オバケのミカタ第二話『オバケのミカタと川獺』Bパート(2/2)

第二話Bパートです。
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アンダーグラウンドノベルズ @OBAKEnoMIKATA

CM――オバケのミカタの可動フィギュアが登場だ。アーマーを装着! 君の手で《白夜》を変身させよ! 全身18箇所が可動。小説のシーンを完全再現! DC(ドライブチェンジ)シリーズ01、霊動装甲《白夜》《アイ・ドライブ》! ドライブチェンジセット01も同時発売……! #OnM_2

2014-12-13 22:03:46
アンダーグラウンドノベルズ @OBAKEnoMIKATA

一時間後。神奈川県から千葉県に向かう国道を、法定速度を遙かに上回る速度で飛ばすサイドカーの姿があった。ハンドルを握るのは曲マコト。側車に乗っているのは眼帯少女に化けた一つ目小僧、哀だ。哀のセーラーカラーの上には、一匹の小さな蜘蛛がへばりついている。 #OnM_2 71

2014-12-13 22:05:25
アンダーグラウンドノベルズ @OBAKEnoMIKATA

「マコト! 飛ばしすぎ! 危ないわよ!?」「非常時ですから! 充と沙綾だって、いつまで保つか分からないのでしょう?」「そうだけどさあ!」マコトは焦っていた。UMAハンター・ジャンゴ=ジョンストン。先週から追っていた相手だが、まんまと先んじられてしまった。 #OnM_2 72

2014-12-13 22:07:14
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南関東支局の皆は、学業と特殊文化財局の二足の草鞋を履くマコトを何かと気遣い、気を回してくれる。今回もそうだ。敵の足取りを一度見失った時点でマコトは追跡の任を解かれ、非番を言い渡されていた。勿論、唯一の戦力であるマコトに体力を温存させるという意味もあったろう。 #OnM_2 73

2014-12-13 22:08:27
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だが結果的に、それが対応の遅れを招いてしまった。やはりマコトは前線に残るべきではなかったのか。その気になりさえすれば二、三日寝なかったところで平気だし、学校の出席日数など最初から気にしていない。そもそもマコトが高校に通うこと自体、無駄なのではないか――。 #OnM_2 74

2014-12-13 22:09:18
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そのときふと、先ほど上繁神奈にかけられた言葉を思い出した。「また明日、学校で」――マコトは限界まで押しこんでいたアクセルを、少しだけゆるめた。隣で哀がほっと胸を撫で下ろすのが分かった。「大丈夫よマコト。スカイフィッシュたちに偵察してもらった。二人とも健在だわ」 #OnM_2 75

2014-12-13 22:12:49
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マコトは頷いた。マコトの心には荒涼とした砂漠が広がっている。だがその片隅には、長い時間をかけて少しずつ大きくしてきた、ささやかな花壇もあるのだ。砂漠は隙あらば花壇を呑みこもうと押し寄せてくるが、逆に花壇に水を与えたり、種を撒いたりしてくれる者もいる。 #OnM_2 76

2014-12-13 22:13:21
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マコトは、そんな者たちのためにこそ戦いたい。それはお化けたちであり、特殊文化財局の同僚であり、哀や、充や、沙綾であり、顔も知らない漫画やアニメの作り手たちであり――クラスメイトでもある。 #OnM_2 77

2014-12-13 22:14:08
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履帯が土を噛み、小石を粉砕する。草木の根をほじくり返し、昆虫を轢き潰す。ギャリギャリギャリギャリ……。無遠慮で威圧的な走行音が、森の静寂を破壊してゆく。ジャンゴ=ジョンストンが操る鋼鉄の魔神は、急斜面を物ともせずに進撃を続けていた。 #OnM_2 78

2014-12-13 22:15:35
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《チェルノボーグ4(チティーリ)》。冷戦下の旧ソ連において量産された霊動装甲。ソ連崩壊後はアジア、中東、アフリカなどへ大量に流出し、今も紛争やテロに使用されている――一般には知られていないが。そしてこの機体の燃料とするため、世界中でお化けが狩られ続けている。 #OnM_2 79

2014-12-13 22:17:48
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《チェルノボーグ》は「着る戦車」とでも呼ぶべきフォルムをしている。軽自動車を二回り小さくしたくらいのシャーシから四本の脚部と、砲塔を兼ねた人型の上半身が生えているのだ。両腕に滑腔砲、車体の前後に機銃、背中にウェポンラック。脚部の先端は履帯となっている。 #OnM_2 80

2014-12-13 22:18:33
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円筒形のヘルメットをぐるりと囲むレール上を、カメラアイがせわしなく走り回り、周囲を睥睨している。ジャンゴはマスク内のディスプレイでその映像を睨みつつ、灌木を薙ぎ倒し、大岩を押し退けて無理矢理道を作ると、ゆるやかな斜面を下りはじめた。 #OnM_2 81

