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ろくせいらせん @dddrill
徳パンク小説『黄昏のブッシャリオン』第二章 #2 対決!過去七仏
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◆黄昏のブッシャリオン◆ 立ちはだかるは、七体の得度兵器。徳フィールドによる包囲網を、クーカイによって辛くも切り抜けたガンジー一行。 だが、それはあくまでも窮地を凌いだに過ぎなかった。
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七体の得度兵器と見つめ合うガンジー。徳エネルーフィールドの光が、その姿を神秘的に浮かび上がらせている。 「……どうする」「逃げよう」「それができれば、一番だな」逃げられれば、それが一番だ。「あいつら、足が遅いだろ。何か問題があるか?」「ある」1
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「……あれか」「あれだ」徳エネルギー兵器。相手が一体ならば、避けることも辛うじてできた。だが……「斉射されたらヤバいな」「一斉に攻撃されれば、避けられない」二人が話している間にも、状況は動く「……一列に、並ぼうとしている」窓から得度兵器の動きを見ていたガラシャが声を上げた。2
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「なんか……バリアとか張れないか!?」ガンジーはクーカイに言う。「無茶言うな!」「……意外と不便なんだな」「……少なくとも俺には無理だ。さっきみたいな力の使い方も、しばらくはできん」クーカイの精神力は消耗していた。「……こんなことなら、念仏でもちゃんと勉強しとくんだったぜ」3
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「終わったら、教えてやる」「いらねぇ」「そうか」 ------ 『標的消失』『徳力場干渉確認』『要再捕捉』 得度兵器達は『動揺』していた。想定外の事態に、対応を決めかねていたのだ。徳エネルギーの結界が、破られたのだ。まるで、捕まえた猿が指の間からすり抜けてしまったかのように。4
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『整列斉射』『徳残量微小』『捕縛優先』 徳電波通信によって接続された七体の得度兵器の思考回路は……一瞬の内に膨大な情報をやりとりする。 やり取りされる情報は膨大だが、決断すべき内容自体はごく単純だ。追うか、追わざるか。彼等は『飢えて』いた。何処まで目標の追跡に余力を割けるのか。5
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『人類救済』『全人類解脱』 そして……困った時は、大原則へと立ち返る。その思考プロセスは、人間も得度兵器も変わらない。得度兵器の大原則は、全人類の解脱による救済である。『それ』は、己をそう定義するがゆえに『得度兵器』であるのだ。 ……故に。七体の得度兵器は結論した。
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『追跡続行』 全能力を以って、ガンジー達を捉えるべきであると。7
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得度兵器の一体の白毫に、光が灯る。「一発目、来るぞ」クーカイが消耗を押して叫ぶ。「避けられねぇ!」だが、タイミングが悪い!両サイドを木々に挟まれ、ハンドルが切れない。「……ブレーキだ!」クーカイの叫びに応じ、ガンジーは思い切りブレーキを踏み込む。「きゃああっ!」車体が揺れる!8
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徳エネルギービームは、車のボンネット上に着弾した。着弾箇所に蓮の華が咲き、一瞬で大気に溶けて消える。極小規模な解脱現象。 得度兵器は限られたエネルギーを効率的に使うため、徳エネルギービームの収束率を限界まで上げているのだ。……もし人間に当れば、どうなっていたか。9
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ガンジーの背中を冷たいものが流れる。だが、それだけでは収まらない。「……畜生、このポンコツが!」燃料電池出力の急低下。既知徳物理学の未解明領域にある高密度徳エネルギー兵器は……生命あるもののみならず、物理的存在にまで影響を及ぼしたのか。或いは、それが得度兵器の狙いであったのか10
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それを確かめる術は、ガンジー達にはない。ガンジーの必死の操作虚しく、車は木に激突。今度こそ……彼等は、この状況から逃れる術を失ったのである。 「う……生きてる、か」ガンジーはエアバッグから顔を上げる。「なんとか」「……うん」 ガンジー達を照らす月の光が、一瞬陰った。11
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「……車、まだ動くか」「無理だな。パワーユニットがお釈迦だ」衝突の衝撃で、ボンネットは拉げていた。「……ここで、終わりなの?」「……まだだ」ガンジーは口ではそう強がるが、心は挫けかけていた。彼等の街までは、距離がある。例えこの窮地を乗り切っても、徒歩での移動は無謀だ。12
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「……お前は、逃げろ」クーカイはドアを蹴破り、ガラシャを押し出した。「……クーカイ、は?」「後から行く」「……嘘だ」歪な少女は、言葉の裏の微かな不協和音の匂いを、敏感に感じ取っていた。「嘘じゃない」「……私は、ここで死んでもいい」だから、彼女は、そこで『本心』を口にした。13
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バチン! 「……馬鹿野郎」乾いた音がした。少女の頬を、クーカイの張り手が打ったのだ。「え……」少女は、咄嗟のことに声が出なかった。誰かに頬を張られたのは、初めての体験だった。「10年だ。あと10年生きて、それでも死にたきゃ、勝手にしろ」「……10年」「だから、今は、行け」14
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「……ごめんなさい」「謝るなら、後で自分に謝れ。さっさと行け」得度兵器の重い足音が、近づいてくる。少女は駆け出した。自分の足で一歩ずつ。不慣れな道に、時折転びながら。 「……奴ら、無駄なエネルギー使う気は無ぇみたいだな」ガンジーは口にする。「そうだな」不思議と落ち着いていた。15
ろくせいらせん @dddrill
----月の光の下を、少女は駆ける。(……何が、徳だ)少女は、自身を呪っていた。(誰も、助けることなんてできないのに)己の無力を呪っていた。少女が何かを助けたいと思ったのは、初めてのことだった。 血を分けた親相手にすら、そんなことを思ったことは無かったというのに。16
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思えば、彼等に初めて会った時も、こうして一人で月の下を歩いていたな、とガラシャは思い返していた。僅か数日前のこと、それでも徳に溢れた暮らしは、はるかに昔のことのように思える。 「……神様でも、なんでもいい」だから、少女は祈る。もうあそこには、戻れないから。17
ろくせいらせん @dddrill
「私の徳が、力になるのなら。あの人達を、助けて」少女は今宵、生きることを知った。生きることは、願うことだ。願うことは、祈ることだ。 徳なき世界でも、祈りを聞き届ける神仏は、滅びてはいない。人の心に、それが住まい続ける限り。18
ろくせいらせん @dddrill
少女の願いは、つまるところ利己的なものだった。「あの二人と、まだ旅をしたい」という利己的な願い。他に居場所が無いという怖れ。それでもそれは、切なる願いだった。 もう一度言おう。それでも、救いは、あると。クーカイは人智を尽くし、少女を救った。だからこそ、天命は『降りてくる』。19
ろくせいらせん @dddrill
--------- 「……懐かしい風。すえた徳の匂い」こんな夜は、身体が疼く。「派手にやってるみたいね。この辺の得度兵器が、勢揃いじゃないか」徳圧の変化には敏感なのだ。この、人にも仏にも、機械にもなれぬ肉体は。だからこそ、空を舞うことができるのだが。20
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