それより重要なことが――――」 ―――18時。
2014-11-22 22:26:12ロックが口を開きかけた時、その場にいた者全ての耳にあの歌声が響き始めた。 人の喉ですら出すことのできぬ美しい音程、知識にはない異国の言葉のような詞。 それを一つのソプラノが厳かに、慈悲に満ちた響きで辺りに広めていた。 「この歌声か…!」 「ストラゴス」
2014-11-22 22:29:11声を漏らし、ストラゴスは耳を傾けながらうなずく。 「――――間違いない、この歌に使われている言葉は――すると、あの言い伝えは――」 「ウウウウウゥゥゥゥ」 「インターセプターちゃん?」
2014-11-22 22:30:52歌声を聞いていたインターセプターの背中の毛が激しく逆立つ。 そして、弾かれるように、ステージへ続く大扉のうち右の方へとはいっていった。 「おいインターセプター!どこ行く気だ!?」 「待って!」
2014-11-22 22:32:03黒い老犬の後を追ってロック達がなだれ込む。 インターセプターは吠えることなくまっすぐに舞台へ走っていく。 音楽隊も観客もいない客席は確かに閑散としており、今は歌声がその静けさを打ち消している。 まもなく。
2014-11-22 22:34:39インターセプターは舞台の上まで上がると、しばらく上を見上げたかと思えば、ステージの脇の舞台裏へとすっと消えた。 セリスが女優に扮してスタンバイした場所とは反対側の舞台裏。 そこは普段大道具などをしまう物置部屋となっており、劇で必要な時にしか誰も足を踏み入れることのない場所だった。
2014-11-22 22:36:15インターセプターはその部屋の前まで来ていたが、戸をカリカリと引っ掻くばかりだった。 「ダンチョーでも呼ぶか?」 「いや、ここは俺に任せろ」 やるべきことを察したロックがインターセプターをどかせ、ドアに手を触れた。
2014-11-22 22:38:05