グランクレスト大戦：ザンビ日記まとめ　そのよん　43日目～56日目（最終日）

43日目：HP56/SP150/調査点0/口うるさい文官/危険を求める邪紋使い/オルガノンの狂戦士：征きて、乱①

燃え盛る炎の熱が頬に伝わってくる
錆び、或は鮮烈な赤で照らされた視界に、ざっと鳥のような黒い影が横ぎった
否
「最後の悪足掻きか」
ザンビックは拳を振り抜き、向かってくる矢を叩き落とす
それを感じ取るのは、もはや五感ではなかった
再び矢が飛んでくるのに体勢を立て直すと同時に、視界を黒い影が再び覆った
ぱしっと小気味よい音と、撫でるように掠めた黒い…尻尾
「ヘーゼル」
ザンビックに迫る矢を口で受け止め、吐き捨てるのに
「逃すな。『潰し切る』」
礼を言う暇も、目配せの暇もない
そもそも軽口を叩きあう間柄でもなく、黒い獣型の男は無言で長い尾の先端だけでザンビックの膝のあたりを遠慮がちに触れるのに
「直ぐに、追いつく」
と囁けば、彼はまともに息つく間もなく、矢の放たれた方向へ走り出す
少し強い西風が、元結の解けた髪を乱す
「負けず嫌いの相手は扱い易い」
血の匂いと焦げ臭い匂いの中、落ち着き払った表情で、ゆったりと殺意を滲ませながら、ザンビックは『足』を待っている
「力比べに乗った、そっちが悪い」

44日目：HP47/SP159/調査点0/口うるさい文官/危険を求める邪紋使い/オルガノンの狂戦士：征きて、乱②

『陸王1200cc』
排気量1200cc、出力28Hp、車体重量575㎏、サイドバルブV型2気筒
軍用車としての特質から装甲やタイヤは特別頑丈に作られ、排気量は乗用車を優に超える
モーターバイクの範疇を超えた大きさと、ハンドル操作に癖があることから、操縦には旧帝国陸軍でも特別に訓練された将官のみが使用していたとされる、幻の名車である

『陸王』は己を駆る男に今も驚嘆している
排気量、重量とも通常のモーターバイクの常識を超え、それ故殆どの人間には乗りこなせず、陸の怪物と呼ばれた己である
「見た目に依らず、なかなか気難しいとは思うが」
扱えぬ程とは思わない、と何の気負いも負担も感じぬように淡々と男は口にする
この『世界』には『陸王』の世界の機械と同等のものが元々存在せず、生体由来であるか、『混沌』なるモノが幅を利かせている
此処に流れ着いてから、一度も補給を受けずに最大のコンディションで稼働出来るのも、恐らくは『混沌』によるモノと、教えてくれたのもこの男だ
『少佐』の行方が知れぬままの自分の、止まり木となろうと手を伸ばしたのも、今は『主』と認めた彼、ザンビックだった

（どの世界にも『規格外』は存在する…）
此処の住民についての知識を増やす毎に、『陸王』は彼らの理解力について期待することなど正直諦めていた
駆動も操作も『陸王』自身の自在であり、操縦者が必ずしも必要なわけでもない
「君は『騎乗』する道具なのだろう？」
彼がそう乗機としての自分に興味を示した時も
「お好きな所に、何処でも、お連れ出来ますよ」
そう、寄り掛かる場所となってくれる礼程度に答えると、彼は珍しく不満そうな色を見せて云ったのだ
「それは、君の在り方と異なると思ったのだよ。道具はその全ての性能を発揮するべきだ、と俺は思う」
「貴方方には僕は扱い切れない」
それに挑戦的に彼は微笑み、植物を思わせる『邪紋』を燃えるような色に煌めかせた
「教え切れる自信がない、と言うのだな」

振り落とされれば命はない、と心配を織り交ぜて脅すのに、『不死者』を殺せるのなら大したものだと冷たくしかし魅力的な笑みを向けられたのが悔しくて
やれるものならやってみろ、とこの背を許して程なく、彼は己の起動も制動も完璧にこなせるようになっていた
それは、『陸王』がザンビック＝パレリ・オーを『主』と認めた瞬間でもあった

「…ヘーゼルが、傷を入れている」
前方、もうもうと立ち込める土煙と砂煙…そして血煙を見遣り、ザンビックが呟く
腰を僅かに揺らし、機敏に進路を微調整し、更にギアアップ
完璧な操作に、完璧な結果を返せば、満足そうに喉の奥で彼は笑う
人機一体に招かれざる客として、同盟と連合の縺れ合う中に突っ込み
「ご苦労。あとは『俺達』で一気に蹴散らす」
そう言ったザンビックが、跳躍しながら、変身が解けかかるヘーゼルの腕を掴み、機上に無事に引き寄せたのを、ボディへの衝撃で確かめ、『陸王』は安堵した

温泉だ鬼怒川だサンハトヤだ

そんなこんなで大暴れして魂の洗濯の帰路、レアさんの温泉で命の洗濯（ちゃぷん）

本日の詰め合わせ

動物愛護ナントカ

シードル君を取り合うメイジさんたちの隙間に侵略する何か