青木理さん×山田健太さんトークイベント「メディアと国家権力」
- osomatu_san
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山田「日本の新聞って地方紙が多い。集団的自衛権では批判する地方紙が多かったので読売が頑張っても総体として見れば反対の論調が勝っていたけど、朝日騒動では地方紙が中立を装って沈黙した。それがバッシングを後押ししたところもあるかと思いますね」
2015-01-26 19:36:25青木「色んなメディアが誤報をする。じゃあなんで今回、朝日の慰安婦報道だけがことさらバッシングを受けたのか。深層にあったのは『朝日をぶっ叩きたい』という(メディアの)心情。それが表出したという意味では歴史的事件だったと思う」
2015-01-26 19:40:40山田「それで言うと、今、慰安婦報道以外に世の中から『徹底して潰していく』(それによって社会を変える)といううねりが出そうなテーマはありますか?」
2015-01-26 19:43:46青木「あまり深いことは考えていない。ただ、例えば沖縄にしても原発の問題にしても、僕らがやっている仕事が当たり前に守るべき矜持が根腐れしているというのが、共通して感じている危機感」
2015-01-26 19:45:05青木「沖縄の問題に関しても、地方紙を始めとするメディアがきちんと機能していればもう少し事態は違ったんじゃないかという思いがある」
2015-01-26 19:45:55青木「朝日の社内用語で『角度をつける』という言葉があるらしい。例えばある事実があったときに、問題意識をリードや見出しにすること。ただそれに対して、先日朝日の第三者委員会の委員が報告書のなかでこの言葉に驚いた、と書いた。事実は事実として伝え、脚色してはならないと」
2015-01-26 19:47:59青木「彼は(岡本さん)『僕は官僚だから』そう感じたというけど、事実をねじまげて隠すが官僚でしょ。センセーショナリズムはメディアが陥りやすい罠ではある。でも、仮に官僚側が言うことを右から左に伝えるなら、それはただの国営メディア。それに『角度をつけて』伝えるのがメディアの役割」
2015-01-26 19:50:35青木「『角度をつける』ことが朝日の偏向報道の一因であるという物言いに、他のメディアももっときちんと反論すべきだと思う。メディアの初歩の初歩が蔑ろにされている状況が、本当に許しがたかった」
2015-01-26 19:52:00青木「僕が朝日関係者にインタビューしたなかで、本当に尊敬したのは例えば朝日の報道局長。インタビューに応じるだけでも本当に勇気がある。ただ、『守る』ということに関して言うなら、バッシングが起こったときには朝日側はこの嵐が過ぎ去ることを一番に考えていたんじゃないかと思う」
2015-01-26 19:56:03青木「事実が捏造されていたときに、記事を取り消すのは当たり前。ただ吉田調書の問題に関しては、事実はあった。角度の立て方を間違えていたわけだけど、報道自体を取り消すのは今でもおかしいんじゃないかと思っている。それも『嵐を過ぎ去らせよう』とする姿勢の一つなんじゃないかと」
2015-01-26 19:59:26山田「取り消すという判断がおかしいというのは自分も同意。そもそも取り消しの対象になるようなレベルの話ではなかったと思っている」
2015-01-26 20:00:37日本の学生に対する危機意識
青木「新聞労連のなかに『ジャーナリズム大賞』というものが設置されていて、今年から僕も選考委員になった。今年は沖縄報道が大賞だったけど、吉田調書の報道に特別賞が贈られた。報道の仕方は問題があったかもしれないけど、あの報道がなければ事実は明るみに出なかったと」
2015-01-26 20:02:51青木「ところが後日、とある旧帝国大学の学生から『あなたたちの見識を疑う』と抗議のメールが来た。また、秘密保護法に関しても『国家には守る秘密があって当たり前だ』というような発言を学生たちがしていた。本来反骨心が最もあるはずの学生が国家に従属する物言いをしていることが、非常に不安」
2015-01-26 20:05:03山田「重要なのは、学生の情報やジャーナリズムに対する考え方。『情報は国が管理しているのが当然』『スパイ行為を助長してどうする』という考え方が広く浸透している。昔からそうだったのかなと思ってしまう」
2015-01-26 20:06:59青木「僕は特定秘密保護法に関しては、保守とかリベラルとか関係なく、メディアに関わる者であれば反対するべきだと思う。ところが実際には在京メディアのなかでも立場が割れてしまった。メディアというもの自体が非常に不自由になっていると思った」
2015-01-26 20:08:53青木「メディアのあいだでも委縮傾向が広がっている。それがやっぱり、メディアの受け手である学生さんたちに秘密保護法の問題、ひいてはジャーナリズムの役割といったことがきちんと伝わらなくなっている一因だとも思う」
2015-01-26 20:10:46<表現の自由>規制について
山田「ここ15年くらいで一気に状況が変わっている。例えば<表現の自由>を規制する法律というのは2000年以後に、軒並み出てきたもの。それ以前はなかった」
2015-01-26 20:12:32山田「秘密保護法のような法律は、実は10年おきくらいに出てきている。60年代は議論、70年代は法案になる前、80年代は法案になる段階で潰れていた。でも今回は通ってしまった。だんだんだんだん状況がゆるくなってきているんですね」
2015-01-26 20:14:11山田「<表現の自由>に但し書きをつけない国は日本くらいです。どの国でも例えば人種差別行為とか、一部は<表現の自由>ではないとして規制を設けている。例えばイスラム国家でムハンマドを批判する表現は『行きすぎ』ではなく『暴力行為』。日本にはそれがない」
2015-01-26 20:16:20青木「一方では、それがメディアの同和タブー、在日タブーにつながってきたところもある。それらを暴いてやろうというヘイト的言説がネット上で噴出したのは、ある意味では戦後メディアに対するバックラッシュとも言えるのかなと思う」
2015-01-26 20:19:06