2014-12-13 22:19:43
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やがて、チョロチョロという水音が聞こえてきた。アームの先端、ハサミ型のマニュピレータで古木を叩き折ると、視界がぱっと開ける――その先にはぬかるんだ湿地が広がっており、緑色に濁った淵が渦を巻いていた。 #OnM_2 82

2014-12-13 22:20:48
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『ここか』ディスプレイ上で地図アプリを開く――エクトプラズム反応を示す光点は、まさしく目前の淵を示している。辿り着くのにひどく時間がかかってしまった。道中、幾度も妨害をしかけてきたあの二匹にかかずらっていたためだ。ジャンゴは履帯を回転させ、前進する。 #OnM_2 83

2014-12-13 22:22:22
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と、ピアノ線のように細い糸が《チェルノボーグ》の機体に引っかかり、切れた。接続されていたブービートラップが起動し、丸太の振り子が左右から飛んで来る! 反応する暇も与えず、二本の丸太が《チェルノボーグ》を挟み、押し潰した。衝撃で、周囲の木々がびりびりと震えた。 #OnM_2 84

2014-12-13 22:23:45
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一方の丸太は割れ砕けて飛び散る。もう一本も、支えていた糸が切れて地に落ち、斜面を転がっていった。それでも霊動装甲には傷一つついていない――元より戦車砲の直撃にすら耐えうる装甲だ。丸木如きでどうこうできるものではない。それは罠を仕掛けた方とて百も承知だった。 #OnM_2 85

2014-12-13 22:25:03
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《チェルノボーグ》が動きを止めた一瞬の隙を突いて、樹上から二つの影が飛びかかった。充と沙綾だ。充が頭部にしがみつき、カメラを覆い隠して視界を奪うと、その隙に、沙綾が脚部に糸を巻きつける。脚を絡め取って転倒させるのが狙いだ。 #OnM_2 86

2014-12-13 22:26:40
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『フン』ジャンゴは鼻で笑った。さっきまではチラチラと姿を見せてジャンゴの注意を惹こうとするだけだったが、この淵に到達されて、いよいよ形振り構わぬ攻撃に出てきたというわけだ。だが、いかんせん戦力差がありすぎる。ジャンゴはEリアクターの出力を上げた。 #OnM_2 87

2014-12-13 22:27:06
アンダーグラウンドノベルズ @OBAKEnoMIKATA

ハサミ型マニュピレータが充の胴体をがっきと掴み、無理矢理頭から引き剥がした。振りかぶって、足元に――叩きつける!「ぎゃん!」「ミツ! ……おわっ!?」ハッと振り向いた沙綾の身体が撥ね上げられ、宙を舞った。《チェルノボーグ》が足を振り抜いたのだ。 #OnM_2 88

2014-12-13 22:28:23
アンダーグラウンドノベルズ @OBAKEnoMIKATA

自分が巻きつけた糸に引っ張られ、沙綾は太いブナの樹に背中を叩きつけられた。肺から空気を搾り出され、その場にくずおれる。ジャンゴはそこに右腕の滑腔砲を向け――思い留まった。こいつらも獲物のうちだ。HEAT弾で消し飛ばしたりしたらエクトプラズムが採取できない。 #OnM_2 89

2014-12-13 22:29:22
アンダーグラウンドノベルズ @OBAKEnoMIKATA

ジャンゴは左右の砲を非殺傷性のネット弾に装填し直した。その砲身に、足元から躍り上がった充が噛みつく。「クワーッ!」ニット帽をかなぐり捨てた彼の頭は中心がくぼみ、陶器めいた皿が嵌まっている。砲をガリガリと齧りながら、充はさらに姿を変えていった。 #OnM_2 90

2014-12-13 22:31:14
アンダーグラウンドノベルズ @OBAKEnoMIKATA

両手に水掻き。肌は緑みを帯び、口はいつしかオウムのような嘴に変わっている。パーカーの背を押し上げる膨らみは甲羅であろうか。『カッパか! 知ってるぞ、ジャパニーズマーマンだ!』ジャンゴは再び充を引き剥がそうとするが、ヌラヌラ滑ってうまく掴めない。 #OnM_2 91

2014-12-13 22:32:40
アンダーグラウンドノベルズ @OBAKEnoMIKATA

ジャンゴは力任せに右腕を振り回し、充をブナの大木に叩きつけようとした。その意図を察した充は一瞬早く滑腔砲から離れ、斜面を転がるように駆けて、淵に逃れようとする。その鼻先で泥の柱が次々と跳ね上がり、行く手を塞いだ。自動制御式の機銃が火を噴いたのだ。 #OnM_2 92

2014-12-13 22:34:08
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