【第三部-七】扶桑が抱えた心の課題 #見つめる時雨

扶桑×山城
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扶桑視点

とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「今日はいい夫婦の日なのね」 部屋で何気なく読んでいた雑誌でそんな言葉を見つける。何か由来があるわけではなく、単なる語呂合わせのようだけれど。でも、そんなところが日本人らしい、そう感じた。

2014-11-22 23:21:27
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「夫婦、ですか?」 隣で私が貸した小説を読んでいた山城が、私の手元の雑誌を覗き込む。私の周りにふわりとした甘い香りが漂う。 「…何をする日なんでしょう?」 「そうね、これには『パートナーに日頃の感謝の気持ちを伝える日』って書いてあるわ」 「感謝の気持ち、ですか」

2014-11-22 23:23:45
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「このパートナーって、女同士でもいいんでしょうか」 「…どうかしら。でも、特に性別を限定するようなことは書かれてないわね。『夫婦』を異性と解釈するなら別だけれど…。でも、こういうのって気持ちの方が大切なんじゃないかしら。だから、いいと思うわ」

2014-11-22 23:25:32
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

山城の視線が私を向く。瞳に、私の姿が映り込む。 「…扶桑姉様。あ…その…」 何かを言いかけて、山城の視線が下を向く。少し頬が赤くなっているのは気のせいではなさそう。私はそのまま山城の言葉を待つことにした。

2014-11-22 23:27:46
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「姉様…いつも、ありがとうございます…」 視線は下のまま、指先をつつき合わせながら、照れくさそうにして微笑む山城。思わず抱きしめたくなる衝動を抑えて、私の言葉を山城にあげる。「私の方こそ、ありがとう」と。すると山城はゆっくりと私に身体を預けてきた。

2014-11-22 23:30:03
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

甘える子猫のように私に身体を擦るつける山城。その表情はとても幸せそうだった。あまりに子猫みたいだったからでしょう、私の手は自然と山城の首元に添えられていた。山城のそこを、優しくかいてあげる。 「んっ…ん…」 山城が気持ちよさそうに、甘い声を漏らす。

2014-11-22 23:32:36
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

山城が首をよじらせる。私の指が彼女の唇に触れた。山城の唇はいつもしっとりとしていて、柔らかい。いつだったか、山城が榛名に「姉様の唇に触れるのに恥ずかしくないように、いつも欠かさず手入れしてるの」なんて漏らしていたことを思い出す。…少し恥ずかしく思うも、とても嬉しく思った。

2014-11-22 23:35:22
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

山城の瞳が何かを期待するように揺れる。私はこの瞳にとても弱かった。私の理性の留め金が、緩んでしまう。…山城は自覚しているのかしら。貴女の甘い香りも、柔らかい唇も、可愛らしい声も、私を惹きつけてやまないことを。そんな貴女にこんな目をされたら…。

2014-11-22 23:39:41
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「んっ…」 私の指に山城のキスが落とされる。そして、何度も私の手を甘噛みする。やがて、その唇は私の首元へと…。 「あっ…や…山城…。その…」 私の着物に手をかけていた山城の手をやんわりと制する。 「…まだ、ダメですか…?でも…」 「…こっちなら…ね?」 私は山城の頬に手を添えた。

2014-11-22 23:48:51
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

山城を私の唇に導く。熱い彼女の唇が、私に重なる。静かに時を止めた空間で、彼女の手入れされたそれを堪能し…ゆっくりと離した。…山城の少し不満そうな顔が目に入る。 「…姉様は、山城にされるのはあまり好きではないのですか?」 「…いえ、そんなことはないの…。でも…明るいから…」

2014-11-22 23:54:15
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

「…私は、もっと扶桑姉様が見たいです…。でも、」 山城がもう一度私にキスをしてきた。触れるだけの、軽いキス。 「姉様がいいって言ってくれるまで待ちます。だから、いつでも言ってくださいね」 山城の手が私の背中に回る。私も、山城を抱き留めた。

2014-11-23 00:00:52
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

山城の露わになっていた首元にそっとキスをする。山城の溜息が私の肌をくすぐった。 「…姉様…んっ…」 …足元にある雑誌の記事の一文が目に入った。『素直になれる日』。素直に…。ごめんなさい、山城。私、もう少し時間がかかりそう…。

2014-11-23 00:07:46
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

お風呂でいつも見られていると言われてしまえばそうなのだけれど、そうでないときに、明るい中で山城に一糸纏わぬ姿を晒すのには抵抗があった。それに、きっと山城はその先のことも望んでいる…。暗い中でならいいのだけれど…。

2014-11-23 00:14:28
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

…私はまだ山城に全てを曝け出せるだけの自信がないのかもしれない。ふと山城に甘えたいと思っても、それを見せられない。山城が私の全てを受け止めてくれるか、自信がないから…。でも、このコは待っててくれると言ってくれた。結局、私の勇気次第…。

2014-11-23 00:21:29
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

山城の好きなところを、気持ちを込めて愛撫する。山城が身をくねらせ、震わせる。私の名前を切なそうな声で呼ぶ。…貴女が見たい私を見せられないその間、代わりにいっぱい愛してあげるわ…。山城、山城…。私の、山城…。――

2014-11-23 00:30:47