徳パンク小説『黄昏のブッシャリオン』第二章#2

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碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

クーカイ達の、遥か『上空』。翼を纏い、空を飛ぶ人間。いや『人型』と呼ぶのが相応しいであろう。 光あるところに、影はある。それは月光を受けて、地に影を落とす。「そろそろ『部品』も足りないところだし、派手に、やってみようじゃないか」 そう言うと、翼人は降下(ダイブ)を開始した。21

2015-03-28 15:59:08
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

「……タバコでも吸うか」「最近切らしててな」「畜生、ヘソクリはダッシュボードの中だ。開かねえ」 衝突で変形した車体は、機能を停止。そして……ガンジーの脱出をも阻んでいた。22

2015-03-28 22:17:12
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

クーカイも、ここに来て限界を迎えていた。ガラシャを逃し、確実に訪れる『終わり』を前に、彼等は動くことすらできずにいる。 「……なぁ、ガンジー」「なんだ?」「俺達はこれから、どうなると思う?」「……どうだろうな。一瞬で消し炭にされるもんだとばかり思っていたが」23

2015-03-28 22:17:32
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

「案外、坊主にでもされるのかもしれん。以前言っていただろう、『得度兵器が人間を攫う』と」「……そういえば、そんな話もあったなぁ」  徳を積む暮らしなど御免だと思っていたが……案外、生きていれば希望はあるのかもしれない。 「まぁ、一生ジェネレータの中というのが俺の予想だが」24

2015-03-28 22:21:02
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

「ジェネレータ」ガンジーは、はっとした。 「おいまさか、ガンジー。何か思い付いたんじゃあるまいな」 「俺達が運んできたジェネレータ。あれは、何が詰まってるんだ?」 「おい、ガンジー。今はそんなことを気にしている時じゃあ……」 「確かに、このままでも悪くないと俺は思っちまった」25

2015-03-28 22:21:48
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

「でもな……俺は、思い付いちまったんだ。なら、『全部試さずに死ねるか』」そう口にするガンジーの顔に、先程までの諦めの色は無かった。 「頼む、クーカイ。後ひと踏ん張りだけ、手を貸してくれ」 「……仕方ない奴だ」そう言って、クーカイは立ち上がる。「よっこいせ」26

2015-03-28 22:23:21
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

「……ドアが死んる。工具で……って、電動工具は使えねぇか」「大丈夫だ」そう言いながら、クーカイは工具スペースから斧を取り出す。「多少、手荒にはなるがな」 「……優しく頼む」「期待はするな」 そして、クーカイは斧を振り下ろした。 --------------27

2015-03-28 22:26:44
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

「……ダメだ」ガラシャは、口にした。思い返したのだ。今まで、『かみさま』を頼んで救われたことがあったか。もしもそんなことがそんなことがあったなら。「そんなことがあったら、私は」もっと色々な物事を信じられていたはずなのに。「だから、ダメなんだ」(私が、何とかしないとダメなんだ)28

2015-03-28 22:31:20
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

(でも、どうやって?)『逃げろ』クーカイの言葉が脳裏をちらつく。決心が揺らぐ。(どうやって?)あんな巨大な化け物を。ほんの少し前まで、自分が神だと信じていた物が、7体も。「私は、生きたい」それは、絶対だ。「でも、後悔しながら生きるのは、嫌だ」29

2015-03-28 22:34:55
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

退屈な日常を過ごすくらいなら、死んだほうがマシだと思っていた。 あの時とは、似て非なる覚悟をガラシャは抱いていた。それは、彼女の中で何かが変わったから。 その時。「なにか……くる」彼女は、気付いた。『何か』が、変わったことに。徳の流れが。「上から……来る」少女は、空を見上げる30

2015-03-28 22:38:25
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

それは、鳥ではなかった。飛行機でもなかった。まして人や超人や神仏であろうはずが無かった。 それに気がついたのは二人。いや、気が付かなかったのはガンジーだけだったのだが。 「シャリオーン……ブレイカーーーッ!!」ガンジーも、その絶叫によって嫌でも一瞬遅れて気づくことになった。31

2015-03-28 22:47:38
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

そして、その直後。得度兵器の一体の頭が、『吹き飛んだ』。32

2015-03-28 22:48:43
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

「シャリオーン……ブレイカーーーッ!!」ガンジーも、その絶叫によって嫌でも一瞬遅れて気づくこととなる。 そして、その直後。得度兵器の一体の頭が、『吹き飛んだ』。32

2015-03-29 22:54:02
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

「……何だ、あれは」クーカイは思わず零す。「……俺は混乱してきたよ」ガンジーは返す。 得度兵器の『首』から、溢れた徳エネルギーが吹き上がる。それはまるで、血潮の如く。その肩に誰かが立っている。翼を持った人型のシルエットが、徳の最後の煌きによって映し出される。33

2015-03-29 22:58:35
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

頭部を失い、機能不全に陥った得度兵器はゆっくりとバランスを崩し、倒れはじめる。「とうっ」翼人は肩を蹴り、宙へと跳躍する。 「……子供の頃、ああいう番組見たことあるぞ」あまりの『馬鹿馬鹿しさ』に、ガンジーは言う。「言いたいことは分かるがな……」クーカイは返す。34

2015-03-29 23:06:00
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

「だが、あいつの正体は、何となくだが掴めてきた」「マジかよ!?お前あんな知り合い居たのか!?」「いや、話に聞いたことがある程度だ」「……クーカイ、お前やっぱ頼りになるな……」ガンジーは感心したような呆れたような顔だ。「……舎利バネティクス。聞いたことはあるか」35

2015-03-29 23:12:03
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

クーカイは構わず話を進める。「無ぇ」「……そんなことだろうと思った」 舎利バネティクス。それは高度徳文明社会の影。仏舎利を始めとする徳遺物をインプラントし、それを生体と一体化させる非道の技術。それを施された人間は、人の道を『踏み外す』。 「つまり……どういうことだ?」36

2015-03-29 23:16:00
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

「俺がさっきやった『手品』があるだろう」「ああ」クーカイはつい先程……徳エネルギーフィールドに穴を開け、ガンジー達を脱出させる芸当を披露したばかりだ。「……あれと同じことが、もっと大規模にできる」「つまり、『超人』か」「まぁ、そういうことだ」「超人だか鳥人だか知らねぇが……」37

2015-03-29 23:18:59
碌星らせん(ろくせい・らせん) @dddrill

「で、あれは味方なのか?」「わからん」「一番大事なのはそこだろうがよ!」「……わからんものはわからんのだ」 ガンジーとクーカイが不毛な言い争いを繰り広げている間にも。「シャリオーン……ブレイサー!!」二撃目。翼人の貫手が、次の得度兵器の『心臓』へと到達する。38

2015-03-29 23:26:41
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