黒猫レストラン:森へ狩りに行く

早起きして兎狩に来たのに、雪降ってきて断念。帰るかと思ったら、大きな足跡見つけたから追っかけてみッター
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黒猫レストラン @rest_blackcat

ゴソゴソとクローゼットの奥をさぐり、探し物をする兄。 暫くして何重にも布に包まれた細長いモノを、大事そうに取り出した。 「久しぶりだな」 その他に小さな工具箱を取り出し、リビングへ向かう。 様子を物陰から伺っていた少年は、ぶるりと肩を震わせた。

2015-02-08 13:20:48
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『ただいま~』 お使いから弟が帰ってきた。 「おかえり。」 外の冷たい匂いを纏わせたコートを脱ぎ、壁に掛ける。 イスに腰掛ける兄に頬をすり寄せ、いつもの様にただいまのキスをする。 『何してるの?』 テーブルに並べられたモノに視線を送った。

2015-02-08 13:30:48
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テーブルには古い布に包まれた銃が置かれていた。 狩猟用のライフル。 長さは両手を広げるよりも少し短い、連続で撃つことができる自動式。 手のひらサイズのスコープが、取り外しできる。 全体的に飾り気のないデザイン。 はだけた隙間からすらりとした銃口が覗いていた。

2015-02-08 13:35:46
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テーブルが汚れないように昨日の新聞をひき、箱から取り出した工具を並べていく兄。 「危ないから少し部屋にいなさい。」 『うん、それ終わった一緒におやつ食べようね。』 「あぁ、終わったら教えるよ。」 もう一度頬にキスして、弟が自分の部屋に入っていった。

2015-02-08 13:40:47
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兄が新聞紙の上で手際よく猟銃を分解していく。 解けた部品をひとつずつつ、右から揃え並べる。

2015-02-08 13:45:48
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工具箱から、適当なサイズに切られた古布を取り出す。 もうひとつ油が入った小瓶を取り出し、古布の上に少量垂らし馴染ませた。 分解した部品を手に取り、丁寧に油を染み込ませた古布で磨いていく。

2015-02-08 13:50:48
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廊下に繋がれていた少年が、息を飲んでその様子を伺う。 窓から差し込む柔らかな日差しが温かい昼下がり。 柱に吊るされたステンドグラスが、色とりどりの光を壁に反射させる。 久しぶりの晴れ間、雪が積もっていた屋根から溶け出した水が滴り落ちている。

2015-02-08 14:00:53
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薬室に溜まった細かいススをブラシでこそぎ落とす。 組み立て式の細い棒のような工具を繋げ、煙突掃除をするかのように銃口の中も磨いていく。 兄は部品を何度も光にかざし、汚れが落ちたか確かめた。 頑固な汚れは暫く油に浸し、汚れを浮かせた後で丁寧に拭き取った。

2015-02-08 14:05:48
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柱時計の秒針が響く静寂のなか、静かに組み立てが始まった。 温もりを感じる木製の銃床は飴色に光り、油で拭いた銃身はすらりと細く長い。 ひとつの鉄の部品だったものが、徐々に銃の姿を構成していく。 「(・・・くしゅん!)」 部屋に広がった油の匂いに、少年が大きくクシャミをした。

2015-02-08 14:10:46
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その音を聞きつけて兄がイスから立ち上がる。 廊下に繋いでいた少年のを見つけると、首輪からリードを離した。 そのまま少年の首輪をつかみ、カーペットの上を引きずりリビングにつれ出す。

2015-02-08 14:15:49
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壁際に放り投げ、床に座らせる。 兄は向き合うように浅くイスに腰掛け、躊躇することなく組み立てたばかりの銃口を少年に向けた。

2015-02-08 14:20:48
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目を伏せ、胸の前から折り曲げた腕で顔を隠す少年。 小刻みに震えている。 窓からはうららかな日差しが差し込み、少年の腕に浮かぶ青白い痣をやわらかく照らした。 穏やかな呼吸を繰り返し、肩の力を抜きながら少年の喉元に十字線を重ねる。

2015-02-08 14:25:48
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呼吸が整ったところで引き金を引く。 カチン 軽く乾いた音に少年の体が引きつる。 カチン、カチン、カチン 続けて何度も、何度も引き金を引いた。 恐怖に耐え切れず少年が床に伏せ、うずくまってしまった。

2015-02-08 14:30:47
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軽く全体を拭いた後、再び布に包む。 使った工具をたたみ、箱に戻していく。 最後に、テーブルん広げた新聞紙をくしゃくしゃに丸めゴミ箱に捨てた。 テーブルの上を布巾で綺麗に拭き取った。

2015-02-08 14:35:46
黒猫レストラン @rest_blackcat

弟の部屋のドアをノックする。 「終わったぞ、おやつにしようか」 嬉しそうに部屋から出てきた弟。 前髪をかき上げ、その額にやさしくキスをした。 『うん!今日のおやつはな~に?』 兄の腰に腕を絡めピッタリとくっつき歩き出す。 「お前の好きなプリンアラモード。」

2015-02-08 14:40:47
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『兄貴に言いたい事があります。』 くつろぎながらレシピ本を読んでいた兄が、その声に顔をあげた。 「改まってどうした?」 太ももの間に挟まれていた弟が体を起こす。

2015-02-10 21:43:09
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『最近、右のほっぺだけ舐めるでしょ?だからここだけ肌がカサカサする』 右頬を指差して兄に見せる。 「……」 『だからしばらく舐めないでね』

2015-02-10 21:49:39
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夜明けにもまだ早い頃、兄はせっせと荷造りをしていた。 リュックにいくつかの水と食料、持ち運びの便利な固形燃料を詰め込む。 『いつも思うんだけど、その格好は暖かそう。』 上下に分かれた寒冷地用の防寒着に身を包んだ兄に、弟が帽子を手渡す。

2015-02-12 04:30:50
黒猫レストラン @rest_blackcat

「あったかいよ。」 全身を白で統一した姿。 受け取った帽子も白一色。 腰には毛皮でできた尻当てが垂れ下がり、縞模様の太い尻尾が生えている。

2015-02-12 04:35:49
黒猫レストラン @rest_blackcat

『雪山でかくれんぼしたら兄ちゃん優勝だね。』 弟がおどけて笑ってみせる。 「兄ちゃんもそう思うよ。」 白い布で覆われたリュックを背負う。 その脇には雪面を歩くためのスノーシューが括り付けられていた。

2015-02-12 04:40:48
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「寒くなるから、ストーブの火は絶やすなよ。」 肩に担いだ狩猟用ライフルにも白いテープが全体に巻かれている。 『うん、任せて。』 弟の頬に軽く口付ける。 「留守番頼んだぞ。」 別れを惜しむように抱きしめあう兄弟の姿を、二階の窓から少年が見ていた。

2015-02-12 04:45:46
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『気をつけてね~、いってらっしゃ~い!』 空が白む頃、弟が手を振り兄を見送った。 兄は何度か手を降り返し、雪深い森のほうへ向かっていった。

2015-02-12 04:50:47
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森には静かな朝日が差し込んでいた。 雲の隙間から伸びる光は、雪面に反射され眼に刺さるように眩しい。 懐から取り出したゴーグルをかけ、兄は辺りを見回した。 風に吹かれる度、枝に積もった雪がホロホロと音も無く崩れ落ちる。

2015-02-12 05:50:47
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雪面の上に、小さな規則正しい獣の足跡を兄が見つけた。 それも、小さな小さな足跡。 「これじゃあ、具にもならないだろうな。」 獲物の大きさを考えながら、また眩しい森の奥へと歩みを進める。

2015-02-12 05:55:47
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今回は空振りだった。 あれから天候は傾き、雪が降り始めた。 獲物の足跡は次第に薄れ、雪に隠されていく。 「帰るか。」 静寂の中を一人歩み進める。 雪が音を吸い込むため足音さえ聞こえない。

2015-02-12 09:30:51